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アイランド■第5回■

2017年11月19日 |  アイランド

アイランド■第5回■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

なぜ彼女がこのサンチェス島に落下してきたんだ。

 「アリス、なぜなんだ。それにその子供は」
 「コロラド、お久しぶり。この子供、この子供はビィーというの。
始めて、宇宙から帰ってきた私の子供よ」

 「その子はスカイウォッチャーズじゃないのか」
スカイウォッチャーズは宇宙空間に存在する宇宙機雷だ。敵の星クワノンから
生体ミサイルを阻止する地球空間の防護壁である。
 「そう、その通り」

 「なぜ、スカイウォッチャーズがこんな所に、それに、君も、アリ
ス工房から、絶対に外へ出る事はできないはずだ」
「ビィーは宇宙から、私の人工胎室の中へもどってきたの」

 コロラドは、彼女が気がふれているのではないかと思った。
「スカイウォッチャーズがクワノンの生体ミサイルと同化したと聞
いている」

「その通りよ、コロラド、このビィーがそうなのよ」
「クワノンなんだぞ。敵だよ。アリス」

「わかっているわ、でも、私にも、この地球にも害を与えてはいな
い。いえ、むしろ私を守ってくれたの」

 クワノンの生体ミサイルで町が灰色に変っていくシーンが、コロ
ラドの頭の中に蘇ってくる。
 コロラドは立ちすくんでいて、ボーンの存在をすっかり忘れてい
る。
「OK、コロラド、そこをどきな」
 ボーンが洞窟に入ってきた。

「ボーン、こいつは何かの間違いだと思う」
「間違っているのはお前さ、コロラド、お前の間違いのおかげて、
サンチェス島全員の命をうばった事をよ-く思い出すんだな」
 ボーンは冷たく言い放った。コロラドには返す言葉もない。

「こいつらを殺すつもりか」
「さからう様ならな」

 コロラドは、ビィーの姿を腿る。小さな球体に手足がはえていて、
愛くるしい眼ざしでコロラドの方をみていた。コロラドの心に変化
が訪れる。
「何とかならんのか」
「コロラド、そこまで、こいつらをかばうのなら、一緒に死んでも
らおうか。その方がお前のためだぞ。お前は、非情ではなく、もうレインツリーの暗殺者としては役
に立たん」

 コロラドは隠し持っていた銃を、ボーンに向けた。悲しそうな顔を
している。

 「こんな事はしたくないがな、ボーン、この親子を殺したくないん
だ」
「お前のヒューマニズムのお説教は聞きあきたぜ。こいつらは人間
じゃないだぞ。バイオノイドママと、クワノンと同化したバイオノ
イドだぞ、目を開けろ、コロラド。それに俺を殺すことは
前にはできないさ」

サンチェス島上空にある偵察衛星は、接近してくる衛星をキャッ
チし、SD‐Iシステムに警告しょうとした。その一瞬先、衛星か
らレザー光が反射され、偵察衛星は吹き飛んでいた。防衛上サンチ
ェス島の上空はガラ開きになってしまった。

 銃声が洞内に響き渡った。コロラドがボーンの体にむけて、数発
発射したのだ。が ボーンは無傷だった。

 「なぜだ」コロラドは驚きの声をあげる。
 「無駄だな、コロラド。俺は完全なバリヤーをはりめぐらせている」
 「しかし、先刻のチェックでは、そんなものなど存在しなかった」

 「探知されない方法などいくらでもある。さあ、今度は俺の番だ」

 ボーンは指を洞窟の天井にむけた。轟音がした。三人とも頭をか
かえる。頭の上に空がみえていた。土くれがパラパラと上空からお
ちてきた」

「何だ、お前の力は」

「空からの力だ。とにかく、その二人ともなぜか力を出してはいな
いが、私も最高級の武器を使わないとな」

「地球上空にあるキラー衛星ね」
アリスがホーンに対して初めて口を開いた。レーザー砲がキラー衛星
に装備されている。

「御名答だ。それじゃ覚悟しな」
 コロラド連のいる場所が白熱した。

「コロラド、地獄で、お前の島民に会いな」

が、逆にボーンの体が熱くなり、白熱する。

「こ、これはどうした事だ。うわっ」

 ボーンの体が蒸発した。

同時に、サンチェス島にレーザー砲を発
射していたキラー衛星も爆発する。

「こ、これは]
「僕がした事さ」
 始めて、ビィーが口を開いた。

 「ママの体から生まれ出て、地球上の空気に適応するのに時開かか
かったのさ。パパ、始めまして」

 アリス、つまりアリス3537は、昔、宇宙連邦軍、従軍ナース
だった。宇宙戦役ポズナニ戦役の際、重装機兵だったコロラドは、アリスの
看護を受けた。

 コロラドは、お礼に、彼の皮膚を与えた。その皮膚が培養され、
バイオノイドの原料となった。

 アリス3537の子供は、いわば、すべてコロラドの息子だった。

 つまり、ビィーもコロラドの子供である。
それも、たった1人人生き残っている息子である。たとえ、その息子がどんな姿をしていよ
うとだ。

 コロラドは、バレーボールくらいの大きさのビィーをだきあげた。
 「君はクワノン生体ミサイルと同化しているのか。ビィー」

 「そうじゃない。僕は新人類だ。クワノンでもなく、宇宙機雷バイオノイドで
もないのさ」

(続く)



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