DOCOMORO100

モダニズムだけじゃない建築ブログ

’08西・蘭建築紀行 バルセロナ編その5“未完成のままで”

2008年02月24日 21時38分43秒 | 建築
 「何と大きいのだろうか」
 地下鉄の駅から地上に出ると、そこは「サグラダファミリア」の受難のファサード正面であった。この4本の鐘楼は建物のほんの一部でしかない。写真は同じボリュームを持つ生誕のファサードである。さらに鐘楼だけでも、あと4本が建ち、本体はもっと大きなものとなる。地下の博物館で、完成図をいくつか見ることが出来るのだが、あまりの大きさに驚かされた。

 この鐘楼の内、1本にはエレベーターが設置されている。現在は生誕、受難両方でエレベーターの運行が行われており、歩いて昇らずにすむ。エレベーターを降りると、バルセロナの街を一望でき、先に記事にした「トーレ・アグバル」がよく見える。
 下りは階段を使うのだが、建設中の本体の工事作業風景が垣間見えて楽しめた。急ぐ様子もなく、ゆっくりと進められているような感じを受ける。

 「この建築は、自分が生きている間は完成して欲しくない。」その大きなスケールと見事な彫刻群に、そう思いながら螺旋階段を下りた。

「サグラダファミリア」
設計者:アントニ・ガウディ 着工:1882年 バルセロナ市内

’08西・蘭建築紀行 バルセロナ編その4“なまこ板”

2008年02月16日 21時20分40秒 | 建築
 自分のジャン・ヌーベルへのイメージは、「ガラス」。「アラブ世界研究所」「カルティエ財団」「電通本社ビル」「ケ・ブランリー美術館」いずれもガラスを用いて、様々なファサードを演出している。勿論、アラブ世界研究所のカメラの絞り機構やケ・ブランリー美術館の“建築を消す”手法、電通本社ビルのブーメラン平面内の構造等、建築界きっての理論派は、その建築毎に興味深いテーマを示してくれる。

 2005年竣工の「トーレ・アグバル」は水道会社の事務所ビルである。高さ142mの先端までガラス製ルーバーで覆われている。その内部にはカラフルなモザイクの外装材が見られる。
 書籍の写真で見た際には分からず、実際に見て分かり、驚いた事が二つあった。一つ目は「ガラスのルーバーの角度が全て固定されている」ということである。日射量の加減で自動で動くとまではいかずとも、可動であろうと予想していた。ところが、出入り口の一部のルーバーを除き、完全に角度を固定してあるのだ。その角度は場所ごとに違う。計算されてのことか、デザイン上のことか、角度決定の要因は分からない。
 二つ目は、「ガラスルーバー内のカラフルな外装材が、『なまこ板』である」ということだ。これには驚いた。なまこ板をとめる笠付きのビスがチープ感を醸し出す。内部には断熱層が付き、その色彩も特注であろうから、実際にはお金がかかっているのだろうが、それにしても「なまこ板かー!」と、唸った。書籍で「金属製波型板」と読んではいたが、もっと他の材料を想像していたのだ。
 ジャン・ヌーベルの建築にはいつも沢山の刺激を受ける。

 ところで、このトーレ・アグバル周囲の環境は、あまりよろしくない。新しい商業中心地となる予定らしいが、竣工後3年経った今も、一人でうろつくのは憚られる雰囲気である。これから変わっていくのだろうか。

「トーレ・アグバル」
設計者:ジャン・ヌーベル 竣工:2005年 バルセロナ市内

正しい道を進もう。列を乱すな。

2008年02月12日 22時41分00秒 | DOCOMOMO
 先日、北海道立近代美術館で「建築家展」が開催された。2月3日には講堂にて「上遠野徹の建築」というタイトルで、上遠野徹先生と北大歴史研の角教授の対談式講演会が催された。とても勉強になった。

 写真は上遠野徹先生のブース内に掲示された、DOCOMOMO JAPANを紹介する4枚のパネルである。北海道のDOCOMOMO JAPAN選定建築を紹介するパネルには、現在の学生の設計課題の紹介や、嘗てpenkou師匠が上遠野先生にDOCOMOMO選定プレートを贈られた際、ちゃっかり一緒に写った卒業生達の写真も載せて頂いた。
 penkou師匠のお供をさせて頂き、上遠野先生宅にお邪魔させて頂いたり、角先生との楽しい宴の末席を汚させて頂いたのも度々で、今回の対談は本当に楽しみにしていたし、期待以上のお話を聴くことが出来た。

 田上義也氏と上遠野先生の深い係りや、北海道黎明期の建築家マックス・ヒンデルについての角先生の解説等、沢山の貴重なお話の中、自分の心を打ったのは、上遠野先生が田上氏より受け継がれた「正しい道を進もう。列を乱すな。」という言葉である。思わず“俺は間違っていないのだ”と声に出してしまいそうになった。
 自分は、この言葉に本当に感動出来る人とだけ歩いて行きたい。

’08西・蘭建築紀行 バルセロナ編その3“亀裂”

2008年02月02日 23時30分15秒 | 建築
 海外の建築を見ていつも思うのだが、仕上げの精度が低い。ゼネコンの現場監督時代、自分の現場でこの仕上げであれば、許せたものではないという仕上げを多々見てきた。

 ヘルツォーク&ド・ムーロンは「プラダブティック青山」では平面、及び3次元曲面のガラスで美しいファサードを表現した。バルセロナでは「フォーラム2004」で吹きつけコンクリートによる特徴的な外装材を用いている。

 自分は、ひび割れしないコンクリートなど無いと思っている。しかし、このフォーラム2004の外装材表面のひび割れは、とても目立つ。吹き付け材なのだから仕方ないとも思うが、それにしても大きい。エンボス加工の軒裏から水漏れしている箇所も有った。
 宙に浮いたような巨大な躯体と、所々に設けられたボイドは面白い形態であるが、もう少し施工精度を上げてもらいたいものだ。 

「フォーラム2004」
設計者:ヘルツォーク&ド・ムーロン 竣工:2004年 バルセロナ市内