しねまき ~月刊シネマ鑑賞記~

毎月、劇場で見たすべての映画の記録です。

2005年11月の感想記

2005-12-03 | しねま感想記(終了)
劇場鑑賞本数 35本

空中庭園
学芸会のように幸せを演じてきた家族の崩壊と再生が荒々しく炸裂。恐ろしいまでの演技の小泉今日子さんと深い芝居の大楠道代さんを始め、登場人物皆に一癖アリ。長回しの映像の中、珠玉のセリフがこれでもかと散りばめられる。豊田監督がまたしても骨太の傑作を作り出した。

そして、ひと粒のひかり
コロンビアの17歳の少女がニューヨークへ麻薬を運ぶ。そのシンプルなネタを余計なものをそぎ落とし、ストレートなドラマが観る者に響く。仕事を始めるまで、実際の仕事、NYに着いてからと3つのエピソードも分かりやすい。が、なんといっても、ヒロインのC・S・モレノの存在感。

灯台守の恋
世界の果てのような小島に灯台守としてやってきた青年と島から出たことのない職場の先輩の妻。その2人の間の感情の惹かれ具合が切なくたまらない。亭主を悪役にせず、青年との距離が近くなっていく展開も、余計にドラマを引き締める。

イン・ハー・シューズ
容姿はいいのにだらしない妹と、仕事は完璧なのに恋に自信のない姉。2人の葛藤と自分探しの旅が祖母を介して繰り広げられる。題名の「ハー」はこの作品に登場する彼女たちすべてを表現。それぞれの人物が丁寧に描かれるが、T・コレットが一番の印象を残す。こんな正統派のドラマをC・ハンソンが監督するとは驚き。

ティム・バートンのコープスブライド
可愛くて不気味なキャラクターが繰り広げるストップモーションアニメ。シンプルで速い展開、ホラーなのに賑やかで楽しく、そして切ないドラマにまで仕立ててしまうのには舌を巻く。D・エルフマンの音楽が前作「チャーリーとチョコレート工場」同様、ノリノリの悪ノリ。

私の頭の中の消しゴム
あざとさを感じさせず、設定のみでストレートに押した描き方が勝利。「それ」が明確に現れるまでの展開は遅いものの、予兆や伏線を用意。「死よりも切ない別れ」のドラマで問答無用に泣かせ、終盤は美しい。

欲望
視線や会話だけでエロスを漂わせる映像に魅入る。幼なじみ3人の男女の再会のドラマの中に、苦悩と懐かしさが交錯する。堂々の板谷由夏さんと新境地の村上淳さんの演技は圧巻。端正な作品に仕立てた篠原監督はここでも実力を発揮。