ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

THIS IS IT

2009年11月04日 | 映画/映像


ようやく観てきました!

THIS IS IT
(2009年 ケニー・オルテガ監督)




やっぱり観てよかった。

最初にステージにマイケルが現れた瞬間。うわ凄っ!!!と感じてしまう。理屈抜きに。「キング」のオーラだ。

細身のパンツに銀ピカのジャケットを羽織った姿。軽やかなムーンウォークのステップ。声を空中で支えるかのようにしなやかに動く手。全てが完璧。誰だマイケルが90年代で終わっちまった過去の人間国宝だなんてほざいていたヤツは。あ、俺か。とんでもない誤解であった。

「マイケルがオーディション開くんだって!」と聞きつけて全世界から集まってきたダンサー、パフォーマーたちがまた、凄いスキルを見せつけてくれる。オーディションの基準は「見た目やテクニックは当たり前、その上に"華"があること」そしてそんな華だらけのダンサーの中にあって、マイケルは文字通り格別…「格」のちがった存在感を見せつけてくれる。

だがここで賞賛したいのは、本人のいわゆるスター性ではない。楽曲の細部にこだわりまくり、照明や演出タイミングなどもスタッフと議論しながら、少しずつ公演をつくり上げていくプロセスの「プロフェッショナルの流儀」こそが、彼をしてキングたらしめているという点だ。

ダンサー同様、スタッフも世界中のプロフェッショナルが集まって、それぞれ過剰なまでの「職人芸」をくり出す。ほとんどがコンピュータ・プログラミングで作られている過去の楽曲を、人力の生演奏で完璧に再現してみせる7人編成のバンド。(ダンサー同様、そのぐらいのテクニックは当然なのだ。加えて"華"が求められるのもダンサーと同じ)

1曲ごとに、これで1本の短編映画できんじゃね?と思ってしまうほどの凝った映像を撮影したり特殊効果つくってみせるヴィジュアル班。

そこにダンサーを配置し、飛び道具、電飾衣装から特殊効果まで駆使し、もちろん王道コンサート的なミュージシャンの見せ場まで含めてトータルに演出していくのは、舞台監督オルテガ氏(この映画の監督でもある。あの"ハイスクール・ミュージカル"の監督だ。なるほどね!)

全てのディティールがパズルのように組み合わせられ、凄まじいマンパワーとエネルギーが集積されて、まさしく「ありえない」規模のステージが組み立てられていくプロセスが、よくわかる。とにかく、コンサートのみならず舞台芸術というものに関わる人間なら、一度は観ておいて損のないドキュメンタリーだ。

しかし振り返れば、これだけの人間が集まってこれだけの仕事をして全世界の度肝を抜こうとしていた矢先に、中心人物がこの世からいなくなった…その時の関係者の心中はどんなものだったか。その絶望、想像するにあまりある。

「リハーサルのフッテージ映像をつなぎ合わせて映画にする」という大胆不敵なアイディアは、単にマイケルの映像をファンに届けたいというだけでなく、放っておけばそのまま消えて無になるところだったこの大プロジェクトそのもののエネルギーを、なんとかして世界に知らしめたい、というスタッフの熱い思いあらばこそではなかったか。

映画が終わった後、ほぼ満員の場内からは自然に拍手がわいていた。それは「マイケル追悼」の拍手であり、「疑似コンサート」への拍手でもあっただろうが、何よりも、このプロジェクトに関わった全ての人々への賞賛と感動を表すものであった…とぼくは思いたい。









老婆心ながら、これからこの映画を観に行く人へ。映画の後、長い長いクレジットロールが流れる間も席を立たない方が良いですよ。最後の最後に、もう1カットあります!



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