MilanoからLondon、東京に移り住みましたが、変わらず日常生活を書き記そうかと。。
ミラノ通信 - 我が為すことは、我のみぞ知る



今、Jリーグでは観客の伸び悩みにどこのクラブも苦しんでいる。


一度得た成功体験は原体験としていつまでも残るものだが、93年、94年、95年の辺りはプラチナチケット状態で、Jリーグに行こうと言えるのはある意味特権的なデートの誘い文句だったくらい。実際、スタジアムはほぼ毎回満員に近かった筈。少なくとも埋まっているように見えた。この埋まっているように見える、と言うのが実はとても重要で、キャパが50000人であれば48000人でも46000人でもほぼ満員に見える。この

満員 = チケットはなかなか買えない = チケット枯渇感

と言う図式が重要なのだ。先行して販売しているチケットが多少前売り価格で売られていたとしても、当日券が出ないほどの人気らしいよ、と言う流布が為されることで常にチケットへの渇望が継続することが重要となる。以前のプロ野球は、入場者として実際に来場して満員になっていなくても、チケット販売枚数として完売状態にあれば満員としていた時代は枯渇感から早々にチケットが売れていっていたものだ。今は実数発表をしているのでほぼ満員になる試合はプロ野球でも少ない。そして満員と言うアナウンスがない状態を知ると前もってチケットを買おうと言う気持ちが起きなくなってしまう、と言う悪循環に陥っている。


今現在のJリーグは、19年前の発足当時からすると約4倍のクラブ数となっている。

個人的には100年構想と言って掲げているJリーグの理念は素晴らしいと思うし、そのとおり100年間繁栄をするよう努力していけば良いと思う。ただクラブ数の急激な増加は20年間で行うものなのか、100年後のJリーグでそうなっているべきなのか、正直疑問に思うところはある。England premier league等は下部組織も含めると92クラブあるがやはり文化として根づいている中でそのくらいのクラブ数がある訳だ。プレーと言う意味でコンテンツバリューの維持・向上が伴わなければ面白いと思う人が多くならないと来なくなってしまう可能性が高いと個人的には思う。お客様がスタジアムに来なくなると、それは即ちクラブの財政事情が悪くなることを意味する。Jクラブの財政健全化に向けてライセンス制を導入する動きがあるが、現在の観客動員数を加味すると健全性のポイントで合格点が与えられないクラブも出てくるのではないか、と危惧する。


実際、クラブは色々なレベニューを複合的に構成して売上を上げているが、徐々に相対的な位置付けとして放映権料は下がってきており、チケッティングレベニューに依存している部分は多い。


多くのヨーロッパのサッカーリーグがそうであるようにJリーグも放映権料は個別クラブ単位で(厳密には)契約が出来ない。イタリアのセリエAくらいではないだろうか、あれ程個別に契約してそして揉めているのは…。スペインのリーガエスパニョーラもバルサTV等も突出しているがその他のクラブの連合はコンテンツバリューがないと思われ揉めるケースが多い、ととあるイタリアの代理人から聞いたことがある。日本は良い意味での護送船団方式で一括してリーグが契約してそれを分配しているが、個人的にはこれを推し進めたおかげで潰れなかったクラブが過去にあったんだと思う。今となっては過去形のIf notなので比較のしようがないが、これはプロ野球を参考にし「Don'ts」として設定したタスクの一つで、履行したリーグの先見性は素晴らしいと思う。しかし現在はクラブ数が多くなり、分配金も物理的に減ってきているのと毎回契約自体が妥当なのか、更新の度に問題点としてクローズアップされる。


一方でチケッティングレベニューに関しては完全にクラブの戦略に依存する。


シーズンチケット、ハーフシーズンチケット、セットチケット、定価チケット、前売りチケット等、様々な券種を組み合わせ販売し、スタジアムを埋めようとする訳だ。禁断の果実は、無償チケット、だ。これに依存すると言うことはレベニューのポートフォリオを余程きちんと戦略的に設計しなければ、ビジネスモデルが完全に崩れる怖れがある。と言うか潰れるところが出てくる。何故ならプロスポーツビジネスは、興業時のチケッティングレベニューが非常に大きな収益源であるから。少なくともプロクラブ、と標榜する以上、チケッティングである程度儲けなければ元も子もない。チケットを管轄する部門は今現在どの席種が売れていて、逆にどの席種が売れていないか、等を把握する。一人称単数でオペレーション出来なければ外部のプレイガイドに依存ではなく依頼をしてある程度きちんと回せば良いと思う。これらの業務が非常に難しいために、なかなかチケットの売れ行きが悪く、経営上健全経営ができていないクラブが多くなってきている。


経営指標の一つとしての、チケッティングレベニューはかなり重要な指標である。



ありとあらゆるチケットを売る努力をどこのクラブも行う。自分たちで出来なければプレイガイドにコミッションを払ってでもそれを行う。現にヨーロッパのクラブ等はオンラインで自分たちのクラブのサイトでチケットを販売したりする。ファンは自分でプリントアウトしたチケットを持ってくれば入場出来るところやスタジアムのボックスオフィスで引換えたりして入場するところが多い。

しかしそれもこれもコンテンツバリューに依存するところが非常に大きい。

バルサにしてもアーセナルにしてもシーズンチケットを買うこと自体が困難なクラブがあるが、やはりプレーが魅力的だから。逆に我がAC Milan等は2年前にカカーをレアルに放出した後にシーズンチケットの売れ行きが悪くなったりした。サッカーのコンテンツで言うバリューとは多分にプレーヤーに依存するのは当たり前でその選手が作りなす「魅力あるプレー」に惹かれてスタジアムに来ようとする部分が大きいわけだ。勿論テレビでも見られるが、その感動を仲間内と分かち合ったりするために大勢でスタジアムに行ったりする。だからと言ってこれが「スーパープレー」ばかりに依存するわけではないと思う。正直なでしこのプレーがJリーグのプレーよりも素晴らしいものばかり、と言うことはないと思う。別に男尊女卑ではないが、パス精度、トラップ精度、シュート成功率、オンマウスへのシュート数や、シュートレンジの距離感やシュートスピード等指標と言う指標を比べていけばほぼJリーグが上回ると思う。

しかしながら、なでしこのゲームでホムスタが満員になる。

これは澤さんが観たい!川澄さんが観たい!ということで(イロモノ的な意味ではなく)女性ならではの凄いプレーが観たいってことなんだと思う。なでしこリーグとしてこれが同時に10試合、20試合とないのはそれだけのレベルのプレーが同時には出来ない訳で、だからこそプロチームがそれ程ないと言うことを意味するのだと思う。なでしこのプレーの質は女子サッカーの最高峰レベルにあり、それを観たい、と思っている人が多いんだと思うが純粋に何を観に来ているのか、知りたい。これは経営的に、再現性を確保するために、今賑わっているうちにきっちりサンプリングしてニーズを把握するためである。この動きをJリーグ発足から3-4年のうちに行わなかったが故に現在収益源を潤滑にできていないクラブがJクラブにあるのだと思う。セールス一辺倒では恐らくチケットは売れない。きっちりマーケティング活動をして、常にどう言う行動形態、ニーズがあるのか、を把握することが非常に重要な役務だと思う。

なでしこリーグが、若しくはトップチームと共に存在するなでしこ部門がどのような位置付けで、どのようにお客さんに来てもらうか、これを今のうちに考えておけば、何年かに一度優勝するかも知れないが、ワールドカップ優勝にのみ依存することなく、つまりブームで終わることなく集客を高めていけるのではないだろうか。




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