きょうの世界昔話 gooブログ編

アンデルセン童話やグリム童話など、世界の昔話をイラストと朗読付きで毎日配信。

3月31日の世界の昔話 シンデレラ

2010-03-31 08:12:46 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 3月の世界昔話


3月31日の世界の昔話


シンデレラ



シンデレラ

ペローの童話 → ペローの童話の詳細

シンデレラのぬりえ


 むかしむかし、とても美しくて、やさしい娘がいました。
 でも、お母さんがなくなってしまい、お父さんが二度目の結婚をしたので、娘には新しいお母さんと二人のお姉さんができました。
 ところがこの人たちは、そろいもそろって、たいへんいじわるだったのです。
 新しいお母さんは、自分の二人の娘よりもきれいな娘が気に入りません。
「まあ、あんたは、なんてかわいくない娘でしょう」
 三人は、つらい仕事をみんな、娘に押しつけました。
 寝床は粗末(そまつ)なわらぶとん。
 着る物は、つぎあてだらけ。
 おふろに入ることもゆるしてもらえず、娘のあたまに、いつも、かまどの灰が付いていました。
 そこで三人は、娘をシンデレラ(→灰かぶりの意味)とよんだのです。
 かわいそうなシンデレラでしたが、それでも、お姉さんたちの何倍も何倍も美しいのでした。
 ある日のこと、お城の王子さまが、お嫁さん選びの舞踏会(ぶとうかい)を開くことになり、シンデレラのお姉さんたちにも、招待状が届きました。
 お姉さんたちは、大はしゃぎです。
 シンデレラはお姉さんたちのしたくを手伝い、ニッコリ笑って送り出しました。
 それから悲しくなって、シクシクと泣きだしました。
「わたしも、舞踏会にいきたいわ」
「泣くのはおよし、シンデレラ」
「・・・? だれ?」
 シンデレラの目の前に、妖精(ようせい)が現れました。
「シンデレラ、おまえはいつも、いい子ですね。ごほうびに、舞踏会へ行かせてあげましょう。まず、畑でカボチャを取っておいで」
 妖精が大きなカボチャをくりぬき、つえでたたくと、なんと、金の馬車(ばしゃ)になったではありませんか。
「まあ、立派な馬車。すてき」
「まだまだ、魔法はこれからよ。さてっと、馬車を引くには、馬が必要ね。その馬は、どこにいるのかしら・・・。ああ、ネズミとりには、ハツカネズミが六匹ね」
 妖精は、つえでハツカネズミにさわりました。
 するとみるみるうちに、りっぱな白馬になりました。
 別のネズミとりには、大きな灰色ネズミが一匹いました。
「このネズミは・・・」
 妖精がつえでさわると、今度は、おひげがりっばな、太っちょ御者(ぎょしゃ→馬車を操る人)に早変わり。
「シンデレラ、つぎはトカゲを六匹集めておくれ」
「はい」
 シンデレラの集めたトカゲは、お供の人になりました。
「ほらね、馬車に、白馬に、御者に、お供。さあシンデレラ。これで、舞踏会に行くしたくができましたよ」
「うれしい。ありがとう。・・・でも、こんなドレスじゃ」
「うん? そうね、忘れていたわ」
 妖精がつえを一ふりすると、みすぼらしい服は、たちまちかがやくような美しいドレスに変わりました。
 そして、小さくてすてきな、ガラスのクツもくれました。
「楽しんでおいで、シンデレラ。でも、わたしの魔法は十二時までしか続かないの。決してそれを忘れないでね」
「はい、行ってきます」
 さて、お城の大広間にシンデレラが現れると、そのあまりの美しさに、あたりはシーンとしずまりました。
 それに気づいた王子が、シンデレラの前に進み出ました。
「ぼくと、おどっていただけませんか?」
 シンデレラは、ダンスがとても上手でした。
 王子はひとときも、シンデレラの手をはなしません。
 楽しい時間は、あっというまにすぎて、ハッと気がつくと、十二時十五分前です。
「あっ、いけない。・・・おやすみなさい、王子さま」
 シンデレラはていねいにおじぎをすると、急いで出ていきました。
 ですが、あわてたひょうしに階段にひっかかって、ガラスのクツがぬげてしまいました。
 でも、取りに戻る時間がありません。
 シンデレラは待っていた馬車に乗って、急いで家へ帰りました。
 シンデレラが帰った後も、王子は美しいシンデレラを忘れることができません。
「ぼくは、このガラスのクツの持ち主と結婚する」
 そこでお城の使いが国じゅうを駆け回り、手がかりのガラスのクツが、足にぴったりあう女の人をさがしました。
 使いは、シンデレラの家にもやってきました。
「足が入れば、王子さまのお嫁さんよ」
 二人のお姉さんたちは、足をギュウ、ギュウと、押しこみましたが、どうしても入りません。
「わたしもはいてみて、いいでしょうか?」
 シンデレラがたずねると、お姉さんたちは大笑いしました。
「なにをバカなことをいっているの。あたしたちにも入らないのに、あんたなんかに、・・・あっ!」


シンデレラとガラスのクツ


 シンデレラがはいてみると、クツはピッタリです。
 みんなは驚きのあまり、口もきけません。
「あらあら、わたしの出番ね」
 そこへ、あの時の妖精が現れました。
 妖精がつえを一ふりすると、シンデレラはまぶしいほど美しいお姫さまになっていました。
 お母さんとお姉さんたちは、ヘナヘナと、腰をぬかしてしまいました。
 それからシンデレラは王子と結婚して、いつまでもしあわせに暮らしました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → エッフェル塔の日
きょうの誕生花 → はまかんざし(アルメリア)
きょうの誕生日 → 1970年 宮迫博之 (芸人)


きょうの新作昔話 → カイコの犬
きょうの日本昔話 → 百七十歳の九尾キツネ
きょうの世界昔話 → シンデレラ
きょうの日本民話 → 花散る下の墓
きょうのイソップ童話 → アリとキリギリス
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3月30日の世界昔話 家の精

2010-03-30 08:03:17 | Weblog

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3月30日の世界昔話



家の精



家の精


 むかしむかし、とても食いしん坊のお金持ちの主人がいました。
 主人は毎日おいしいものを食べたくて、腕のいい料理人を一人やとっています。
 料理人はいつも、お屋敷の広い台所で楽しく、主人のために料理を作っていました。
 食いしん坊の主人は、朝食も昼食も夕食も、おいしいものばかりで大満足です。
 ある日の事、料理人が夕食のスープを作っていると、かまどの中から首に袋をさげた、小さな家の精(せい)が出て来ました。
 家の精は、料理人を見上げて言いました。
「あの、この袋一杯のスープがほしいんだけど」
 料理人は、小さな家の精の袋一杯なら、お玉ひとすくいだと思って、お玉でスープをすくい、袋にいれようとしました。
 すると家の精は、小さいくせにスープのナベをヒョイと持ちあげると、ゴクゴクゴクと、ナベいっぱいのスープを全部飲みほしてしまったのです。
 そして家の精は、かまどの中に飛び込んで、あっという間に消えてしまいました。
 料理人は、困ってしまいました。
 それは、またスープを作っていたら、ムニエルやゆでた野菜のサラダを作る時間がなくなってしまうからです。
 料理人は仕方がないので、主人に家の精の事を話して、スープ抜きの夕食をならべました。
 ところが、食いしん坊の主人はカンカンです。
「今度その家の精が出てきたら、ぶんなぐってしまえ!」
 でも料理人は、次の日に家の精が出て来たときにも、やはりスープを飲みほさせてしまったのです。
 こんな小さな家の精をなぐるくらいなら、主人に自分がしかられた方がいいと思ったのです。
 それで次の日も、スープ抜きの夕食をならべました。
 主人は、テーブルをたたいて怒りました。
「今度私のスープをぬすむ家の精が出て来たら、火の中に入れて焼いてしまえ! でないと、お前はクビだぞ!」
 次の日も、家の精は袋をさげて、かまどの中からやって来ました。
「この袋一杯のスープがほしいんだけど」
「でも、だんなさまにしかられるんだよ。本当に、袋一杯分ならわけてあげられるんだけど」
 申しわけなさそうに料理人が言うと、家の精は、泣き出しそうな顔でいいました。
「実は、うちの子供が病気なのです。子供にスープを持って行きたいのです」
「そうか。それは大変だなあ。それなら、いるだけ持って行っていいよ」
 料理人が答えると、家の精はスープのナベを持ちあげて、グイグイとスープを飲みほしてしまいました。
 食いしん坊の主人はその話を聞くと、やさしい料理人の首をつかんで、屋敷の外へほうり出してしまいました。
「お前は、クビだ!」
 お屋敷には、すぐに新しい料理人がやとわれました。
 食いしん坊の主人は、
「家の精が現れても、絶対に何もあげてはいかん。なぐってしまえ!」
と、きびしく言いました。
 新しい料理人のスープが出来あがったころ、かまどから家の精が袋をさげて出て来ました。
「この袋一杯のスープがほしいんだけど」
 新しい料理人は、主人の言っていた家の精だとわかると、思いっきりポカポカとなぐりました。
 家の精は大ケガをして、泣きながら、やさしかった前の料理人を探しに行きました。
 そして、森でションボリとすわっている料理人を見つけると、
「やさしいあんたに、おわびとお礼をしたいんだ。今夜屋敷のあかりが消えたら、屋敷の庭に来ておくれ」
 そう言うと、家の精はスーッと消えてしまいました。
 夜、料理人は家の精に、屋敷に入れてもらってビックリ。
 台所のかまどの中には、下へおりる階段があるのです。
 その階段をおりたところには、宝石をちりばめた柱があり、その床は大理石(だいりせき)で出来ていました。
 家の精は小さな箱を持ってきて、料理人に渡しました。
「この箱は願いのかなう箱だよ。ふたを開けてあんたの願いをいってごらん。きっと、かなえてくれるから」
 やさしい料理人は、ふたを開けて、
「おいしい料理の作れる大ナベと、どんなにかたい物でも切れる包丁(ほうちょう)を出してください」
と、頼んでみました。
 そのとたん、目の前にりっぱな大ナベと、キラリと光る包丁が現れたのです。
「ありがとう。これからも、ますますおいしい料理を作って人に喜んでもらえそうだ」
「よかったね。それからその箱は見事な台所も出せるよ。もちろん、宝石もお屋敷も、あんたの願いなら何でもかなうよ」
 やさしい料理人は、家の精に何度もお礼を言って、魔法の小箱を持って屋敷を出て行きました。
 その様子を、こっそり新しい料理人が見ていました。
 朝になると、新しい料理人は家の精をつかまえていいました。
「やい! 今すぐ魔法の小箱を出せ! 出さないと、首をちょん切るぞ!」
 家の精は小箱を出して、新しい料理人に渡しました。
 新しい料理人は主人の部屋へかけて行くと、とくい顔で言いました。
「だんなさま、世界一おいしく、美しいお料理をごちそういたしましょう」
 それを聞いた食いしん坊の主人は、ゴクリとつばを飲み込みました。
「よし、それが本当なら、給料を二倍にしてやろう」
 新しい料理人は、さっそく小箱のふたを開けて、大声で言いました。
「世界一おいしく、美しい料理よ、出ろ!」
 ところが小箱から飛び出してきたのは、棒を持った百人の家の精たちです。
「お前たちだな。悪い料理人と主人は」
 百人の家の精たちは、新しい料理人と食いしん坊の主人をポカポカとなぐり、こぶだらけにしてしまいました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → マフィアの日
きょうの誕生花 → カルセオラリア(きんちゃくそう)
きょうの誕生日 → 1966年 村上里佳子(タレント)



きょうの日本昔話 → サルの恩返し
きょうの世界昔話 → 家の精
きょうの日本民話 → オオカミばあさん
きょうのイソップ童話 → ヘビとカニ
きょうの江戸小話 → ふだん用のネコ


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3月29日の世界の昔話 ネズミとゾウ

2010-03-29 03:12:51 | Weblog

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3月29日の世界の昔話



ネズミとゾウ



ネズミとゾウ
トルコの昔話 → トルコの国情報


 むかしむかし、あるところに、一匹のネズミがいました。
 そのネズミは、カガミを持っていました。
 それもふつうのカガミではなくて、魔法のカガミです。
 そのカガミをのぞくと、だれでも自分が大きくえらく見えるのです。
 毎日、そのカガミをのぞいているうちに、ネズミは自分ほど大きくてえらいものは、どこをさがしてもいないような気がしてきました。
 そして、なかまのネズミたちをバカにして、話もしなくなりました。
 それを見て、世の中のことをよく知っている、年とったおばあさんのネズミがいいました。
「ぼうや。このごろおまえはたいそういばっているそうだが、気をおつけ。ゾウが知ったらとんでもないことになるよ」
「そのゾウってやつは、なんなのさ?」
「ゾウというのは、世界で一番大きな生きものでね。どんなにつよいものでもかなわないんだよ」
「うそだ! おれさまよりつよいものがいてたまるか!」
 こうさけぶと、ネズミはゾウをさがしにでかけました。
 野原でネズミは、みどりのトカゲにであいました。
「おい。ゾウっていうのは、おまえかい?」
「いいえ。わたしはトカゲよ」
「そうか。ゾウでなくてよかったな。ゾウだったらふみつぶしてやるところだった」
 小さなネズミのいばりかたがあんまりおかしかったので、トカゲは思わずふきだしました。
 ネズミはおこって、足をふみならしました。
 するとちょうどそのとき、ズシンズシンと地ひびきがしました。
 みどりのトカゲはおどろいて、石のかげにかくれました。
 ネズミが足をふみならしたために、おそろしい地ひびきがおこったのだと思ったのです。
「ぼくは、なんてえらいんだろう」
 ネズミはとくいになって、また先ヘいきました。
 しばらくいくと、カブトムシにであいました。
「おい。ゾウというのはおまえかい?」
「とんでもない。ぼくはカブトムシさ」
「ゾウでなくてよかったな。ゾウだったらふみつぶしてやるところだった」
 それを聞いて、カブトムシはクスッと笑いました。
 ネズミはおこって、足をふみならしました。
 けれども地面は、ピクリともしません。
 ネズミはもう一回、やってみました。
 やっぱり、なんのひびきもおこりませんでした。
(きっと、地面がしめっているせいだな)
と、思いながら、ネズミは先ヘいきました。
 すこし先で、ネズミはふしぎな生きものにあいました。
 その生きものは、木のそばにジッとすわっていました。
(こいつこそ、ゾウらしいぞ。きっとこのおれさまを見て、こわがっているんだな)
と、ネズミは思って、いばって聞きました。
「おい。おまえはゾウか?」
 それを聞いた生きものは、ニヤリとわらってこたえました。
「ちがうよ。わたしは世界で一番えらいもののなかよしだ。わたしはイヌだよ」
「世界で一番えらいものだと。それはなんだ?」
「人間さ」
「へえ。とにかくゾウでなくてしあわせだったぞ。ゾウだったら、たちまちふみつぶしてやるところだ。世界で一番つよいのは、このおれさまなんだからな」
 イヌはネズミを、からかってやりたくなりました。
「たしかにそうかもしれないね、ネズミくん。人間だって、きみたちにたべさせるために、コメやムギをつくっているんだもの」
「まあな」
 ネズミは先をいそいで、森のおくヘやってきました。
 そこでネズミは、山のように大きなものにぶつかりました。
 足は木のみきのようにふとくて、おまけに、からだの前のほうにも、ながいしっぽがぶらさがっています。
「おまえは、ゾウかい?」
 いばりんぼうのネズミは、力いっぱい声をはりあげました。
 ゾウはあたりを見まわしましたが、ネズミがあんまり小さいので目にはいりません。
 ネズミは、大きな石によじのぼりました。
 ゾウはやっと気がついて、こたえました。
「そうだ。わしはゾウだよ」
「おまえは、けしからんやつだ。おれさまをおどかすとは」
 ネズミはふんぞりかえって、さけびました。
 けれどもゾウはおこりもせず、そばの水たまりに鼻をつっこんで、うぬぼれネズミに、プーッと水をふきかけました。
「ワッー!」
 ネズミはひとたまりもなくふきとばされて、もうすこしでおぼれそうになりました。
 ネズミはやっとのことで、家に帰りつきました。
 ネズミはこんどの旅で、世の中には自分よりもずっとずっとつよいものがいることを思い知りました。
 それからというものネズミは、二度とほかのものをバカにしたり、いばったりしなくなりました。
 ついでに、魔法のカガミをのぞくこともやめたということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → マリモの日
きょうの誕生花 → アリッサム
きょうの誕生日 → 1982年 滝沢秀明 (タレント)


きょうの新作昔話 → 宝の隠し場所
きょうの日本昔話 → 忍術使いのどうぼう
きょうの世界昔話 → ネズミとゾウ
きょうの日本民話 → 大工の神さまと天人
きょうのイソップ童話 → ヒツジ飼いとオオカミの子
きょうの江戸小話 → 手品の種


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3月28日の世界の昔話 バイオリンひきのおじいさん

2010-03-28 07:28:22 | Weblog

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3月28日の世界の昔話


バイオリンひきのおじいさん



バイオリンひきのおじいさん

オーストリアの昔話オーストリアの情報


 むかしむかし、あるところに、まずしいバイオリンひきのおじいさんがいました。
 あるさむい冬の日、おじいさんはバイオリンをひきながら町へやってきました。
 でも、おじいさんのバイオリンを聞いてくれる人は、誰一人いません。
 若いとき、このおじいさんはこの町の人気者でした。
 バイオリンをひきながら美しい声で歌を歌うと、たちまち人が集まってきて、たくさんのお金をなげてくれたものです。
 おじいさんはペコペコのお腹をかかえながら、町はずれの小さな教会へ行きました。
 おじいさんは中へ入ると、マリアさまに言いました。
「マリアさま、もうわたしのバイオリンを聞いてくれる人はいません。せめてマリアさまだけでも聞いてください」
 おじいさんはバイオリンをひき、歌を歌いました。
 むかしと少しも変わらない美しい声が、教会の中にひびきました。
 すると、ポトリと、マリアさまの金のくつが片一方、おじいさんの前に落ちてきました。
「ああ、なんとおやさしいマリアさま」
 おじいさんは涙を流して喜び、そのくつを近くの店へ売りに行きました。
 ところが店の人は、ボロボロの服をきたおじいさんを見て、このくつは盗んだものにちがいないと思いました。
 そこですぐに、おじいさんを役人のところへ連れていきました。
 いくらおじいさんが、
「これは、マリアさまからもらった物です」
と、言っても、役人は聞き入れてくれません。
「教会の物を盗むなんて、とんでもない」
 役人はそう言って、おじいさんを死刑にするよう命令しました。
 次の日、おじいさんは町はずれの広場へひかれていきました。
 小さな教会の前に来たとき、おじいさんが言いました。
「最後のお願いです。もう一度だけ、マリアさまの前でバイオリンをひかせてください」
「いいだろう」
 おじいさんはマリアさまの前に行くと、ゆっくりとバイオリンをひきはじめました。
 美しい音が、教会に流れました。
 それに合わせて、おじいさんは心をこめて歌を歌いました。
「ああ、なんてきれいな声だろう」
 町の人たちは、うっとりと耳をかたむけました。
 すると、そのときです。
 マリアさまの足が動いたかと思うと、残っていたもう一方の金のくつが、ポトリと、おじいさんの前に落ちたのです。
「あっ!」
 みんなは、いっせいにマリアさまを見上げました。
 マリアさまは、いつもとかわらないやさしい顔で立っていました。
 やがて町の人たちは、おじいさんのバイオリンに合わせて、マリアさまの歌を歌いました。
 こうしておじいさんは死刑にならず、町の人たちからとても親切にされたそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → シルクロードの日
きょうの誕生花 → たつたそう
きょうの誕生日 → 1975年 神田うの (タレント)



きょうの日本昔話 → 大工と鬼六
きょうの世界昔話 → バイオリンひきのおじいさん
きょうの日本民話 → 月見草の嫁
きょうのイソップ童話 → オオカミと仲なおりしたイヌ
きょうの江戸小話 → ちっとも変わらん


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3月27日の世界の昔話 魔法の笛

2010-03-27 06:54:17 | Weblog

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3月27日の世界の昔話


魔法の笛



魔法の笛
ブルガリアの昔話ブルガリアの情報


 むかしむかし、たくさんのヤギを飼っているおじいさんがいました。
 おじいさんはヤギの世話をさせるために、一人の男の子をやといました。
 その子は、不思議な魔法の笛(ふえ)を持っていました。
 男の子がその笛をふきはじめると、みんなおどりだして、倒れるまでおどりつづけるというのです。
 さて、おじいさんは男の子に、ヤギを森へ連れていかせました。
「笛なんかふいていないで、しっかりヤギに食べさせるんだぞ」
 おじいさんはそういって、男の子を送りだしました。
 日がくれると、男の子はヤギをおって帰ってきました。
 むかえに出たおじいさんは、ビックリしていいました。
「どうしたんだ。見ろ、ヤギたちはヘトヘトになっている。いったい何を食べさせたんだ?」
「はい。おいしい若木の枝を、たっぷり食べさせましたよ」
と、男の子は答えました。
 次の日も、その次の日も同じで、ヤギはますますやせていきました。
 おじいさんは、もう心配でなりません。
 そこである日、こっそりと男の子のあとをつけていきました。
 そしてやぶのかげにかくれてのぞいていると、男の子は若木の枝をたくさん切って、ヤギたちにやりました。
 ヤギたちはおいしそうに音をたてて、若木の枝を食べ始めました。
 すると男の子は、木のきりかぶに腰をかけて、笛をとりだしました。
 笛の音がひびいてくると、ヤギたちは食べていた若木の枝をほうりだしておどりはじめました。
 やぶのかげにかくれていたおじいさんのところにも、笛の音が聞こえてきました。
 おじいさんも、がまんができなくなりました。
 手をふり、足をあげて、おどりだしました。
 ノバラのトゲにひっかかって、たちまち着物がボロボロになりました。
 おじいさんは、泣きながらいいました。
「やめてくれ、やめてくれ」
「やめたくても、笛がだまってくれません」
と、男の子はいいました。
 おじいさんもヤギも、おどりつづけました。
 家では、おばあさんがおじいさんの帰りを待っていました。
 おばあさんは、とうとう待ちきれなくなって、
「ちょっと、見に行ってこようかね」
と、いって、森へ出かけていきました。
 見ると男の子が笛をふき、ヤギもおじいさんもおどっています。
「まあ、あんなところでおどりをおどったりして!」
と、おばあさんはさけびました。
 笛の音は、いっそう高くひびきました。
 やがておばあさんも、手をふり、足をあげて、おどりだしました。
 待っても待っても、おじいさんとおばあさんは帰ってきません。
 今度は、息子が見にいきました。
 男の子が笛をふいて、ヤギがとびはね、おじいさんもおばあさんもおどっています。
 息子は大声で、
「あんなところで、おどりをおどっている!」
と、さけびました。
 けれども笛の音は、もっともっと高くひびきました。
 息子もがまんができなくなって、おどりだしました。
 おじいさんも、おばあさんも、息子も、帰ってきません。
 今度は、お嫁さんが見にいきました。
 そして、お嫁さんもおどりだしました。
 家では、おじいさんのまごたちが、みんなの帰りを待っていました。
 けれども、おじいさんも、おばあさんも、お父さんも、お母さんも、帰ってきません。
 とうとう子どもたちは、森へ行ってみることにしました。
 見ると男の子が笛をふいて、そのまわりをヤギも、おじいさんも、おばあさんも、お父さんも、お母さんも、おどっています。
「やあ、楽しそうだ。ぼくたちもおどろうよ」
 おじいさんのまごも、おどりの輪の中にとびこみました。
 やがて日がくれると、みんなはおどりながら村へ帰りました。
 男の子の笛の音が、村中にひびきました。
 それを聞いた村の人たちの手足も、ひとりでに動きだしました。
 とうとう村中が、大きな輪になっておどりだしました。
 人間も、ウシも、ウマも、ネコも、ニワトリも。朝から晩までおどりつづけました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → さくら(桜)の日
きょうの誕生花 → しょうじょうばかま
きょうの誕生日 → 1970年 マライア・キャリー (歌手)



きょうの日本昔話 → 金のナスビ
きょうの世界昔話 → 魔法の笛
きょうの日本民話 → 早業競べ
きょうのイソップ童話 → ロバとキツネとライオン
きょうの江戸小話 → 食わず逃げ


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