幸せ 快乐

くならgooブログ

たのだろうとは思

2016-03-30 15:50:42 | 日記


「おれはこの目で見たが、渾身の一撃だった。メロンみたいに頭がつぶれてたって不思議じゃない」ティニアンは眉をひそめ、兜の側面から出ている二本の角の付け根を調べた。さらに兜をじっくりと点検する。「傷一つない!」短剣を抜いて角を削ろうとしてみたが、艶やかな表面を引っかくこともできなかった。好奇心に駆られたティニアンはアラスの戦斧《バトルアックス》を取り上げ、何度か角に叩きつけた。角は欠けさえしなかった。「驚いたな。こんな硬いものは見たことがない」
「おかげでアラスの脳がまだ頭の中に留まってるんだろう」とカルテン。「でもあまり具合がよさそうには見えない。セフレーニアのところへ運ぼう」
「三人で先に行っててくれ。わたしはヴァニオンと話がある」スパーホークが言った。
 四人の騎士団長は少し離れた場所から戦況を眺めていた。
「サー?アラスが負傷しました」スパーホークはコミエーに報告した。
「ひどいのか」ヴァニオンがすぐに尋ねる。
「ひどくない負傷などというものはないぞ、ヴァニオン」とコミエー。「何があったんだ、スパーホーク」
「レンドー人に斧で頭を一撃されたそうです」
「頭を? それなら大丈夫だ」コミエーは手を伸ばし、オーガーの角のついた自分の兜を叩いた。「これはそのためのものだから」
「あまり具合がよさそうには見えませんでした。ティニアンとカルテンとベヴィエが、セフレーニアのところへ連れていきました」
「心配はいらんよ」コミエーは自信たっぷりだ。
 スパーホークはアラスの負傷のことを胸の奥に押しこんだ。
「マーテルの戦術が少しわかったような気がします。レンドー人の軍団をマーテルが率いているのには、それなりの理由があるんです。レンドー人は近代戦が得意ではありません。防具の類は何も――兜さえ――身につけませんし、剣の扱いは憐《あわ》れになるくらい下手くそです。城壁の上からレンドー人を一掃するのは、麦刈りをするようなものでした。敵は狂信の熱に浮かされて、まったく見込みのない戦いを挑んできます。マーテルはそのレンドー人を使ってこちらを消耗させ、少しでもこちらの数を減らそうとしているのだと思います。そしてわれわれがじゅうぶん消耗したところで、カモリア人とラモーク人の傭兵を差し向けようというのでしょう。何とかレンドー人を城壁に近づげない工夫が必要です。とにかくクリクと話してみます。何かいい手を思いついてくれるでしょう」
 本当にクリクはいい手を思いついた。年来の経験と、髪が灰色になった退役軍人たちにあちこちで話を聞いていたために、従士は巧妙な戦術をいくつも知っていたのだ。たとえば〝撒《ま》き菱《びし》?というものがある。これはごく単純な、鋭い四本の刺《とげ》を持つ小さな鉄製の武器で、どういうふうに落ちてもかならず鉄の刺の一本が上を向くような形になっている。レンドー人はブーツをはかず、柔らかい革製のサンダルをはいているだけだ。刺に毒を塗っておけば、撒き菱は単なる障害物ではなく、致命的な武器になる。十フィートほどの長さの丸太に先を尖《とが》らせた杭を針鼠《はりねずみ》のように植え、これにもやはり毒を塗って城壁の前に何本も転がしておけば、敵は簡単に近づくわけにはいかなくなる。太い丸太をロープで胸壁から吊るし、振り子のように左右に動くようにしておけば、城壁に立てかけられた梯子など蜘蛛《くも》の巣のように振り払うことができる。
「いずれもそれだけで本格的な攻撃を撃退できるようなものじゃありませんがね」とクリク。「それでも足を止めさせることはできますから、そこをクロスボウや長弓で狙い撃ちすればいい。城壁までたどり着ける敵は、多くはないはずです」
「そういう手だてを求めていたんだ」とスパーホーク。「さっそく市民を集めて、製作に取りかからせよう。今のところカレロスの市民は単なる無駄飯食いだからな。仕事をあてがってやったほうがいい」
 クリク発案の品を作るには数日を要し、そのあいだにもレンドー人の攻撃は何度かくり返された。やがてアブリエル騎士団長の投石機が城壁の前にたっぷりと撒き菱をばらまき、針鼠になった丸太が何本も転がされて、城壁から二十ヤードほどのあたりに折り重なった。それ以後は城壁まで到達できるレンドー人はめっきりその数を減らし、やっと近づいてきた者たちにしても、梯子を持ってくるような余裕はとてもなかった。狂信的な文句を叫び、剣でやみくもに城壁の石を叩くのが精いっぱいだ。弓兵たちはそれを胸壁からやすやすと狙い撃ちした。無益な攻撃が何度かくり返されたあと、マーテルは何日か攻撃を手控え、作戦を練り直しているようだった。夏の炎天下、城壁の外に積み重なったレンドー人の死体はたちまち腐敗して、旧市街には不快なにおいが立ち込めた。
 ある晩、スパーホークと仲間たちは、久しぶりに風呂に浸かって温かい食事にありつこうと騎士館に戻った。最初にしたのはサー?アラスを見舞うことだった。巨漢のジェニディアン騎士は寝台に寝かされていた。目はまだぼんやりしていて、表情には戸惑いが見られる。
「横になってばかりいるのには、もううんざりだ」口調もどこか間延びしていた。「ここは暑くていけない。外へトロール狩りにいかないか。雪の中を駆けまわれば、少しは身体の火照《ほて》りもおさまるだろう」
「ヘイドのジェニディアン騎士本館にいると思っているのです」セフレーニアが静かに説明した。「しきりにトロール狩りに行きたがっています。わたしのことは世話係の下女だと思っていて、しょっちゅう口説こうとしています」
 ベヴィエが息を呑んだ。
「あと、ときどき泣いていますね」


「アラスが?」ティニアンがやや面白がるように言った。
「嘘泣きだろうと思いますけれど。最初のとき慰めようとしたら、取っ組み合いのようなことになってしまいました。今の状態を考えると、とても頑丈な人です」
「大丈夫でしょうか。つまり、元に戻るんでしょうか」カルテンが尋ねる。
「何とも言えないのですよ、カルテン。脳に何かあっうのですが、その結果がどんな形で現われるか、まるで予測がつきません。みなさんもう行ったほうがいいでしょう。アラスを興奮させないように」
 アラスは岩を転がすようなトロールの言葉で、長々と何かをしゃべりはじめた。スパーホークはその言葉の意味がわかるのを知って驚いた。グエリグの洞窟でアフラエルにかけられた呪文が、まだ効力を持続しているらしい。
 風呂に入って髭を剃ると、スパーホークは修道僧のローブに着替え、あまり人気《ひとけ》のない食堂の、長いテーブルの前に仲間たちと腰をおろした。
「次にマーテルはどう出てくると思う」コミエー騎士団長がアブリエルに尋ねるのが聞こえた。
「たぶん標準的な包囲戦の戦術に切り替えてくるだろう」アブリエルが答える。「しばらくは腰を据えて、攻城兵器で地道に攻撃してくると思う。あの狂信者の群れは、迅速な勝利を得るための唯一の手段だった。こうなったら戦いは長引くはずだ」
 一同は静かに腰をおろしたまま、大きな岩が街に降り注ぐ音に耳を澄ました。
 そこへタレンが飛びこんできた。顔は泥だらけで、服もひどく汚れている。
「マーテルを見かけたんだ!」少年は興奮して叫んだ。
「マーテルならみんな見てるぞ」カルテンが椅子の中で身じろぎしながら答えた。「わざと姿を見せるみたいに、ときどき馬で前線に出てくるからな」
「城壁の外じゃないんだよ、カルテン。大聖堂の地下にいたんだ」
「何を言っているのだ、いったい」ドルマントが口を開いた。
 タレンは深呼吸をして話しはじめた。


アニアスは羽根ペ

2016-03-21 10:31:22 | 日記


「どこへ」
「古い友だちを苛《いら》つかせにいく」スパーホークは冷酷な笑みを浮かべ、少年を従えて階段を上がり、上方の回廊へ向かった。痩せぎすのシミュラの司教は膝の上に書きもの台を広げ、両側には黒いローブ姿の追従者をかなりの人数したがえNeo skin lab 介紹人 ていた。スパーホークとタレンはアニアスのまうしろに席を占めた。ドルマントとエンバンが甲冑姿の騎士団長たちを、壇の下方のクッションつきの椅子に案内している。アラスとベリットとティニアンが自分のあとを追ってくるのに気づいて、スパーホークは来るなと言うように手を振った。
 アニアスは不意を衝《つ》かれると口を滑らせることがある。その日の朝ドルマントの家で起きた大量毒殺未遂事件にシミュラの司教が関わっているのかどうか、確かめることができるかもしれなかった。
「おお、これはもしかして、シミュラの司教殿ではないかね」と驚いたふりで、「故国を遠く離れていったい何をしているんだ、アニアス」
 アニアスは振り向いてスパーホークを睨んだ。
「何を企《たくら》んでいるのだ、スパーホーク」
「傍聴しているだけだ」スパーホークは兜《かぶと》を脱いで籠手《こて》をその中に入れ、盾の締め金をはずし、剣帯を取った。それらをまとめてアニアスの座席の背に立てかける。「邪魔にはならんだろうね、ネイバー。商売道具とはいえ、着けたままだと動きが不自由だし、座り心地もいま一つなんだ」言いながら腰をおろす。「元気だったかね、アニアス。何ヵ月ぶりになるかな」やや間を取って、「少し痩せたんじゃないか。顔にも生気がないようだ。もっと新鮮な空気を吸って、運動を心がけるべきだな」
「静かにしたまえ、スパーホーク。わたしは討論を聴いているのだ」
「ああ、それはもちろん。話ならあとでゆっくりとできるしな――高血壓中醫お互いに最近の実績を話し合ったりして」アニアスの反応には特に普通と変わったところは見られず、スパーホークは司教の関与にやや自信を失った。
 議場ではドルマントが話を始めていた。
「みなさんのお許しをいただいて、最近起きた出来事をここで聖議会に報告するのは、わたしの義務だろうと考える次第です。われらの主たる仕事は永遠のものではありますが、なおわれわれは俗世にあって仕事をこなしている。世間の動きにも目を配っていなくてはならないわけです」
 マコーヴァがアニアスのほうを見上げてお伺いを立てた。ンと一枚の紙切れを取った。スパーホークは両腕を敵の椅子の背に預けて、肩越しに簡潔な指示が走り書きされるのを眺めた。〝話させろ?


「うんざりだなあ、アニアス」スパーホークが愉快そうに言う。「自分の口でしゃべれたら、もっとずっと都合がよかったのにな」
「黙っていろと言ったはずだ、スパーホーク」マコーヴァに渡す走り書きを若い僧に手渡しながら、アニアスが不機嫌そうに言った。
「今朝はみんな怒りっぽいことだ」とスパーホーク。「昨夜はよく眠れなかったのかね、アニアス」
 アニNeo skin lab 代理人アスは振り向いて、しつこく嫌がらせを続ける男を睨みつけた。「それは何者だ」とタレンを指差す。
「小姓だよ。騎士階級に付きものの面倒の一つだ。従士がほかのことで手いっぱいなのでね」
 マコーヴァが走り書きを一瞥《いちべつ》した。
「博学なデモスの大司教のお言葉はいつでも歓迎です。ただ、簡潔にお願いしたい。重要な案件がいくつも残っているのでね」高慢な口調でそう言うと、マコーヴァは演台の前から離れた。
「もちろんだとも、マコーヴァ」代わってドルマントが演台の前に立つ。「では簡潔に」と前置きして、「エラナ女王の全快により、エレニア王国の政治情勢は急激な変化を遂げ――」
 驚きの声が議場内にこだまし、混乱したつぶやきがあちこちから上がった。スパーホークは依然としてアニアスの座席の背にもたれたまま、司教がまっ青になって腰を浮かすのを見てほくそ笑んでいた。「まさか!」アニアスがあえぐようにつぶやいた。
「驚くべきことだろう、アニアス。まったくの予想外だったな。女王陛下からよろしく[#「よろしく」に傍点]お伝えするようにとの言伝《ことづて》だ」
「説明したまえ、ドルマント!」マコーヴァがなかば叫ぶように要求する。
「簡潔を期したのだがね。きみがそう要求したのだよ、マコーヴァ。一週間足らず前、エラナ女王は不思議なご病気から回復されました。多くの者がこれは奇跡だと言っております。女王がご回復になると同時にある事実が明るみに出て、かつての摂政の宮は――それにその母親も――大逆罪の容疑で逮捕されました」
 アニアスが気を失いそうになって椅子に腰を落とす。


に知らせるよう

2016-03-17 12:02:52 | 日記


 
   「死んではいないが、傷は深いそうだ」
   「旦那さんが留守のときに、何ということを仕出かしたのや」
   「もし逃げ帰ったら、番所にとどけるように」

 同心たちは「心当たりを当たHKUE 呃人ってみよう」と、話しながら戻っていった。
   「女将さん、大変なことになりました」
 さすがの三太も、落ち着いては居られない。辰吉の兄として、辰吉を救ってやらねばならない。
   「どないしたんや、またお客の苦情か?」
   「それどころやおまへん、辰吉坊ちゃんが他人を刺したそうでおます」
   「ええっ、それで相手は死んだのか?」
   「生きてはいるが、深手やそうだす」
 お絹は動転して、その場にひっくり返った。
   「何が、何があったのや」
   「わかりまへん」
   「最近、金遣いが荒くなっていたので、心配して問い質そうとしていたところやが、何でまた旦那さんが留守の時に…」
   「女将さん、しっかりしておくなはれ、わいが付いています」
   「三太、頼みます」
   「辰吉坊ちゃんが帰ってきても、番所に知らせたらあきまへんで、わいが戻るまで待っといてください」
 
 三太は店の者に女将さんを頼んで、「心当たりを探してみます」と、駈け出していった。
   「どうか、相手の人が死にませんように…」
 死ねば辰吉は死罪か、軽くても遠島である。三太の後ろ姿に、手を合わせるお絹であった。

 三太は、大江戸一家に飛び込んだ。「辰吉は来ていない」と、言うことだったので、もし来たら「庇ってやってください」と、まず自分にお願いHKUE 呃人をして、ゴロツキの溜まり場を目指した。

 草が血で染まったところがあった。
   「ここで刺したな」
 近くに事情を知る若い男が居たので、話を訊いてみた。刺された男は、辰吉に自分の女を奪ったと因縁をつけ、ドスを出して辰吉を脅したらしい。

 二人揉み合った挙句に、辰吉は相手の男からドスを奪い、それを奪い返そうとした男の腹を刺してしまったらしい。正当防衛などというものは認められない。人を刺せば刺した方がお罰を受けることになる。

 辰吉は堅気の若旦那である。顔見知りの大江戸一家のほかには逃げ込む当てなどない。きっと夜になれば店に戻ってきて自分に相談するに違いないと、三太は待ち続けた。だがその夜、辰吉は戻らなかった。
   「もしや、上方の祖父や伯父を頼ったのではないやろか」
 もはや、気丈なお絹も、三太の相談相手ではなかった。ただ、心痛のあまり狼狽えるばかりである。
   「若旦那さん、お金は持ってなさるのだすか?」
 お絹は答えられないので、代わって一番番頭が答HKUE 呃人えた。
   「店の金を勝手に持って行ったりしないので、あまり持っていないと思います」
   「女将さん、最近小遣いをなんぼやらはったのだす?」
   「今朝、二両だす」
 お絹は、ようやく答えた。
   「それだけあったら、上方への路銀になります」


ーンは彼女と似合う

2016-03-07 09:52:07 | 日記


この名前、君に告げた日のことを憶えてるかな?

そう心また呼びかけて懐かしい、あの小さかった雪白やさしい顔が愛しくなる。
見つめてくれた底抜けに明るい瞳、あの無垢まばゆい眼差しは変わらないまま大人になったろうか?
どうか変わらないで健やかにあってほしい、そんな祈りごと白水仙とる前で恥ずかしがりは笑ってくれた。

「綺麗な名前ですね、雪の朝って冬生まれなんですか?」
「三月生まれなの、だから春の雪よ?シュウタくんは何月生まれなの?」

応えながら名前の由来に温められる。
こうして言葉にするだけで父が近づく、けれど届かない距離は超えられない。
それでも自分には父から贈られた名前と時間がある、その温もり花を抱く真中で優しい瞳が羞んだ。

「11月です、僕も父が名前を付けてくれました…あまねくって意味なんです、周りの皆を喜ばせるって意味で、」

この子もお父さんが名前を付けたんだ?
その「同じ」がなにか嬉しくて笑いかけた。

「周りを喜ばせるって素敵な名前ね、円周率の周に太郎の太かな?」
「はい、そうです…」

頷いてくれる頬が桜色あざやがす。
黒髪やわらかな額も薄紅ほころんで初々しい、こんな貌に初恋が懐かしむ。

―ライトグレーのダッフルコートも似てるんだわ、身長も顔も全く違うのに恥ずかしがりは似てて、

この少年は似ている、遠い自分の初恋と。

そんな発見して不思議になる、だって本当に外見まったく似てい坐骨神經痛ない。
初恋は涼やかな長身、ひろやかに頼もしい背中、白皙端整な笑顔と意志まっすぐな切長い瞳。
それが自分の初恋の貌で小柄な少年とは正反対、それでも似ていると想わされてしまう優しい不思議に笑いかけた。

「チューリップ・ブーケ、こんな感じでどうかな?リボンは青にしようと思うんだけど、」

薄紅色、桃色、白ぼかし、それから水仙の純白にブルースターと勿忘草の青。
可愛らしい色に凛と聡明なトだろう?そんな自信に少年は笑ってくれた。

「すごく素敵です、似合いそうで…勿忘草が良いですね、」
「でしょう?大事な試験って言ってたから入れてみたのよ、記憶力が良くなりそうだもの。じゃあ仕上げるわね、」

笑いかけリボンかけながら嬉しくなる。
似合うと言ってもらえて嬉しい、こんなふう贈り相手に寄りそえる花は自分にとって一期一会の宝物だ。

『由希、俺の写真を綺麗だって言ってくれるけどね、綺麗なのはその時だけの瞬間だからだよ?』

ほら父が記憶から笑いかけてくれる。
涼やかなテノール深く響いて温かい、この温もりだけで自染髮分は生きてこられた。


目が少し血走っている

2016-03-01 14:22:27 | 日記


「ヴェンネで聞いたら、あそこからガ如新nuskin產品セックまで四十リーグだと言われたんだがな」とクリク。
 村人はばかにするように鼻を鳴らした。
「街のやつらは一リーグがどのくらいかも知りやしませんよ。ヴェンネからガセックまでなら、三十リーグをそう出ちゃいないはずです」
「ゆうべ森の中で人の姿を見かけたんだが」クリクが何気なさそうに切り出した。「黒いローブを着て、フードをかぶってた。このあたりの人だったのかな」
 村人の顔がまっ青になった。
「このあたりには、そういう格好をする者はいないね」
「本当に?」
「そう言ったろう。そんな服装をする者は、この近所にはいないよ」
「それなら旅人だったんだろう」


「きっとそうだ」男はふたたびぶっきらぼうな調子に戻っていた。
「時間を取らせてすまなかった、ネイバー」スパーホークはファランの向きを変え、村をあとにした。
「まだ何か知っていそうでしたね」最後の家のそばを通り過ぎると、クリクが感想を述べた。
「ああ。シーカーに支配されてはいないが、ひどく恐れていたようだ。とにかく急ごう。暗くなる前にみんなに追いつきたい」
 西の空が夕焼けに染まるころ、二人は仲間に追いつくことができた。その晩は道からあまり離れていない、静かな湖如新nuskin產品のそばで野営することになった。
「雨になると思うか」夕食が終わって火を囲んでいると、カルテンが尋ねた。
「やめてよ。ラモーカンドでずぶ濡れになった服がやっと乾いたとこなんだから」とタレン。
「いつ降りだしてもおかしくないでしょう」クリクがカルテンの問いに答えた。「今このあたりは雨の季節ですからね。でもそんなに湿度が上がってるような気はしません」
 馬をつないだ場所から戻ってきたベリットが、小さな声で報告した。
「サー・スパーホーク、近づいてくる者がいます」
 スパーホークは立ち上がった。「何人だ」
「蹄《ひづめ》の音は一頭分しか聞こえません。われわれが向かっていた方角から近づいています」わずかに間を置いて、「馬をすさまじく駆り立てているようです」
「あまり賢いとは言えんな。この闇と、道の状態を考えれ如新nuskin香港ば」アラスがうなるようにつぶやく。
「焚き火を消しますか」とベヴィエ。
「もう気がついていると思います、サー・ベヴィエ」ベリットが答えた。