山野ゆきよしメルマガ

メールマガジン目標月2回、改め、年24回

小学校6年生の作文

2005年04月02日 | Weblog
 年度始めにあたり、さらに、大リーグ開幕にあたり、企業経営者の間でも有名になっている、ある小学校6年生の子供が、「僕の夢」と題して書いた作文を紹介したい。
―――――
 僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。
 そのためには中学、高校と全国大会に出て活躍しなければなりません。活躍できるようになるためには練習が必要です。僕は3才の時から練習を始めています。3才から7才では半年くらいやっていましたが、3年生の時から今までは365日中360日は激しい練習をやっています。

 だから、一週間中で友達と遊べる時間は5、6時間です。
 そんなに練習をやっているのだから、必ずプロ野球選手になると思います。そして、その球団は中日ドラゴンズか、西武ライオンズです。ドラフト一位で契約金は一億円以上が目標です。僕が自信のあるのは投手か打撃です。

 去年の夏、僕たちは全国大会に行きました。そして、ほとんどの投手を見てきましたが自分が大会ナンバーワン選手と確信でき、打撃では県大会4試合のうちホームラン3本を打てました。そして、全体を通した打率は5割8分3厘でした。このように自分でも納得のいく成績でした。そして、僕たちは一年間負け知らずで野球ができました。だから、この調子でこれからもがんばります。そして、僕が一流の選手になって試合に出られるようになったら、お世話になった人に招待券を配って応援してもらうのも夢の一つです。
 とにかく一番大きな夢は野球選手になることです。
―――――
 少年の夢は実現し、日本のプロ野球どころか大リーグにおいても、超一流のプレーヤーとなった。言うまでもなく、イチロー選手である。
 この作文のどこがそんなにすごいのか。それは、大リーグでも大成功を治めているイチロー選手の書いたものであるということが、理由の一つであることは間違いあるまい。しかし、そのような皮相的な理由だけではない。当然、その作文の内容に大きな理由がある。

 先ずもって、イチロー選手は、自分の目指すべきものを、「一流のプロ野球選手」として明確に、大目標を掲げている。
 さらに、その大目標達成の為には、「中学、高校と全国大会に出て活躍しなければなりません」と中期的な目標までもはっきりと視野に入れ、その「活躍」の担保として、「練習が必要です」と言い切っている。
 小学校6年生で、ここまでの計画作成能力を極めた子がいるであろうか。

 計画作成だけではない。この子は、自分がこれまで行ってきた事象を、客観的に数字で持って把握し、さらに、それら全てを、自発的な問題意識の中でとらえている。「自分が大会ナンバーワン選手と確信でき」、「自分でも納得のいく成績でした」と、自発的・主体的な問題意識を完遂した達成感を、具体的に述べている。
 マズローの欲求5段階説の「自己実現」に向って、まっしぐらという感じである。

 私が、このイチロー選手の作文に舌を巻くのは、将来を展望しての目標を描き、それを実現するための計画を策定し、その実現に向って努力を積み重ねているということだけではない。

 自分の大きな目標を達成することによって、「お世話になった人に招待券を配って応援してもらう」という社会貢献の姿勢までもが、この中において見られることである。なんという社会的知性、人間的理性であろうか。

 教育の一つの理想形が、この作文の中に込められているといったら言い過ぎであろうか。

 チチロー、恐るべし。