きょうの世界昔話 gooブログ編

アンデルセン童話やグリム童話など、世界の昔話をイラストと朗読付きで毎日配信。

6月30日の世界の昔話 バラ色の泉の水

2008-06-30 05:01:17 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月30日の世界の昔話

バラ色の泉の水

バラ色の泉の水
フランスの昔話 → フランスの国情報

 むかしむかし、コルシカ島(→イタリア半島の西方にあるフランス領の島で、ナポレオンの出生地として有名)に、王さまのようなくらしをしている父親と三人の息子がいました。
 りっぱなお城に住み、大変なお金持ちで、めしつかいもたくさんいました。
 三人の息子は元気がよく、父親思いでしたので、お城はいつも笑い声がたえず、島の人たちはみんなとてもうらやましがっていました。
 けれどもある日のこと、突然、父親が目を悪くして、何も見えなくなってしまったのです。
 息子たちはあわてて島中のお医者さまをよんで見てもらいましたが、どのお医者さまにも原因がわからず、なおすことができません。
 そこで、島で一番えらいと言われている博士(はかせ)をよびました。
 博士は父親の目を見て、しずかに言いました。
「バラ色の泉の水があれば、すぐになおります」
 息子たちはすぐにお城を出て、バラ色の泉を探す旅に出ました。
 三人はやがて、三本に分かれている道につきました。
 一番上の兄さんは、一番広い道を進んで行きました。
 すると、とちゅうに子どもをつれた、まずしいみなりの女の人が立っていて、声をかけてきたのです。
「どこへ行くのですか?」
 一番上の兄さんは、女の人の姿を一目見ると、
「お前になんぞに、答える必要はない」
と、いい、先へ進んで行きました。
 広い道は、バラ色の泉に続いていました。
 一番上の兄さんは、おどりあがって喜びました。
 そして、ビンにバラ色の泉の水をくもうとしたそのとき、大きなヘビとライオンが草むらから飛び出してきて、一番上の兄さんを食べてしまったのです。
 二番目の兄さんは、細い道を行きました。
 途中でやっぱり、子どもを連れた女の人に声をかけられましたが、二番目の兄さんは返事もせずに通りすぎました。
 細い道も、バラ色の泉に続いていました。
 ですが泉についたとたん、二番目の兄さんも大きなヘビとライオンに食べられてしまいました。
 三番目の息子は、グネグネとまがりくねった道を歩いて行きました。
 この道にも、子どもを連れた女の人が立っていて、声をかけてきました。
「どこへ行くんですか?」
 三番目の息子は立ちどまって、女の人に話しました。
「はい、目を悪くした父のために、バラ色の泉を探しています。バラ色の泉の水を目につけるとなおるそうなのです」
 女の人は、ほほえんでうなずきました。
 そして、ロウを三番目の息子の手ににぎらせて、やさしく言ったのです。
「気をつけてお行きなさい。バラ色の泉についたら、いろいろな化物があなたをおそうでしょう。でもそのときには、このロウを少しずつちぎって投げるのです。きっとあなたは助かりますから。それから、目をなおすだけなら、バラ色の泉の水を、ほんの一滴つけてあげれば良いでしょう。バラ色の泉の水は、一滴でも死んだ人を生き返らせるくらい力のある生命の水なのですよ」
「よくわかりました。ありがとうございます」
 三番目の息子はていねいにお礼を言って、まがりくねった道をいそぎました。
 まがりくねった道も、バラ色の泉に続いていました。
 三番目の息子は喜び、さっそくビンに水をいれました。
 けれど、ビンにふたをしてふりむいたそのとき、大きなヘビやライオン、ツノのある化物、悪魔(あくま)などが次々とおそいかかってきたのです。
 三番目の息子はポケットからロウを取り出し、ちぎっては化物に投げつけました。
 化物はロウにさわったとたん、
「フギャーー!」
と、さけんで消えてしまったのです。
 三番目の息子は、こうしてバラ色の泉の水のはいったビンをかかえてお城にもどりました。
「おとうさま、ただいま」
 三番目の息子が父親の寝室(しんしつ)にはいると、ベッドのまわりに集まっていためしつかいたちが、わあっと泣き出しました。
 父親は息子たちの帰りを待ちながら、たった今、死んでしまったのです。
 三番目の息子は父親のそばへ行き、バラ色の泉の水をビンから一滴、手の平にとると、そっと父親の目につけてやりました。
「う、・・・ううーん」
 死んだはずの父親が、小さな声を出して、ゆっくりと起きあがったのです。
「ご主人さまが生き返った!」
 めしつかいたちのかなしみの涙は、たちまち喜びの涙になりました。
 三番目の息子は、父親にこれまでのことを話しました。
 目が見えるようになった父親は、まぶしそうに三番目の息子を見つめて、うなずきながら言いました。
「ありがとう。ビンに残ったバラ色の泉の水で、島の人たちを助けてあげなさい」
 三番目の息子は、それから島の人がどんなにひどい病気にかかっても、このバラ色の泉の水で助けてあげました。
 しかし、三番目の息子がおじいさんになり、重い病気になったときには、もう、バラ色の泉の水は残っていませんでした。
 でも、三番目の息子は、
「とても幸せな一生だった」
と、しずかに言うと、天国へ旅だったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みその日
きょうの誕生花 → びようやなぎ(ヒペリカム)
きょうの誕生日 → 1975年 ラルフ・シューマッハー(F1レーサー)

きょうの新作昔話 → ドロボウの名人
きょうの日本昔話 → 野ギツネ
きょうの世界昔話 → バラ色の泉の水
きょうの日本民話 → ものを言うネコ
きょうのイソップ童話 → 人間とセミ
きょうの江戸小話 → ちかづきのしるし

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6月29日の世界の昔話 白いウマ

2008-06-29 06:05:38 | Weblog

福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 6月の世界昔話

6月29日の世界の昔話

白いウマ

白いウマ
ハンガリーの昔話 → ハンガリーの国情報

 むかしむかし、あるところに、たいへん貧乏(びんぼう)な人がすんでいました。
 もっているものといえば、たった一頭の白いウマだけです。
 毎日、そのウマを粉ひき小屋ではたらかせて、やっと、くらしをたてていました。
 白いウマは、くる日もくる日も、おもい臼(うす)をまわして、粉をひきつづけました。
 ウマはおとなしく、せっせとはたらきつづけましたが、そのうちに、しごとがいやになりました。
 それというのも、よその家ではたらいているウマは、みんな二頭でくみになって臼をひいているのに、じぶんだけはいつも一人ではたらいているのです。
 ある日、白いウマは主人にききました。
「ご主人さま。わけをおきかせください。よそのうちのウマはみんな二頭づれなのに、どうしてわたしにはなかまがいないのですか。わたしはもう、ヘトヘトにつかれてしまいました」
 すると、主人はこたえました。
「そのわけはかんたんだ。わしが貧乏で、おまえのほかにはウマどころか、イヌ一ぴき、いや、ムシ一ぴきもっていないからだよ」
 すると、白いウマはいいました。
「それでは、しばらくわたしにひまをくださいませんか。じぶんで仲間をみつけてまいります」
 こうして白いウマは、仲間をさがす旅にでました。
 なん日もかかって歩いていくと、キツネの穴がありました。
 白いウマは、いいことを思いつきました、
(そうだ。この穴の入り口にねころんで、死んだふりをしてみよう)
 その穴には、母ギツネが三びきの子ギツネとすんでいました。
 いちばん小さい子ギツネが外へ出ようとしたら、なにか白いものが入り口をふさいでいます。
 子ギツネは、それを雪がふっているのだと思いこんで、母ギツネのところへしらせにいきました。
「たいへんだよ、お母さん。外に出られなくなってしまったよ。大雪がふっているんだ」
「大雪ですって! いまは夏じゃないの」
 母ギツネは、ビックリしました。
 そこで、まん中の子ギツネをよんでいいました。
「おまえ、見にいってごらん。おまえはにいさんなんだから、どういうことなのか、よくしらべてくるのですよ」
 まん中の子ギツネが、見にいきました。
 弟のいうとおり、入り口は白い大きなものでふさがっていました。
 まん中の子ギツネは、母ギツネのところへかえっていいました。
「お母さん、ほんとに出られないよ。やっぱり大雪がふっていた」
「そんなことがありますか。夏だっていうのに!」
 母ギツネは、いちばん上の子ギツネにいいつけました。
「こんどは、おまえがいっておいで。おまえは一番年上なんだし、弟たちより世の中を知っているんだから、まちがいのないようによくしらべてくるのですよ」
 一番上の子ギツネが見にいきました。
 けれどもこたえは、やっぱりおなじでした。
「お母さん。やっぱり雪がふっているんだよ。白いものしか見えないもの」
「ほんとうに、おまえたちはしょうがない。まっておいで。お母さんが見てくるから」
 母ギツネは、穴の入り口へいってみました。
 入り口はまっ白でしたが、その白くて大きなものが大雪ではなくて白いウマだということが、母ギツネにはすぐにわかりました。
 なんとかしてウマをどけなくては、じゃまでこまります。
 母ギツネは、子ギツネたちをよびました。
「おまえたち、みんな出ておいで。さあ、てつだっておくれ」
 それから親子四ひきがかりで、力いっぱいおしたりひっぱったりしましたが、白いウマをどうしてもうごかすことができません。
 母ギツネはしばらくかんがえていましたが、いいことを思いつきました。
 そこで母ギツネは家のうら口から抜け出すと、オオカミのところへでかけていきました。
「オオカミさん、オオカミさん。すばらしいえものを手にいれましたよ。うちの穴までひっぱってきたんですけど、あんまり大きすぎて、中に入りませんの。どうでしょう。おたくの穴までいっしょにひっぱってきませんか。そうしてごちそうを、なかよく半分にわけましょう」
 オオカミは、思いがけないごちそうにありつけるときいて、たいそう喜びました。
 そして、そっと心の中でかんがえました。
(おれの穴にはこびこんだら、もうこっちのものだ。キツネになんかわけてやるものか)
 白いウマはあいかわらず死んだふりをして、たおれていました。
 大きな白いウマを見て、オオカミはすっかりかんがえこみました。
「キツネさん。いったいどうやったら、こいつをわたしの穴まではこべるだろう?」
 母ギツネは、こたえました。
「なんでもありませんわ。わたしはウマのしっぽとじぶんのしっぽをむすびあわせて、ひっぱってきたのですよ。そりゃ、らくなものでしたわ。こんどは、あなたにひっぱっていただきましょう。しっぽをむすびますからね。わけなくはこべてしまいますよ」
「そりゃ、うまいやりかただ。さあ、むすんでくれ」
 早くごちそうにありつきたくて、オオカミはウズウズしながらキツネにいいました。
 キツネはオオカミのしっぽを白いウマのしっぽに、それはそれはきつくむすびあわせました。
「さあ、オオカミさん。ひっぱってごらんなさい」
 力いっぱい、オオカミはひっぱりました。
 でも、ウマはびくともしません。
 しっぽがちぎれそうになるほどひっぱりましたが、それでもうごきません。
 オオカミは、ありったけの力をこめてひっぱろうとしました。
 そのとき、白いウマはいきなりはねおきて、そしてものすごいいきおいで走りだしました。
 白いウマは、しっぽのさきにオオカミをひきずったまま、ただのひとやすみもせず、走って走って走りつづけて、貧乏な主人のところへかえりつきました。
「ご主人さま、ごらんください。このとおり仲間をつれてまいりました」
 喜んだ主人は、すぐにオオカミを鉄砲(てっぽう)でうちころしました。
 そしてオオカミの皮を売って、たくさんのお金をもうけました。
 そのお金で、もう一頭のウマを買いました。
 こうして白いウマは、もう一人で重い臼をまわさなくてもよくなったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 星の王子様の日
きょうの誕生花 → あじさい
きょうの誕生日 → 1959年 引田天功(2代目・奇術師)

きょうの新作昔話 → 縁起かつぎ
きょうの日本昔話 → かじかびょうぶ
きょうの世界昔話 → 白いウマ
きょうの日本民話 → コウノトリの恩がえし
きょうのイソップ童話 → シカとブドウの木
きょうの江戸小話 → いれ目

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6月28日の世界の昔話 ビンの中のお化け

2008-06-28 05:53:44 | Weblog

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6月28日の世界の昔話

ビンの中のお化け

ビンの中のお化け
イギリスの昔話 → イギリスの国情報

 むかしむかし、ある町に、どこか暗い感じのする古い大きな家がありました。
 その家には、人間はだれもすんでいません。
 でも、お化けが一人、すんでいたのです。
「だれか、お化けを退治してくれる者はいないかね。お礼に、お金はうんとはずむのだが」
と、家主は、家のまえにはり紙をしたり、たのんだりしました。
 けれど、どんな力じまんも、本当にお化けを見ると体の力がぬけて、青い顔をしてにげてしまうのです。
 さて、この町にトミーという、かしこくて勇気のある若者がすんでいました。
 家主はトミーのうわさを聞いて、たのみにいきました。
「トミーさん、あなたのちえで、あの家のお化けをやっつけてください」
「いいですとも」
 トミーは、あっさりとひきうけました。
 あまりにもあっさりとひきうけたので、家主は心配になりました。
「本当に、だいじょうぶですか?」
「ええ、そのかわり、お酒とコップとあきビンを用意してください」
 その晩トミーは、お酒をチビチビ飲みながら、お化けの出るのをまちました。
 家の中はまっ暗で、月あかりがほんの少しあるだけです。
 カーン、カーン。
 時計が、十二時をうちました。
 するとどこからか、ヒューッと不気味な音がして、鼻のないまっ白の顔のおそろしいお化けがあらわれたのです。
「やあ、こんばんは」
と、トミーはいいました。
 するとお化けは、
「へんだな? たいていのやつはおれを見ると、あわててにげていってしまうのに」
「へんなのはきみじゃないか。この家は、まどもとびらもぜんぶカギがかけてあるんだぜ。それなのにどこから入ったんだい?」
「ウヒヒ、教えてやろうか?」
 お化けは、気味の悪い顔でわらいました。
「うん。そしたらお酒を飲ませてやるよ」
「ほんとうに、こわくないのかい?」
「ちっとも」
「本当かい? うれしいな。じつはおれは、カギあなから入ってきたんだよ」
「カギ穴だって? まさか、いくらお化けだって、あんなに小さなところから入ってこられるわけないじゃないか」
 トミーがわらうと、お化けはくやしそうにいいました。
「うそじゃない。本当だ!」
「ぜったいだね?」
「ぜったいだ!」
「じゃあ、この小さいビンの中にも入れるかい?」
 トミーは、テーブルの上のあきビンをさしていいました。
「入れるとも!」
「本当かな? お化けはうそつきだっていうからな」
「じゃあ、見ていろ!」
 するとお化けは、シュルシュルと小さくなると、ビンの中に入ってしまいました。
「いまだ!」
 トミーは急いでビンのフタをしめると、遠くヘほうりなげてしまいました。
 それっきりこの家には、お化けは出なくなりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ニワトリの日
きょうの誕生花 → ざくろ
きょうの誕生日 → 1971年 藤原紀香(女優)

きょうの新作昔話 → シカとオオカミとヒツジ
きょうの日本昔話 → イモころがし
きょうの世界昔話 → ビンの中のお化け
きょうの日本民話 → お花とごんべえ
きょうのイソップ童話 → 漁師とマグロ
きょうの江戸小話 → 急病

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6月27日の世界の昔話 世界のはじまり

2008-06-27 06:02:36 | Weblog

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6月27日の世界の昔話

世界のはじまり

世界のはじまり
チリの昔話 → チリの国情報

 むかしむかし、この世の中には山もなく、海もなく、人間も、鳥も、草も、なかったころのお話です。
 天には、かぞえきれないほどたくさんの神さまが、住んでいました。
 その神さまたちの中に、たった一人、ほかの神さまの何十ばいも、何百ばい、何千ばいも、何万ばいも大きなからだの、大神さまがいました。
 大神さまは、からだが大きいばかりでなく、ほかの神さまの何万ばいも、つよい力をもっていました。
 神さまたちがわるいことをしたり、大神さまのいうことを聞かなかったりすると、大神さまは、なん百人もの神さまをひとつかみにして、やっつけてしまうのです。
 大神さまにかなうものは、一人もいません。
 神さまたちは、いつも大神さまににらみつけられて、働かなくてはならなかったのです。
 そこである日、大神さまが雲(くも)をまくらにして昼寝をしているあいだに、神さまたちが集まって、そうだんをはじめました。
 一人の神さまが、立ちあがって、
「しょくん、われわれは、朝から晩まで大神のいうとおりに働いていなくてはならない。われわれには、ゆっくり遊んでいるひまもない。これでは、きゅうくつでたまらないではないか。どうだ、われわれが力をあわせれば、あの大きな大きな大神をやっつけることもできるだろう。大神さえやっつければ、われわれは、だれからもしかられずに遊んでいられるのだ。さあ、大神をやっつけようではないか」
と、いいました。
「そうだ、そうだ!」
「大神をやっつけよう!」
 おおぜいの神さまが、さんせいしました。
 けれども、中には、
「ぼくはいやだ。はんたいだ」
と、いう神さまもいました。
「おい、どうしてだ? きみは大神におさえつけられているほうがいいのか?」
「そうじゃない。大神さまの大きさと力のつよさを考えてみたまえ。ぼくたちがどんなにおおぜい集まっても、ぜったいにかなわないよ。大神さまは、どんなことだってできるのだから。大神さまとけんかしたら、どんなめにあうかわからないぞ。いまのままが、いちばんいいと思うよ」
 すると、あっちからもこっちからも、
「なるほど、そうだなあ。やっぱり戦うのはむりだ。ぼくはいやだ」
「ぼくもいやだ。このままでいいよ」
と、いう声が聞こえました。
「なんだいくじなし。大神がこわいのか。大神をやっつけよう」
「だめだ。大神さまに手をだすな!」
「やっつけるんだ!」
「おい、やめろ!」
 神さまたちはいつのまにか二つにわかれて、とっくみあいのけんかをはじめました。
 そのさわぎで、とうとう大神さまが、おきてしまいました。
 大神さまは、神さまたちのあらそいをジッと見まもりました。
 そんなこととはすこしも知らずに、神さまたちはむちゅうになって、けんかをつづけました。
 どうやら、「大神をやっつけろ!」と、いう神さまたちのほうがつよいようで、「大神さまに、手をだすな!」と、いっている神さまたちが、負けそうになりました。
 そこで大神さまは、のっそり立ちあがって、ドシン! ドシン! と、足をふみならしました。
 すると雲の下で、カミナリがゴロゴロなり、イナズマがピカピカと光りました。
「しようのない、やつらだな」
と、いいながら大神さまは、
「大神をやっつけろ!」
と、いっていた神さまたちを、ひとまとめにしてつかみました。
「ろくでもないことを考えるやつらは、こうしてくれよう」
と、いって、ペッペッと、つばをはきかけました。
 すると、つかまえられた神さまたちは、大神さまの手の中で、たちまちひとかたまりの石になってしまいました。
 大神さまは、その石を思いきりけとばしました。
 石はビューンと、とんで、空をつきやぶって地上におちました。
 おちた石は、こなごなにとびちって山になりました。
 ところが、山になった石のかけらの中のほうには、まだ生きている神さまがいました。
「おい、たすけてくれ。こんなところにとじこめたりして、まったくひどい大神さまだ!」
と、いって、神さまたちはまっかになっておこりました。
 そのいきおいで、山の中はにえくりかえりました。
 ゴーゴー、うなりをたてて、煙や、灰や、岩をはきだして、火山となりました。
 火山の中で、神さまたちはなおも、
「ああ、きゅうくつだ、きゅうくつだ」
と、わめいてもがきました。
 そのひょうしに、火山からまっ赤な火ばしらがあがり、それといっしょに神さまたちは、火山からふきあげられてしまいました。
 神さまたちは、高く高くまいあがって、空にとどきました。
 大神さまは、すぐに神さまを空にぬいつけて、星にしてしまいました。
 こうなっては、どんなにあばれても、空からはなれることはできません。
 神さまたちは、
「こんなことになるとわかっていたら、大神さまをやっつけようとするんじゃなかった」
と、いって、なみだをポロポロこぼしました。
 そのなみだがたまって、海ができました。
 さからう神さまたちをやっつけた大神さまは、一番下の息子をつかまえて、フッと息をかけました。
 すると、人間の男ができあがりました。
「ほら、地上を見てごらん。おまえはあそこでくらすんだよ」
 大神さまの息子は、ヒラヒラと地上におりていきました。
「一人では、かわいそうですわ」
と、大神さまのおくさんがいいました。
「心配しなくていい。もう一人つくってやるよ」
と、いって、大神さまはそばにいた、よい神さまをつまみあげて、息をふきかけました。
 こうして、女の人ができあがりました。
「おまえは男の人をさがして、二人でなかよくくらすんだよ」
 地上についた女の人は、ゴツゴツした岩だらけの地面を歩いて男の人をさがしました。
「おお、かわいそうに。足のうらが、さぞいたかろう」
 大神さまはこういって、地面に草をはやし、花のじゅうたんをひろげてやりました。
 女の人はたいそう喜んで、花をつむと、空中に花びらをまきちらしました。
 すると花びらは、美しい鳥やチョウや、いろいろなムシになって、女の人のまわりをとびまわりました。
 女の人は、ズンズンと歩いていきました。
 そのうちに、おなかがすいてきました。
「なにか、たべたいわ」
と、いって、女の人が立ちどまると、目のまえの草がグングンとのびて、大きな木になりました。
 木には、おいしそうな実がなっています。
 女の人は、それをとってたべました。
 元気がでると、また旅をつづけました。
 そしてようやく、男の人を見つけました。
 二人はひとめ見ただけで、好きになりました。
 そして手をとりあって、なかよくくらすようになりました。
 しばらくすると、
「あの二人は、どうしたろう」
と、いって、大神さまは天に穴をあけて、そうっと大きな頭をのぞかせました。
 大神さまの頭はキラキラ光って、地上をてらしました。
「まあ、ごらんなさい、あの光を」
と、いって、男の人と女の人は空を見あげました。
 二人はキラキラ光る丸いものに、太陽という名をつけました。
 大神さまのおくさんも、地上のことが知りたくて、たまらなくなりました。
 そこで、大神さまがのぞいていないときに、そっと穴から顔をだして地上を見ました。
「あのやさしい光を、見てごらん」
 男の人と女の人は、空を見あげていいました。
 そのやわらかい光に、月という名をつけました。
 こうして、大神さまのつくった二人の人間は、やがて子どもをうみ、太陽と月に見まもられて、たのしくくらしはじめたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日照権の日
きょうの誕生花 → びわ
きょうの誕生日 → 1980年 優香(タレント)

きょうの新作昔話 → なわ一本で大金持ちに
きょうの日本昔話 → カッパのねんぐ
きょうの世界昔話 → 世界のはじまり
きょうの日本民話 → 身投げ石
きょうのイソップ童話 → 父親と2人の娘
きょうの江戸小話 → 病人がへた

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6月26日の世界の昔話 おやゆび小僧

2008-06-26 05:40:24 | Weblog

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6月26日の世界の昔話

おやゆび小僧

おやゆび小僧
グリム童話 →グリム童話の詳細

 むかしむかし、貧乏(びんぼう)な百姓(ひゃくしょう)がいました。
 ある晩のこと、百姓はおかみさんにいいました。
「わしらみたいに、ひとりも子どもがないのは、さびしいものだね。子どものいるうちじゃ、ワイワイとにぎやかなのに、うちはこんなにもひっそりしているんだもの」
「そうですね」
 おかみさんは、ため息をつきました。
「たったひとりでいいから、そして、いくら小さくっても、たとえ親指ぐらいでもかまわないから、子どもがいればいいのにね」
 そういったとき、どこからか星のついたつえを持った妖精(ようせい)があらわれてきて、二人にいいました。
「そのねがい、かなえてあげましょう」
 するとまもなく、おかみさんのおなかが少し大きくなって、子どもがひとり生まれました。
 とても元気で、かわいい子どもでしたが、ただ、背たけが親指ぐらいしかありません。
 けれど夫婦は妖精に、心から感謝しました。
 そして、その子を『おやゆび小僧』と名づけたのです。
 夫婦は、おいしいものをかかさず食べさせましたが、子どもはすこしも大きくならず、いつまでたっても生まれたときとおなじ大きさです。
 けれども、とてもかしこい子どもでした。
 ある日のこと、百姓が森へ木を切りにいくしたくをして、ふと、ひとりごとをいいました。
「だれか、あとから車をもってきてくれるものがあるといいんだがなあ」
 すると、おやゆび小僧がいいました。
「お父さん、車なら、ぼくがもっていってあげるよ」
 これをきくと、百姓はわらっていいました。
「どうして、そんなことができるんだね? おまえのようなチビじゃ、ウマのたづなもひけやしないよ」
「だいじょうぶだよ。お母さんがウマさえつないでくれれば、ぼくはウマの耳のなかに入って、道をおしえてやるよ」
「じゃ、ひとつやってみるかな」
 時間がくると、お母さんがウマを車につけて、おやゆび小僧をウマの耳に入れました。
 すると小僧は、ウマのいく道をどなりました。
「ほい! そら右だ! そら左だ!」
 すると、まるで名人がたづなをとっているように、ウマはすこしも道をまちがわずに森へむかいました。
 そこへ、よその国の人がふたりでやってきました。
 ひとりがいいました。
「ありゃ、なんだい? 車ひきがウマにどなっている声はきこえるけれど、すがたが見えないぞ」
 すると、もうひとりがいいました。
「こいつは、ただごとじゃないぜ。あの車についていって、どこでとまるか見てやろう」
 車はズンズンと森のなかへ入っていって、木が切りたおされているところへ、ちゃんとつきました。
 おやゆび小僧はお父さんのすがたを見つけると、よびかけました。
「お父さん、どうです。ちょんと車をもってきたよ。さあ、ぼくをおろして」
 お父さんは左の手でウマをおさえ、右の手でウマの耳から息子をだしてやりました。
 それを見ていたふたりの旅人は、あきれてものがいえません。
 そのうち、ひとりの男が、もうひとりの男にいいました。
「おい、あのチビを大きな町につれていって、金をとって見せものにしたらどうだろう。きっともうかるぞ」
「そうだな、あいつを買いに行こう」
 ふたりは、父親のところへいっていいました。
「その小さな人を売ってくれないか。わたしたちのところで、しあわせにしてあげるよ」
「とんでもない。これは、わしのだいじな子だ。世界じゅうの金をくれたって、売ることはできないよ」
 ところがおやゆび小僧は、お父さんの肩の上に立って、耳のなかにささやきました。
「お父さん、ぼくをこの人たちにうってください」
「しかし・・・」
「大丈夫。きっとまた、もどってきますよ」
 そこでお父さんは、大金と引きかえに、おやゆび小僧をふたりの男にわたしました。
「おまえは、どこにすわりたい?」
と、ふたりがたずねました。
「ああ、おじさんのぼうしのふちにのせておくれよ。そこなら、あっちこっち散歩ができるし、けしきも見られるもの。おっこちやしないよ」
 ふたりは、おやゆび小僧のいうとおりにしてやりました。
 こうして歩いていくうちに、夕方になりました。
 すると、小僧がいいました。
「ちょっとおろしておくれよ。ウンチがしたいから」
「いいから上でしな。鳥なんかも、よくその上におとすもんだ」
「だめだよ、そんなぎょうぎのわるいこと。さあ、はやくおろしておくれよ」
 そこで男は、小僧を道ばたの畑の上においてやりました。
 すると小僧は、しばらく土のかたまりのあいだを、あちこちとんだり、はいまわったりしてしましたが、そのうち野ネズミの穴を見つけて、いきなりそのなかにもぐりこんでしまいました。
「ごきげんよう、おじさんたち、ぼくにはかまわないで、うちへおかえんなさい」
 ふたりはかけよって、ネズミの穴にステッキをつっこんでみましたが、おやゆび小僧はドンドンと、おくへ入っていくし、そのうちあたりはくらくなるしで、ふたりの男はプンプンおこりながら帰ってしまいました。
 おやゆび小僧は、ふたりがいってしまうのを見届けると、地面の下からはいだしてきました。
「まっくらな畑を歩くのはあぶないな」
 おやゆび小僧は、カタツムリのカラをみつけました。
「ありがたいぞ。このなかで夜あかしすりゃ、あんしんだ」
 こういって、そのなかにもぐりこみました。
 それからほどなく、小僧がねようとすると、ふたりのドロボウがやってきました。
 そのうちのひとりが、こんなことをいいます。
「あの金持ちの坊さんのところから、金や銀をとってくる方法はないだろうか」
「ぼくがおしえてやろうか?」
と、おやゆび小僧がいいました。
「ありゃ、なんだ? だれかの声がしたぞ」
 ドロボウのひとりが、ビックリしていいました。
 おやゆび小僧は、またいいました。
「ぼくをつれておいでよ。そうしたら、手つだってあげるよ」
「? ・・・いったい、どこにいるんだい?」
「地面をさがして、声のするところに気をつけてごらんよ」
 こういわれて、ドロボウたちは、やっと小僧を見つけました。
「おい、チビすけ、どうやっておれたちの手つだいをするんだ?」
「いいかい、ぼくが坊さんのへやのなかに入りこんで、おじさんたちのほしいものを、もってきてあげるのさ」
「ようし、おまえの手なみをはいけんするとしよう」
 こうして三人は、坊さんの家へやってきました。
 おやゆび小僧は、へやのなかに入り込むと、すぐさま力いっぱいにどなりました。
「ここにあるもの! みんなほしいのかい!」
 ドロボウたちは、ビックリしていいました。
「たのむ、もっと小さな声にしてくれ。うちの人が目をさますじゃないか」
 けれど、おやゆび小僧はドロボウのいうことがわからなかったようなふりをして、またもやどなりました。
「なにがほしいのさ! ここにあるもの! みんなほしいのかい!」
 そのとき、となりのへやでねていた料理番の女が、その声に目を覚ましました。
 ドロボウたちは、すこしにげだしましたが、たちどまると、こう考えました。
(あのチビすけめ、おれたちをからかっているんだ)
 そこでふたりはもどってきて、おやゆび小僧にささやきました。
「なんでもいい。なにかもちだしてきてくれ」
 するとおやゆび小僧は、またしても、だせるだけの大声でどなりました。
「いいよ! なんでもやるよ! 手をなかへつっこんでおくれよ!」
 これをきいた料理番の女は、ベッドからとびだして、ころぶように部屋へ入ってきました。
「まずい、にげろ!」
 ドロボウたちは、にげだしました。
 部屋に入った女は、なんにも見えないので、あかりをつけにいきました。
 女があかりをもってくると、おやゆび小僧は見つからないように部屋をとびだして、納屋(なや→物置)のなかにかくれました。
 女は、すみからすみまでさがしましたが、なにも見つからず、またベッドにもどりました。
 おやゆび小僧は、ほし草のなかをあっちこっちはいまわって、今日の寝場所を見つけました。
 ここで夜のあけるまでやすんで、それから両親(りょうしん)のところへかえるつもりでした。
 ところが、それがとんだことになりました。
 夜がやっとあけるかあけないうちに、女がウシにえさをやりにきたのです。
 まずはじめにやってきたのは、納屋でした。
 そして、ほし草をひとかかえほどつかみました。
 ところがそれは、おやゆび小僧のねていたほし草だったのです。
 おやゆび小僧はグッスリねていたので、なにも知りません。
 目がさめたのは、なんとウシのお腹のなかだったのです。
 おやゆび小僧は、すぐに、じぶんがどんなところにいるのか気がつきました。
「このへやは、まどをつけることをわすれたな。お日さまもさしこまないし、あかりもつけてくれない。と、じょうだんをいっている場合じゃないな」
 おやゆび小僧は、ありったけの声をだしてさけびました。
「もう、えさはたくさんだよ! これ以上食べたら、ぼくはおしつぶされてしまうよ!」
 その声を聞いた女は、あわてて主人のところへとんでいきました。
「たいへんです、ご主人さま、ウシが口をききました」
「なんだと? おまえは、気でもちがったのか?」
 坊さんはこういいましたが、ともかくウシ小屋へいってみました。
 坊さんが小屋へ足をふみいれたとたんに、おやゆび小僧が、またどなりました。
「もう、えさはたくさんだよ。あたらしいえさはたくさんだよ」
 これには、さすがの坊さんもビックリ。
 そしてこれは、悪魔(あくま)がウシのからだにのりうつったのだと思って、ウシを殺すようにいいつけました。
 そこでウシは殺され、おやゆび小僧のかくれていた胃ぶくろは、すてられました。
 おやゆび小僧が、やっと外へ出ようとしたとたん、またまた大変なことになってしまいました。
 おなかのすいているオオカミがかけてきて、おやゆび小僧の入っていたウシの胃ぶくろを食べてしまったのです。
「ありゃあ、またお腹の中に入ってしまった。でも、オオカミはウシよりはかしこいはず、話がつうじるかもしれないぞ」
 おやゆび小僧は、おなかのなかからオオカミによびかけました。
「オオカミくん。すてきなごちそうがあるところを知っているんだけど」
「どこにあるんだい?」
「案内してあげるよ。うちのなかへは、ドブから入りこまなければならないんだけれど、いったんなかに入ったら、おかしでも、べーコンでも、ソーセージでも、なんでも食べたいほうだいだよ」
 こういって、おやゆび小僧はじぶんのうちに案内しました。
 オオカミはおやゆび小僧に案内されるまま、ドブから食べものをしまってある部屋に入っていき、思うぞんぶんに食べました。
 食べるだけ食べたオオカミは、家から出て行こうとしましたが、食べすぎておなかが大きくなったので、さっきとおなじ道だというのに、そこからでることができなくなりました。
 おやゆび小僧は、それをあてにしていたのです。
 さっそく、オオカミのおなかのなかで大さわぎをはじめ、力いっぱいにあばれました。
「しずかにしていろ。うちのものがおきてしまうじゃないか」
と、オオカミがいいましたが、
「なんだと、おまえばかり食べて。ぼくだってゆかいにやりたいよ」
 おやゆび小僧はこういって、力いっぱいにわめきたてました。
 そのため、さわぎをきいたお父さんとお母さんが部屋へかけつけて、すきまからのぞいてみました。
 すると、なかにオオカミのいるのが見えましたので、お父さんはオノを、お母さんは大ガマをもってきました。
 ふたりは部屋のなかに入ると、お父さんがお母さんにいいました。
「おまえはうしろにいなさい。わしがガツンとくらわせるから。それでも死ななかったら、おまえが切りつけて、あいつを八つざきにしてしまうんだ」
 おやゆび小僧は、お父さんの声をききつけてさけびました。
「お父さん! ぼく! ここにいるよ! オオカミのおなかのなかに! はいっているんだよ!」
 それを聞いたお父さんは、大よろこびです。
「ありがたいぞ。かわいいせがれが見つかったぞ」
 そしてお父さんは、オオカミをねらってオノをふりあげると、オオカミの脳天(のうてん)めがけてガツンとくらわせました。
 オオカミは、その場にたおれて死んでしまいました。
 それからふたりは、ナイフとはさみをさがしてきて、オオカミのからだを切りひらいて、おやゆび小僧をひっぱりだしました。
「ああ、おまえのために、どれほど心配したかしれないぞ」
と、お父さんがいいました。
「お父さん、ぼくだってずいぶん、ほうぼう歩きまわってきたよ。こうしてまた、きれいな空気がすえてうれしいよ」
「いったい、どこへいってたんだい?」
「お父さん、ぼくね、ネズミの穴のなかだの、ウシのおなかのなかだの、オオカミのおなかのなかだのにいたんだよ。そして、いまやっと、お父さんとお母さんのところへかえってきたのさ」
「こんどはもう、世界じゅうのお金をもらったって、二度とおまえを売りはしない」
 両親はこういって、かわいいおやゆび小僧をだきしめました。

おしまい

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