きょうの世界昔話 gooブログ編

アンデルセン童話やグリム童話など、世界の昔話をイラストと朗読付きで毎日配信。

8月31日の世界の昔話 仙女

2009-08-31 08:30:02 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 8月の世界昔話


8月31日の世界の昔話


仙女



仙女
ペローの童話 → ペローの童話の詳細


 むかしむかし、お母さんと二人の娘が、村はずれのまずしい家にひっそりとくらしていました。
 お母さんは、自分ににている姉さんばかりかわいがり、下の妹にばかり、家の用事や力仕事をさせていました。
 でも妹は、ちっとも嫌(いや)な顔をせず、洗濯(せんたく)も料理も掃除(そうじ)も、歌を歌いながら楽しくやっていました。
 森へキノコやたきぎとりに行けば、ウサギやリスが集まってきて手伝ってくれるので、ちっともつらくはありません。
 畑仕事の時も、妹が来ると小鳥たちが飛んで来て、きれいな声でさえずってくれました。
 さて、ある寒い寒い日のことです。
 お母さんは妹に井戸(いど)へ水をくみに行くように言いつけました。
 妹はおけにひしゃくをいれて村の井戸へ行きました。
 すると、井戸のそばにボロボロの洋服を着た、女の人が立っています
 髪の毛は、一目で何日もあらってないことがわかります。
 顔も汚れていて、ほっぺたはやせこけていました
 女の人は、妹が水くみをはじめると声をかけてきました。
「すみませんが、お水を一杯、飲ませてもらえませんか?」
「ええ、いいですよ」
 妹は、ニッコリ笑ってうなずきました。
 そして、おけに浮かんだゴミを全部とり、きれいな水だけをひしゃくにくんでわたしました。
「さあ、何杯でもどうぞ」
 女の人は喜んで、おいしそうにゴクゴクとひしゃくの水を飲みほしました。
 それから妹にひしゃくを返すと、こう言いました。
「あなたは、なんて優しい娘なのでしょう。これから先、あなたが話せば、バラの花と宝石が口から飛び出すようにしてあげましょう」
「まあ、ありがとう」
と、妹が思わず言うと、ピンク色のバラの花と真珠(しんじゅ)が、ほんとうにポロリと口から飛び出しました。
「すてき。ありがとうございます」
 妹は、ポロリポロリとこぼれるバラの花と宝石を集めて、エプロンのポケットにしまうと、女の人にお礼を言って家に帰りました。
 家に帰った妹は、さっそくエプロンからバラの花と宝石を見せて、お母さんと姉さんに、井戸で会った女の人のことを話しました。
 そう話しているあいだにも、赤や白のバラの花とルビーダイヤモンドが、ポロポロとこぼれました。
 お母さんも姉さんもビックリ、あわててその宝石をひろいました。
 そして姉さんは、
「あたしも行ってくる」
と、おけとひしゃくを持って、井戸へ走って行きました。
 井戸のそばには、さっきのみすぼらしい女の人が立っていて、姉さんに言いました。
「すみませんが、お水を一杯飲ませていただけませんか?」
 ところが姉さんは、あんまりあわてていたので、妹が『みすぼらしい女の人が立っていて』という話を、よく聞いていなかったのです。
 花や宝石を出してくれる魔法を使う仙女(せんにょ)は、きっと美しい貴婦人(きふじん)のような女の人にちがいないと、姉さんはかってに思いこんでいたのでした。
 だから、みすぼらしい女の人にそう言われたとたん、
「お前なんかに用はない! あっちへお行き!」
と、ひしゃくで水をすくって、顔にひっかけました。
 みすぼらしい女の人は、ぬれた髪と顔で姉さんをにらみながら言いました。
「あなたは、なんて意地悪な娘でしょう。これから先、あなたが何か話したら、口から毛虫や毒(どく)虫が飛び出すようにしてあげます」
 そしてそのとたん、女の人は消えてしまいました。
「ちょっと、ちょっと待っておくれよ!」
 姉さんはあわてて言いました。
 すると、口からほんとうに毛虫や毒虫が、ポロポロと飛び出してきたのです。
 姉さんは泣きながら家に帰り、お母さんに言いつけました。
 そのあいだも、毛虫や毒虫が口から飛び出て、部屋中をゴソゴソ歩きまわります。
 お母さんは、カンカンにおこり、
「姉さんにウソを教えたね! みすぼらしい女が仙女だったんじゃないか! ウソつきは、出てお行き!」
と、妹を追い出しました。
 妹は、ションボリと森へ行きました。
 そこへ、狩(か)りをしにお城の王子さまが、馬に乗ってとおりかかりました。
「ないたりして、どうしたのですか?」
 王子さまは、妹をよび止めました。
 妹は泣きながら、お母さんの家を出てきたことを話しました、
 そう話す妹の口から、バラの花と宝石がポロポロとこぼれます。
 王子さまは、妹のかわいらしさと、話すたびに花や宝石が口から飛び出すことに感激(かんげき)して、お城に連れて行くことにしました。
  妹はやさしくて働き者でしたから、王子さまのお父さんの王さまにも大変気にいられ、王子さまと結婚してお妃(きさき)さまになったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 野菜の日
きょうの誕生花 → サルビア
きょうの誕生日 → 1961年 ANRI(杏里)(シンガー)


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8月30日の世界の昔話 パーベルじいさんの小石

2009-08-30 07:03:19 | Weblog

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8月30日の世界の昔話


パーベルじいさんの小石



パーベルじいさんの小石
ブルガリアの昔話 → ブルガリアの国情報


 むかしむかし、パーべルじいさんという、びんぼうなヒツジ飼いがいました。
 ほんとうにびんぼうで、へやを明るくするランプも持っていません。
 でも、おじいさんは小さな小屋に、小イヌと小ネコといっしょに、たのしく暮らしていました。
 ある日、いつものようにヒツジをつれてあるいていると、森のなかから悲しそうな声がきこえてきました。
 パーべルじいさんは、声のするほうへいってみました。
 すると、森の木がもえていて、一ぴきのまだらトカゲが、ほのおにつつまれてないているのです。
 おじいさんはかわいそうに思って、ヒツジ飼いの長いつえを、トカゲのほうにさしだしてやりました。
 トカゲはつえをつたって、ぶじに火のなかからにげだすことができました。
「命をすくってくださって、ありがとうございます。わたしはトカゲの王の娘です。わたしについていらしてください。お日さまのようにかがやく小石を、お礼にさしあげましょう」
 こういうと、トカゲは草の上をスルスルとはっていきました。
 トカゲのほらあなにつくと、
「小石をとってきますから、ここでまっていてください」
と、いって、トカゲの王女は中へきえていきました。
 もう日がくれて、森はまっくらです。
 トカゲが小石をくわえてほらあなから出てくると、たちまちあたりは、昼のように明るくなりました。
 もう夜があけたのかと思って、小鳥たちが朝の歌をうたいだしたほどです。
「この小石で、地面を三回たたいてのぞみをとなえてごらんなさい。どんなことでもかなえてくれます」
と、トカゲの王女はいいました。
 家へかえるとおじいさんは、さっそく小石をとりだしてみました。
 すると、へやじゅうがパッと明るくなりました。
 小イヌと小ネコは、あまりにもまぶしくて、前足で目をかくしてしまったほどです。
 夕食をすませたあとで、おじいさんは一人ごとをいいました。
「このうえ、小石に願いをかけることなんてあるかな? わしは家もヒツジも持っている。それにきょうからは明るいへやで、夕食をくえるようになった」
 それでもおじいさんは、いろいろなことが頭にうかんで、なかなかねむれません。
「やっぱり、あの小石にたのんでみようかの。だが、はて、なにをたのんだものか。・・・おお、そうじゃ。白い大理石(だいりせき)のご殿をたのんでみるとしよう」
 おじいさんはねどこからおきあがると、たなの上の光る小石をとりました。
 そして、三回地面をたたいていいました。
「白い大理石のご殿よ。わしの前に出てこい!」
 するとアッというまに、おじいさんのあばら家は消えて、そこにすばらしい白い大理石のご殿がそびえました。
 かべはまるで鏡のようにピカピカで、イスや机は象牙(ぞうげ)、お皿や茶わんは金でできています。
 パーべルじいさんは目をまるくして、ご殿の中を、見物してあるきました。
 そして、小石をふところにしまって、フカフカの羽ぶとんをしいたねどこに横になりました。
 ちょうどその夜、となりのイワンがやってきました。
「じいさん、これはどうした? このすごいご殿は?」
「小石がたてた、ご殿じゃよ」
「小石だと? 見せてくれ。小石がどうやって、こんなご殿をたてたんだね?」
 パーべルじいさんは小石を見せて、わけを話してきかせました。
 あれこれと話しているうちに、二人ともねむたくなりました。
「イワン。こんやはここにとまったらいい」
 おじいさんが、そういったので、イワンは、おじいさんといっしょに、羽ぶとんでねることになりました。
 ところがイワンはねむらないで、おじいさんがねつくのをジッとまちました。
 そしておじいさんのふところから小石をとると、三回地面をうっていいました。
「四人の力もち出てこい。ご殿をもちあげて、ドナウ川のむこうまではこんでいけ!」
 たちまち四人の力もちがあらわれて、ご殿をもっていきました。
 イワンは小石をもって、にげだしました。
 つぎの朝、パーべルじいさんは目をさましてビックリ。
 ご殿も小石もなく、もとのままのあばら家に小イヌと小ネコがいるだけです。
 おじいさんはかなしくて、泣きだしました。
 ヒツジたちもいっしょに、メエメエとなきました。
 小イヌと小ネコも、かなしくなりました。
 そして小ネコが、小イヌにいいました。
「おじいさんの小石、ぼくたちでさがしてあげようよ」
「そうだ。いこう」
 小ネコと小イヌはいそいででかけると、ドナウ平野をすぎてドナウ川に出ました。
 小ネコは泳げないので、小イヌの背中にのってドナウ川をわたりました。
 またあるきつづけて、やっとご殿につきました。
 二ひきは庭にかくれて、日がくれるのをまち、こっそりまどからしのびこみました。
 イワンは小石を口の中にかくして、羽ぶとんの上でねています。
「いいことがあるよ。コショウ入れにしっぽをつっこんで、そのコショウのついたしっぽで、イワンのはなをくすぐってやるのさ」
 小ネコはこういうと、さっそくとりかかりました。
 コショウ入れにつっこんだしっぽで、イワンのはなをくすぐりはじめたのです。
「ハッ、ハッ、ハックション!」
 イワンは、大きなクシャミをしました。
 そのいきおいで、小石は口からとびだしました。
 小ネコはすばやく小石をくわえて、小イヌといっしょににげだしました。
 ドナウ川までくると、また小ネコは小イヌの背中にのりました。
 ところが川のまん中までくると、小イヌがいいました。
「ぼくにも、その石見せてくれよ」
「いまは、だめだよ」
「いますぐ見せてくれ。さもないと、水の中におっことしてやるよ」
 小ネコはビックリして、小石を小イヌにわたしました。
 そのとき、小石はツルッとすべって、水の中におちてしまいました。
 二ひきは岸にあがって、泣きだしました。
 そこへ、つりざおをもった漁師がとおりかかりました。
 漁師は、二ひきがおなかをすかして泣いているのだと思って、すぐに大きなさかなをつってくれました。
 小イヌと小ネコは、そのさかなをつつきはじめました。
 すると、どうでしょう。
 さかなのおなかから、小石が出てきたじゃありませんか。
 小イヌと小ネコは大よろこびで、パーべルじいさんのところへかえりました。
 おじいさんは、まだ泣いていました。
 小ネコと小イヌは、おじいさんの頭の上に小石をおとしました。
 その光を見たとたん、おじいさんは小石をとって、三回地面をたたいていいました。
「たったいま、イワン出てこい! 袋にはいって出てこい!」
 袋にはいったイワンがパッとあらわれると、おじいさんはつえで、袋をさんざんぶちのめしてから、イワンを追いはらいました。
 おじいさんは、小石をさいふにしまっていいました。
「もう、ご殿もなにもいらぬ。どうせイワンにとられるだけじゃ」
 それいらいパーべルじいさんは、まい晩くらくなると、小石をたなの上におきました。
 小石はあかあかと、へやをてらしました。
 やがておじいさんが死ぬと、あのトカゲが小石をもっていってしまったということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 冒険家の日
きょうの誕生花 → かやつりぐさ
きょうの誕生日 → 1948年 井上陽水(シンガー)



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8月29日の世界の昔話 騎士と水の精

2009-08-29 06:54:37 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 8月の世界昔話


8月29日の世界の昔話


騎士と水の精



騎士と水の精
ドイツの昔話 → ドイツの国情報


 むかしむかし、りっぱなお城に一人の騎士(きし)が住んでいました。
 騎士は剣で戦うのが強いだけでなく、誰にでも親切でやさしいので、村の人たちからとても愛されていました。
 ある朝のこと。
 騎士が教会へおいのりをしに出かけようと、ウマに乗って森の道へはいったときです。
 湖のそばの石に、緑色のドレスを着た女の人がすわっているのを見つけました。
 金色の髪をそよ風になびかせて、ほほえみながら小鳥たちのさえずりに耳をかたむけています。
 騎士は、あまりの美しさにウマをおりて、女の人に声をかけました。
「こんなさびしいところで、何をしているのですか?」
 女の人は騎士を見あげると、愛らしい笑顔を見せました。
「はい。あなたをお待ちしておりました。わたしは今までずっとあなたのそばにいて、いくさのときも剣のけいこをしているときも、あなたをお守りしてきました」
 騎士は、喜びで胸がいっぱいになりました。
「確かに、ぼくはこれまで何度となく危ない目にあってきました。でもそんなとき、いつも不思議な力で守られていると感じていました。これから先もぼくを守ってくれますか? あなたのように美しい人がいつでもそばにいてくれたら、もうぼくはこわいものなどありません」
 女の人は、やさしくうなずいて答えました。
「もちろんお守りいたします。けれど、一つだけお願いが。それは、私と結婚してほしいのです。もしほかの女の人と結婚したら、あなたは死んでしまいますが」
「ほかの女の人と結婚するなんて考えられない。今すぐにでも、あなたと結婚したいのに」
 騎士がそう言うと、女の人はうれしそうに笑って、湖の色のように深い緑色の指輪(ゆびわ)をとり出して、騎士の指にはめました。
「私に会いたくなったら、この指輪によびかけてください。でも、それはあなた一人きりのときにしてくださいね」
 騎士は約束すると、女の人と別れて教会へ一人でウマを走らせました。
 教会でおいのりをささげると、騎士はすぐに自分の城にもどりました。
 そして部屋にはいると、誰もはいって来ないようにカギをかけて、そっと指輪に言いました。
「ぼくの愛する人よ。姿を見せておくれ」
 するとたちまち、美しい女の人が姿をあらわしました。
 騎士と女の人は、二人だけの結婚式をあげました。
 その次の日から、騎士は剣のけいこのときも、遠く戦いに出かけるときも、けがひとつせずにすみました。
 それに、宿屋で一人になり指輪にむかってよびかけると、騎士の妻は上等のワインや焼きたてのパンを持って、姿をあらわしてくれました。
 森に迷いこんだときには、指輪に耳をあてると、
「そのまま、まっすぐ。そこを右にまがって」
と、道を教えてくれます。
 騎士は心から妻に感謝(かんしゃ)し、二人は誰にも知られないまま、仲良く楽しい月日を過ごしました。
 ある日のこと、王さまのたいかん式がありました。
 騎士はそのお祝いの席で、「剣の馬上試合を見せよ」と、お城によばれました。
 騎士がウマに乗って戦う姿はりりしく、王さまは一目で騎士を気に入り、こう言いました。
「そなたに奥方(おくがた→おくさん)がないのなら、ぜひ、わたしの姪(めい)と結婚してやってほしい」
「・・・・・・」
 騎士は、こまってしまいました。
 騎士には妖精(ようせい)の妻がいて、その妻との約束で、ほかの女の人と結婚したら死んでしまうからです。
 でも騎士として、王さまのたのみをことわることも出来ません。
 騎士は、知り合いの大臣に相談しました。
 すると大臣は、騎士に妖精とわかれるようにせまりました。
 それで騎士は、とうとう王さまの姪と結婚する決心(けっしん)をしました。
 そのとたん、騎士の指でパチンと緑色の指輪がわれて、床に落ちました。
 けれど、誰一人そのことには気がつきませんでした。
 騎士と王さまの姪との婚礼(こんれい)の日がやって来ました。
 大広間には、着かざった人が大勢集まり、二人の結婚をお祝いしました。
 すると、どこからふいて来たのか、大広間のまん中に風がふき、その風の中にうす緑色のドレスを着た騎士の妻が姿を見せました。
 頭には木の葉であんだかんむりをかぶり、裸足(はだし)の白い足にも、ツタかざりをつけています。
 妻は、静かに騎士の前を通り過ぎました。
 その顔はかなしみにあふれ、輝いていた緑色の瞳も暗くしずんでいました。
 それを見た騎士は、思わず立ちあがってさけびました。
「みなさん! 実はぼくには妻がいたのです。心も姿も美しい妻です。でも、ぼくはその愛する妻との約束を破り、その罰(ばつ)で今から死ななくてはなりません」
 妻はその言葉を聞くと、ニッコリほほえんで、スーッと姿を消しました。
 そのとたん、騎士はバタリとたおれて、そのまま死んでしまったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 焼肉の日
きょうの誕生花 → けいとう
きょうの誕生日 → 1950年 八代亜紀(歌手)



きょうの日本昔話 → 天井に現れた大目玉
きょうの世界昔話 → 騎士と水の精
きょうの日本民話 → 死神の魂袋と扇
きょうのイソップ童話 → マムシとキツネ
きょうの江戸小話 → はっぱの手紙


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8月28日の世界の昔話 ロンドン橋

2009-08-28 15:26:26 | Weblog

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8月28日の世界の昔話


ロンドン橋



ロンドン橋
イギリスの昔話 → イギリスの国情報


 むかしむかし、ノーフォークといういなか町に、まずしい男が住んでいました。
 その男がある日、夢を見ました。
 まだ見たことのない、ロンドン橋の景色(けしき)が広がると、
「ここへいけば、いいことがあるぞ」
と、いう声が聞こえたのです。
 その夢が、つぎの夜も、またつぎの夜も、たて続けに続いたものですから、男は、
「こりゃ、ためしにいってみよう」
と、長い道のりをロンドンまで歩きに歩き、やっとのことでたどりつきました。
 ロンドン橋のまわりには、たくさんのお店が立ち並び、川には大きな船がしきりといきかっています。
 男は生まれて初めて見る都のようすにウットリしながら、橋の上をウロウロしていました。
 けれど、夢のお告げにあったようないいことは、起こってくれません。
 そんなことが三日も続いたある日のこと、橋の上で店を開いている主人が男をよびとめました。
「おまえさん、なんだって毎日、こんなところをいったりきたりしとるんだね?」
「いえ、ここへくるといいことがあるっていう、夢を見たもんでね」
 男が答えると、主人は腹をかかえて笑いました。
「まったくあんたもおひとよしだな。実はおれもちょくちょく夢を見るよ。ノーフォークとかいういなかにいる、まずしい男の家の裏庭の、カシの木の根もとをほると、宝物が出てくるというんだ。だが、そんな夢をまにうけて、わざわざ出かけていくほど、おれはおひとよしじゃないね」
 それを聞くなり、男はいちもくさんに走り出しました。
 やがてノーフォークの家に帰りつくと、家の裏のカシの木の根もとをほりおこしてみました。
 すると、ほんとうにたくさんの宝物が出てきたのです。
 男はこうして大金持ちになると、ふるさとに教会をたてました。
 村の人びとはその記念に、男の銅像をこしらえたということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → バイオリンの日
きょうの誕生花 → ききょう
きょうの誕生日 → 1955年 宮川花子(漫才師)


きょうの新作昔話 → 音羽の池
きょうの日本昔話 → 親指太郎
きょうの世界昔話 → ロンドン橋
きょうの日本民話 → 子どもの好きな地蔵さん
きょうのイソップ童話 → 羽根を切られたワシとキツネ
きょうの江戸小話 → 命より皮が大事


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8月27日の世界の昔話 笛ふき岩

2009-08-27 06:52:58 | Weblog

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8月27日の世界の昔話


笛ふき岩



笛ふき岩
中国の昔話 → 中国の国情報


 むかしむかし、ある浜辺に、まずしい親子が住んでいました。
 二人はさかなをとって、くらしていました。
 息子は笛(ふえ)をふくのが上手で、まい朝、日がのぼると岩の上に立って笛をふきました。
 そうすると、海のさかなも貝も顔をだして、ウットリと聞きいりました。
 人びとは息子を『笛ふき』と、よびました。
 ある日のこと、笛ふきは浜辺にたおれていたおじいさんをたすけました。
 おじいさんはたすけてもらったお礼に、タケノコをくれました。
「このタケノコが大きくなったら、これでさかなをとるカゴをつくりなさい。それから、笛を二本つくりなさい」
と、いったかと思うと、スーッと見えなくなってしまいました。
 笛ふきが、そのタケノコをうえると、タケノコは見るまに大きくなって、青あおとした一本の竹になりました。
 笛ふきはそれをきって、さかなをとるカゴをあみました。
 それから笛を、二本つくりました。
 竹であんだカゴを海の中に投げこむと、さかながいっぱいとれました。
 こうして親子のくらしは、とってもらくになりました。
 ところがあるときのこと、カゴをいくら海にいれても、さっぱりさかながかかりません。
 そのかわり、大きな貝が一つかかりました。
 笛ふきは、その貝を家へ持って帰りました。
「お母さん。きょうはさかながとれなかったよ。大きな貝が一つだけさ。ほら」
と、いって、笛ふきはカゴからその貝をとりだしました。
 するとそのとき、貝がパッと口を開いて、中から一人の娘があらわれました。
 それはそれは、美しい娘でした。
 笛ふきもお母さんも、ビックリ。
 娘はニッコリ笑って、こんな身のうえ話をしました。
 娘は海のそこに住んでいる、竜王(りゅうおう)のお姫さまでした。
 笛をふくのがとても好きでしたが、だれも教えてくれません。
 ある日、すてきな笛の音が、海の上から聞こえてきました。
 お姫さまはこっそりさかなになって、それを聞きに海の上にうかんでいきました。
 見ると、りっぱな若者が岩の上に立って、いっしんに笛をふいています。
 お姫さまは、ウットリと聞きいりました。
 それからというものは、まいにちのように海の上にうかびでては、笛の音に聞きいりました。
 お姫さまは、その笛をふく若者が、だんだん好きになりました。
 ところが竜王は、お姫さまをサメ大臣のところへお嫁にやろうとしたのです。
 そこでお姫さまは、こっそりにげだして、貝のおばさんのところへいってわけをはなしました。
 貝のおばさんは、やさしい人でしたから、お姫さまのねがいをかなえてあげようとおもいました。
「そこにある貝の中におはいり。そうすれば、笛ふきのカゴにいれておいてあげるよ」
 貝のおばさんはそういって、大きな貝を指さしました。
 お姫さまはその中にはいって、笛ふきのうちへきた、というわけです。
 この話を聞いて、笛ふきもお母さんも喜びました。
 二人とも、これからは三人でなかよくくらせると思ったのです。
 ところがあくる日、とつぜん海があれはじめ、イナズマがピカピカと光り、雷がゴロゴロとなりだしました。
 そのとき海の波間(なみま)に、サメの背中が見えました。
「サメがきました。はやくカゴを岸辺においてください」
と、お姫さまがいいました。
 笛ふきは、いそいでカゴを岸辺におきました。
 まもなくサメが、その上にはいあがってきました。
 そのとたん、カゴはパッとはねあがって山ほども大きくなり、サメの上にかぶさってしまいました。
 サメはとじこめられて、でられなくなりました。
 やがてカゴもサメも、黄色い岩山になってしまいました。
 あくる日になると、海にはまた、波のほえる音がとどろきました。
 ドドーッ! ドドーッ!
 山のような波が、岸辺におそいかかってきました。
 お姫さまは、ジッと海を見ていましたが、やがて顔を青くしていいました。
「たいへんです! 竜王が大波をたてて、人びとをおし流そうとしています」
 波は、いまにも家のそばまでとどきそうです。
 そのとき、いつかたすけてやったおじいさんが、とつぜんあらわれていいました。
「あの竹でつくった笛をふきなさい。休まずに、ふきつづけなさい」
 笛ふきはすぐさま、笛をふきはじめました。
 ピュー、ピュー、ピュー。
 けれども、波はよわまりません。
 もう、家の中までおしよせてきました。
 ピュー、ピュー、ピュー。
 笛ふきは、休まずにふきました。
 そのときには、三人はもう、海の水につかってしまいました。
 お姫さまはいそいでもう一本の笛をとりだすと、笛ふきと力をあわせて、
 ピュー、ピュー、ピュー。
と、ふきだしました。
 すると、うちよせてくる波がすこしずつひきはじめました。
 二人はかたをならべて笛をふきながら、一歩一歩前へすすみました。
 するとそれにつれて、波が一歩一歩、あとヘひいていきました。
 二人が岸辺まですすむと、波も岸辺までひきました。
 二人が岸辺の岩の上に立ってふきつづけると、波もひいていきました。
 なおも、二人はふきつづけました。
 くちびるがいたくなり、のどがかわいてきましたが、二人がちょっとでも休むと、たちまち波がおしよせてくるので、笛ふきとお姫さまはまた、元気をふるいおこしてふきました。
 笛の音がひびきわたると、海の波はすぐにひいていきます。
 こうして二人は、いく日もいく晩もふきつづけました。
 はまの漁師たちは、二人があまりいつまでもふいているので、しんぱいになりました。
 みんな集まってきて、
「大丈夫か?」
と、声をかけました。
 けれども二人はふりむきもしないで、ふきつづけています。
 みんなは、もっと近よってみて、
「あっ!」
と、おどろきました。
 それは、笛ふきとお姫さまではなく、たくさん穴のあいた二つの岩が、塩風にピュー、ピューと、なりひびいているのでした。
 漁師たちはおどろいて、笛ふきの家をさがしました。
 ところが、その家はかげもかたちもありません。
 ある朝のことでした。
 一人の若者が、みんなにいいました。
「おれは、笛ふきとお姫さんとお母さんとおじいさんが、白い雲に乗っていったのを、この目で見たぞ。たのしそうに手をふりながらいったんだ」
 これを聞いて、みんなは喜びました。
 はまべの岩は、昼も夜もピュー、ピューと、笛の音をひびかせています。
 漁師たちは、この二つの岩を『笛ふき岩』と、よぶようになりました。
 いまでも海南島の浜辺には、人のかたちをした岩が二つならんでおり、その岩に風がふきつけると、ピューピューと美しい笛の音がひびくのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 仏壇の日
きょうの誕生花 → ふよう
きょうの誕生日 → 1947年 田中星児(歌手)



きょうの日本昔話 → 山姥の顔をしたかんぴょう
きょうの世界昔話 → 笛ふき岩
きょうの日本民話 → 三日月の滝
きょうのイソップ童話 → 金のたまごをうむニワトリ
きょうの江戸小話 → お日さまよりも、足のはやい男


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