WATCH (サミット人権監視弁護士ネットワーク / Watch Human Rights on Summit)

WATCHは2008年洞爺湖サミット警備による人権侵害に対処するため、弁護士を中心に結成されたグループです。

2008年北海道・洞爺湖サミットにおける入国管理、警備体制について

2008-09-25 12:19:47 | 洞爺湖サミットの総括
                     2008年9月23日
2008年北海道・洞爺湖サミットにおける入国管理、警備体制について

                 サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)

はじめに

 Watchは、2008年北海道洞爺湖サミットにおいて、外国からのNGO参加者の入国が大量に拒否されるのではないか、サミット開催に対して異議を申し立てる市民活動が警察の過剰な警備のもとで封じ込められるのではないかと危惧した、弁護士たちが呼びかけたネットワークである。私たちは、その結成に当たって次の3点を活動の目標に掲げた。
① 情報交換のためのウェブ(ブログ)の開設
 入国拒否や逮捕などについての最新の情報を随時提供する。
② NGO団体への法的なアドバイスの提供
 海外から来るNGOのメンバーへの入管での対応や逮捕後の刑事手続続についてのマニュアルを作成し、英語版をウェブ等で提供する。
③ 市民活動に対する過剰規制に反対するアピール活動
 警察による過剰な規制や警備が行われないように、様々な機会をとらえてアピールを行う。

1, サミットにむけた入国管理、警備対策

 2008年7月7日から9日にかけて北海道・洞爺湖にて開催された先進国首脳会議(G8)にむけて、漆間警察庁長官は、2007年6月の就任の訓示において「洞爺湖サミットでは、近年の状況からは反グローバリズム運動が大規模な暴動に発展する可能性も否定できず…各位にはテロ関連情報の収集・分析、国内諸勢力の動向把握、重要施設や公共交通機関に対する警戒警備、テロ等の未然防止にむけた取り組みを徹底するとともに、実践的な訓練を反復して対処態勢を図る」と、サミット警備を明確に「テロ対策」と位置づけ、徹底した警備体制をとる決意を述べていた。
サミット警備にあたって、警察当局は、①「荒れる現場」を経験した機動隊OBを「警備訓練アドバイザー」に任命②ネットカフェの不審者対策③爆発物の原料となる市販薬品の大量販売の情報収集⑤「自動車盗」と「車上狙い」を重点犯罪に追加し、盗難車輌が武器・要員の輸送に悪用されないようにする⑥洞爺湖サミット会場周辺での航空機の飛行禁止⑦マスコミ等を通じた不審者通報キャンペーン⑧徹底した職務質問⑨野宿者などの排除⑩公園等の使用自自粛、などの措置をとった。また警察は「不審者」の事例として、インターネットカフェの利用者、レンタカー利用者、携帯電話の契約者、薬品・農薬・火薬などの購入者などをあげている。こうした過剰な警備体制のもと、2007年の暮れには、日韓共催のピース&グリーン・ボート(参加600名)の準備のために八戸に滞在した韓国人がネットカフェでのインターネットの使用を断られるというようなことが起こっていた。
 また、来日外国人対策としては、2002年のワールドカップサッカー大会の際に新設した「出入国管理及び難民認定法第5条」におけるいわゆる「フーリガン条項」を適用して、厳格な上陸審査を行なうことを表明していた。2002年のワールドカップの際には、この規定により65名が入国を拒否されている。

2, 入国管理をめぐる動向

 2008年洞爺湖サミットに関わって、入国審査の段階で拘束あるいは国外退去されたのは、WATCHの調べではおよそ53名であり、国籍も韓国、中国(香港)、アメリカ、イタリア、ドイツ、イギリス、フランス、バングラディッシュ、南アフリカ、カメルーン、ケニア、ベルギーなど多岐にわたっている。
 2007年ドイツで開催されたハイリゲンダムG8サミットでは、連邦内務省の発表によるとシェンゲン協定加盟国間の国境で85万人が検査され、そのうち155名が入国拒否されたといわれている。またシェンゲン協定加盟国と第三国との国境では、401名が入国拒否されたといわれている。
 今回の入国段階での事実上の身柄拘束・国外退去の特徴のひとつは、「みえやすいところ」をターゲットにしたことである。今回の拘束・国外退去者の多くは、G8に関係する国内でのシンポジウムなど参加することが公になっている人物であった。とりわけ7月末から東京や北海道を中心に開催された「G8対抗国際フォーラム」のパネラーや関係者13人が拘束されたことは重大である。このねらい打ち的な拘束が組織的なものであったことは、拘束された人物に対して審査官が、「G8対抗国際フォーラム」HP上にあるパネラーの写真を提示し、「この人物を知っているか、関係はあるか」などという尋問をしていたことからも明らかである(6月26日に拘束されたアンドレ・グルバチッチ、マッシモ・デ・アンジェリス氏の証言)。これ以外にも6月28日に拘束されたスーザン・ジョージ氏、また国内の集会などへの参加が公表されている活動家(3月8日に拘束されたキム・エファ氏など)の拘束が目立った。他方で、およそ数百人はいたであろう集会・シンポジウムへの参加が公にはなっていなかった外国人については(後述する韓国人は除く)、特段の支障なく入国した事例が多くを占めた。
 もうひとつの特徴は明確に韓国の活動家をターゲットに据えて国外退去を強行したことである。WATCHが把握している限り、6月25日には民主労総活動家2名が、7月3日には韓国全農活動家19名が、7月4日には民主労総活動家5名が事実上身柄を拘束され、後に国外退去させられている。数としても圧倒的に多数である。今回国外退去させられた29名中28名は韓国人であった。7月3日と7月4日の新千歳空港でのケースを担当した弁護士によると、韓国の活動家については極めて詳細な個人データ全員分のファイルを入国管理当局が保持しており、しかもそれは逮捕歴といった公式のものだけではなく渡航歴も含まれており、2005年12月の香港WTOへの抗議行動に参加したかどうかの情報まで含まれていたことが確認されている。このように韓国の活動家への厳格な対応は、単にかれらの来日がサミット直前であったことだけではなく、韓国の大統領の来日が予定されていたこと、また同時期に韓国国内でBSEをめぐる反政府運動が高揚をみせていたことなどが要因としてあると思われる。したがってすでにかれらの渡航以前から、韓国当局より情報提供がなされており、事前に大量に入国を拒否することが決定されていた可能性がある。またこれに関わって、6月26日に「G8メディアネットワーク」が招聘した香港のジャーナリストが17時間拘束されている(最終的には国会議員の仲介で入国することができた)ケースなども鑑みると、2005年の香港WTOへの抗議運動の参加歴が問題にされている可能性がある(この抗議運動では日本人を含む14名が逮捕・起訴されている)。
 全体としてこれら拘束・国外退去の理由は、「日本への渡航目的又は日本での活動内容が不明確」というものであった。入国管理当局は、口頭審理の際、「G8対抗フォーラム」に参加する予定のパネラーに対しては、「シンポジウムと次のシンポジウムの期間が空きすぎており(5日程度)、その間の行動予定が不明確」などといった理由により、「短期滞在」での上陸を不許可としたうえ、滞在期間を洞爺湖サミットが開催される前の7日間に短縮し、「特定活動」での上陸を特別に許可するなどの措置を行った。他方で、韓国からの活動家に対しては、「帰国一日前の宿泊先が不明確」などの理由により、長時間の拘束がされたケースも報告されている。このような極めて異例な措置は、サミットの開催が近付いた6月下旬以降に目立つようになったが、サミット開催時の参加そのものへの妨害が目的であったとしか考えられず、その背景には、法務省本省をはじめとする関係省庁の指示があったと考えられる。
もっとも、このような措置がどのような基準でなされたのかは不明であり、実際のケースにおいても、確立された基準を見出すことは著しく困難であって、その運用は甚だ恣意的なものであったと言わざるを得ない。また、各国当局との情報共有については、前述の韓国のケースを除き、どのような情報が共有されていたのか、また、共有された情報が入国管理においてどのように機能したのかは必ずしも明らかではない。日本では、2007年11月から日本版US-VISITの運用が開始されているが、今回の洞爺湖サミットに当たり、これがどのように機能したのか、また、アメリカにおいて運用されているUS-VISITなどの他国のシステムとどのような連携がなされたのかについても、残念ながら明らかにはならなかった。

3, 入国関係のWatchの活動の意義と問題点

 入国関係の活動においては、事前に講座を開催し、専門家の弁護士による日本の入管制度についての説明をブログに掲載し、英語、韓国語にも翻訳した。このような事前の努力は、問題が発生したときに、活動家や担当する弁護士がいち早く正確な対応を行う上で役立った。
 窓口で止められた人の多くが結果的に入国できた事例が数多かったことも、Watchの活動の成果と言って良いであろう。しかし、準備期間が短く、マンパワーも圧倒的に不足しており、十分に対応できなかった局面は多く、今後の反省を残した。

4,  国内の警備体制の動向

 2008年洞爺湖サミットに直接関係する逮捕・勾留は十数名にとどまったとされているが、それ以外にも、関連して多くの逮捕・勾留がおこなわれた。たとえば警視庁は「サミット対策」「潜伏テロリストの検挙」の名目を兼ね、6月15日から16日にかけて東京の繁華街の風俗・飲食店の一斉取締を実施し、風営法違反で外国人ら14名を逮捕している。また6月13、14日に大阪で開催されたG8財務大臣会合にからみ、関西周辺で集中的に「別件」逮捕がおこなわれている。これらがどこまでG8と関係があったのかについては明確ではないが、6月12日にはG8抗議行動への参加を予定していた釜が崎の活動家を詐欺罪(生活保護不正受給/起訴猶予)で、また6月10日は団体としてG8抗議行動への参加を予定していた洛南ユニオンの委員長を詐欺(失業手当不正受給/起訴)で逮捕しており、一定の関係が推測できる。

5,  外国人活動家の逮捕・勾留の事例がなかったことについて

 今回の特徴としてあげられるのは、入国を果たした外国人活動家の逮捕・勾留の事例がひとつもなかったことである。7月5日に5000人が参加した「札幌・ピースウォーク」では、多数の外国人を含むうち約1000人の「サウンドデモ」の隊列を警察は重点警備した。デモの出発当初は警備が緩く、デモ隊が道路全体に広がるいわゆる「フランスデモ」状態にいったんなったが、大通り公園辺りから機動隊が投入され一転して警備が厳しくなった。警察・公安当局は、外国人の直接行動については基本的に強硬に対処せず、周辺にいる日本人に的を絞っていた。このデモの中盤においてサウンドシステムを搭載した車輌の荷台(あるいは荷台付近)にいたDJ二名が逮捕され(道交法。公安条例違反)、またロイター新聞の記者が逮捕された(公務執行妨害)。終盤にはこの車輌のドライバーが逮捕(公務執行妨害)されたことが、この警備体制の傾向をあらわしている。このような傾向は7月6日から9日にかけての洞爺湖周辺でのキャンプ場をベースとしたデモンストレーションでもみられ、外国人を挑発し公務執行妨害に誘導するようなケースは、ほぼみられなかった。
 こうしたことの理由としては、ひとつにはWATCHなどを中心に事前に日本の刑事司法手続の厳格さ(代用監獄の存在や長期の取調、保釈の困難さ)などの情報が周知されていたこと、また海外の人権弁護士などと協力し、北海道現地でもさまざまな法律関係の告知・ディスカッションを繰り返しおこなったことで、日本の司法状況の厳しさが行動に参加した外国人に一定周知されたことがあげられる。さらには、強硬な抗議活動が予想された韓国の活動家の入国を、入国管理当局がほぼ完全に阻止したこともあげられる。そして警察当局としては、さまざまな理由から(例えば言語上の問題や他国との外交関係)外国人を逮捕・勾留することの「コスト」に鑑みて、日本人を逮捕・勾留することで運動全体の萎縮を図るという戦術をとったことがあげられるだろう。
 いずれにしろ警察当局は、あらゆるG8に関するデモンストレーションでデモ参加者の倍以上の警備人員を動員し、沿道や世論から示威行為を「覆い隠す」という封じ込め戦略を一貫して採用していた。

6,  結び

 今回のWatchの活動は、2007年の日弁連浜松人権大会で監視社会の問題を取り上げた実行委員会のメンバーの一部が中心となって取り組んだものである。今回のサミット時の過剰警備自体は食い止められなかったし、多くの入国拒否、少なくない逮捕勾留事案が発生した。しかし、Watchのような弁護士ネットワークが存在しなければ、弾圧の状況自体を把握することもできず、事態がもっと悪くなっていた可能性もある。活動のすべてがうまくいったわけではないが、このようなネットワークを呼びかけたことには一定の意義があったと総括できるのではないか。
 末尾ながら、混乱した状況の中でこのような活動に協力していただいた多くのNGO活動家のみなさん、事務局を担ってくれたスタッフ、そして無報酬で活動を支えてくれた弁護士の皆さんにこの場を借りてお礼したい。


                                   以上

【声明】デモに対する過剰規制及び参加者の逮捕・勾留に抗議します

2008-07-09 15:15:19 | 声明
【声明】デモに対する過剰規制及び参加者の逮捕・勾留に抗議します

2008年7月9日
サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)

 7月5日、札幌市内において「7・5チャレンジ・ザ・G8サミット――1万人のピースウォーク」が開催されましたが、これに対する警察の規制は極めて過剰で、デモが平穏に行われていたことに対比して、著しく人権を侵害する態様のものでした。沿道は、デモ参加者をカメラで撮影・記録する私服の公安刑事で埋め尽され、また、デモの両サイドは、一般の市民がデモを見ることを阻止するような形で、完全装備の機動隊によって包囲されました。
 しかも、警察官は、サウンドカーの窓ガラスを警棒で叩き割った上で、運転席にいた男性をひきずり出して逮捕するなど、合計4名(うち、1名は記者)を、公務執行妨害や道路交通法違反などを理由として逮捕勾留しました。
 このうち、記者であった1名は7月8日に釈放されましたが、検察官はそれ以外の3名につき、不当にも札幌地方裁判所に勾留請求し、8日に裁判所により3名に対する勾留決定がなされています。

 憲法は、市民が自らの表現を他人に伝達し、他人がその表現を受け取る自由をも保障しています。この意味において、デモ行進は、集会の自由の一環として立憲民主主義を支える権利としても手厚く保障され、その規制は必要最小限度にとどまらなければなりません。
 しかしながら、今回の警察による過剰規制と不当な逮捕は、表現の自由を踏みにじるものであると言わなければなりません。

 よって、私たちは4名の逮捕が憲法で保障された表現の自由に対する著しい侵害であることとともに、逮捕の態様自体に極めて問題があるとして強く抗議するとともに、3名についての勾留請求決定に対し異議を述べ、その即時釈放を求めます。


〔声明に対する賛同団体〕
2008年G8サミットNGOフォーラム
G8サミット市民フォーラム北海道
G8サミットを問う連絡会
G8女性の人権フォーラム
G8対抗国際フォーラム

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なお、声明の英語訳は英語版ブログに掲載しております。

*追記
「G8対抗国際フォーラム」を賛同団体に追加しました(7月16日)

【声明】G8サミットに関する市民団体・NGO関係者のビザ発給・入国の拒否に抗議します

2008-07-04 13:26:05 | 声明
本日WATCHは、G8サミットNGOフォーラム、G8サミット市民フォーラム北海道、G8サミットを問う連絡会の賛同を得て、以下の声明を公表致しました。
なお、声明の英語訳はWATCHの英語版ブログに掲載しております。

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【声明】G8サミットに関する市民団体・NGO関係者のビザ発給・入国の拒否に緊急に抗議し、市民活動の自由な表現・言論・集会の機会を妨げることのないようあらためて強く要請します

2008年7月4日

サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)
〔賛同〕G8サミットNGOフォーラム
    G8サミット市民フォーラム北海道
    G8サミットを問う連絡会
    

 7月7日から9日にかけて開催される「北海道洞爺湖サミット(G8サミット)」に向け、様々な市民団体・NGOが、環境や平和、人権、貧困、開発などの問題を解決するための取組みとして、シンポジウムや国際会議、ピースウォークなどの行事を予定しています。しかし、一昨日から昨日にかけて、これらの行事への参加を予定していた世界各地の多くの市民団体・NGO関係者が、現地の大使館で日本へのビザ発給を拒否されたり、空港で日本への入国を拒否されたりするといった事例が相次いで報告されています。
 私たちが把握している限りでも、一昨日から昨日にかけて、バングラデシュのNGO関係者らが、在ダッカ日本大使館から、理由の説明もなくビザ発給を拒否されています。
 他方、昨日、千歳国際空港では、韓国から来日した農民団体の関係者19名が、日本における滞在予定の証明がないという理由により、全員入国を拒否されるという事態が発生しています。
 このような事例以外にも、フィリピンの国際NGO関係者が、在バンコク日本大使館のビザ発給の遅延のため、来日を断念するに至っており、今後も同様のビザ発給や入国の拒否といった事態が生じることが懸念されます。
 これらの市民団体・NGO関係者は、日本の市民団体・NGOが正式に招聘していたものであり、また、シンポジウムの発言などが予定されていたものです。G8サミットの開催を理由として、特段の理由の説明もなくビザ発給を制限し、また、著しく厳格な滞在予定の証明を求めることによって入国を事実上困難なものすることは、市民が、G8サミットを契機として、国際的な重要課題に関する自由な意見交換や発表を行う機会を奪うことにほかなりません。このことは、市民団体・NGO関係者のみならず、ひいては、国際社会における日本に対する信頼を大きく損なうことになるものです。
 私たちは、これまでも、G8サミットに関わる入国規制の強化や、近時の学術関係者・メディア関係者に対する入国制限に抗議してきたところですが、ここに、日本政府に対し、あらためて、市民団体・NGO関係者のビザ発給・入国の拒否に緊急に抗議するとともに、市民活動の自由な表現・言論・集会の機会を妨げることのないようあらためて強く要請します。

日常生活における注意事項(外国人の方向け)

2008-07-03 20:01:03 | 日常生活における注意事項
日常生活における注意事項(外国人の方向け)


1.一般的に注意すべき事項

Q1 日本に入国した後、パスポートは常時携帯しなければならないでしょうか。

日本滞在中は、常にパスポートを携帯し、警察官、公安調査官や麻薬取締官などの公務員が職務の執行に当りパスポートの呈示を求めた場合、呈示しなくてはなりません。(入管法23条)パスポートを携帯していなかったり、呈示することを拒んだ場合には、罰金が科されたり、拘束されてしまう恐れがあります。パスポートの呈示を求める公務員に、身分を示す証票を呈示するよう求めることができますが、公務員がその要求に応じなかったからといって、パスポートの呈示を拒否することはできません。但し、警察官などの公務員が求められるのは、パスポートの呈示だけです。パスポート記載事項を書き留められたりした場合には、その場で強く抗議し、書き留めたものを廃棄することを求めましょう。

また、日本国内に住所を持たない外国人が宿泊施設を使用する際には、パスポートの呈示及びコピーが法令により義務付けられています。


Q2 日本における麻薬の取り締まりは厳しいのでしょうか

日本では、「ダメ。ゼッタイ。」のモットーの下、麻薬犯罪は非常に厳しく取り締まられています。例えば、大麻を所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役、大麻を日本へ輸入した者は、7年以下の懲役に処されます。欧米諸国では、「ソフト」な麻薬の微量所持・使用に関して刑事訴追が甘いかもしれませんが、日本ではそのような期待は通用しません。また、自国と日本の外交関係が良いから見逃してくれるであろうというような期待も持たないほうが良いでしょう。
また、20才以下の飲酒喫煙は、法律により禁止されています。


2.警察の行動


Q3 どういう場合に職務質問がされるのでしょうか。

 警察官が、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」又は「既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」について、市民を停止させて質問をすること(これを「職務質問」と言います)が認められています(警察官職務執行法2条1項)。
 外国人については、不法滞在が犯罪とされていることから、外国人というだけで、警察官による職務質問を受ける可能性があります。特に、鉄道の駅など公共の場において、職務質問を受けるおそれがありますので、注意が必要です。
 警察官は、その場で職務質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合には、職務質問をするために、その者を附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができるとされています(警察官職務執行法2条2項)。


Q4 職務質問や、警察署等への連行を拒むことはできるのでしょうか。

 職務質問や警察署等への連行は、あくまでも任意で行うことであり、警察官がこれを市民に対して強制することは認められていません(警察官職務執行法2条3項)。
 したがって、職務質問などを拒むことはできることになります。もっとも、外国人の場合には、パスポートを提示して、在留許可を得ていることを示せばそれで職務質問は終わりますので、あえて拒むメリットはありません。
 職務質問を拒むと、多くの場合、その警察官は無線で、他の警察官の応援を求めて、数人の警察官が来て、あなたを取り囲んで職務質問に答えるまで一定の時間にわたって、事実上解放されなくなることもありますので注意が必要です。


Q5 職務質問を無視してその場を離れようとした場合に、警察官に肩に手をかけるなど有形力が行使されることはありますか。

 職務質問はあくまでも任意ですが、日本の最高裁判所の判例において、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、許容される場合があると判断されており、職務質問に応じるように説得のために、警察官から離れようとした者の両手首を掴んだ行為が適法であると判断されています(最高裁1976年3月16日第三小法廷決定)。
 このような警察官の有形力の行使に抵抗して、警察官に、暴行や脅迫を加えた場合には、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕される可能性もありますので注意が必要です。
 日本では、警察官が勝手に転んで、それをもって職務質問を受けていた者が何らかの暴行を加えたとみなして公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されることもあります(これを「転び公妨」と言います)。
 したがって、職務質問に対しては、自分から警察官に手をかけたり、体当たりするなどすると、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されるおそれがあることを知っておいて下さい。


Q6 職務質問の際に、手荷物を検査されることはありますか。

 法律に明文はありませんが、日本の最高裁判所の判例上、職務質問に付随して、一定の場合に所持品検査をすることが認められています(最高裁1978年6月20日第三小法廷判決)。
 どういう場合に所持品検査が許されるかについては、所持品検査の必要性・緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮して、具体的状況の下で相当と認められる限度において許される場合があるとされています。
 この基準からすると、軽微な犯罪の容疑に関しては所持品検査が認められる余地はほとんどないと考えられますので、所持品検査は明確に拒んで下さい。曖昧な態度をとっていると、暗黙のうちに同意したと扱われかねませんので、所持品を自分の身から離さないで、言葉で明確に拒否することが必要です。


Q7 集会の会場の入り口で、警察官から所持品検査を行うための検問が行われている場合に、これに応じなければなりませんか。

 日本においては、残念ながら、警察官によって、このような検問がなされることがあります。しかしながら、集会参加者に対して、その意思に反して、一般的に所持品検査を行うことは日本の法律上は許されていません。したがって、断固として拒否すべきですが、自分から警察官に手をかけたり、体当たりするなどすると、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されるおそれがありますので、注意が必要です。


Q8 警察官から、任意同行を求められた場合に、どう対応すればよいですか。

 任意同行に応じるかどうかは、まさに任意であり、警察署等への連行を強制することは許されていません。
 したがって、任意同行については明確な拒絶の意思を表明して断ることができます。但し、任意同行を許否した場合には、警察官は、裁判官の逮捕状をとって、あなたを逮捕しようと考えますから、すぐに弁護士さんと相談することをお勧めします。


Q9 移動する際に、警察官がずっと尾行する場合にはどう対応すればよいですか。

 日本では、尾行することは、特に裁判官の令状をとらなくても任意捜査として許されると考えられています。そのために、尾行される場合があります。この場合、警察官は、あなたがどういう人と接触しているか、あなたがどこに滞在しているかを知るために尾行していると考えられますので、その点に注意を払って下さい。
 なお、法的に尾行を止めさせることは難しいので、尾行されることがあることを想定して行動して下さい。


Q10 警察官が家宅捜索に来た場合には、どういう点に注意すればよいですか。

 家宅捜索は、午前7時ころに突然来ることが多いので、朝は注意して下さい。
 警察官が裁判官に申請して捜索差押許可状を持って家宅捜索に来ます。日本では、警察官が申請した令状請求はほとんど認められています。
 通常は、ある人が逮捕された直後に、その人の犯罪容疑で家宅捜索に来るのが通常ですが、中には、「氏名不詳者」の犯罪容疑を理由に、事前弾圧として、組織や運動の実態や人間関係についての情報を収集目的で、家宅捜索が行われる場合もあります。
 家宅捜索については、まず、最初に、捜索差押許可状が呈示されます。捜索差押許可状には被疑者名、罪名、捜索場所、差し押さえられるべき物が記載されていますので、きちんと通訳して説明することを求めて下さい。後で、不服申立て(準抗告)をするためにぱ、その内容を、メモするか、ICレコーダーで録音することをお勧めします。
  家宅捜索が終わったら、警察の責任者から、「押収品目録」を受け取って下さい。家宅捜索しても何も差し押さえるべき物がなかった場合には「捜索証明書」を請求して受け取るようにして下さい。

Q11 家宅捜索の際に、身体検査を受けることもあるのですか。

 警察官は、捜索差押許可状だけでは、身体検査を実施することはできません。
 警察官が、裁判官に身体検査令状を申請して、その令状を持ってきた場合には、その令状に記載された者や捜索場所にいる人の身体検査を実施する場合があります。
 女性の場合には女性警察官が検査を実施します。
 身体検査は、持っている鞄の中身や、ポケットにある物を調べるのが普通ですが、上着や靴を脱がせたり、ズボンを上から触る程度ですが、場合によっては、下着1枚にされた場合もあります。

Q12 家宅捜索で所持品が差し押さえられた場合にはどうすればよいですか。

 警察官による不当な差押え(押収)に対しては、差押えが行われた地域を管轄する地 方裁判所に対して不服申立て(準抗告)ができます(刑事訴訟法430条)。
 警察官による差押え(押収)に対して不服申立て(準抗告)を申し立てると、明らかに被疑事件と関係がない物はすぐに返却されることがあります。
全ての押収物が返還されると、裁判所は、 準抗告の取下げを求め、取り下げないと申立の利益がないとして棄却します。


3 逮捕された場合について

Q13 逮捕される条件は何ですか。

 現行犯(「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った」と警察官が認識した場合)か、準現行犯(①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするときのいずれかに該当して、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められる場合)に限られます。
 自分に身に覚えがない場合には、警察官に対して、自分が逮捕される理由がないことを告げて、現行犯逮捕に抗議しましょう。その際、周囲の人にも訴えて協力してもらうことが望ましいです。
自分が警察官に逮捕されたときは、周りの人に、自分の名前を伝えて、救援体制をとってもらえるように依頼して下さい。


Q14 逮捕後の手続はどうなりますか。

 逮捕されたら最寄りの警察署に連行されます。手錠をかけられて、1~2名の警察官が付き添ってパトカーや護送車に乗せられて警察署に行きます。
警察署に着いたら、まず、弁解録取書が作成されます。被疑事実が告げられて、それを認めるか否かを質問されて書類が作成され、署名と指印を求められます。その際に、弁護人を選任する権利があることも告知されます。「当番弁護士を呼んで下さい」と言うと、警察官から最寄りの弁護士会に連絡が行き、その当日又は遅くとも翌日までに、弁護士と通訳が面会に来ます。 弁護士会に頼まれて初回の面会に来る弁護士を、当番弁護士と呼びます。
 留置場(留置施設)に入る前に、所持品検査と身体検査が行われます。身に付けている物は、時計やベルトを含めて全て取り上げられ、身体拘束が解かれるまで、警察が保管します(これを「領置」と言います)。持っていた携帯電話は、単なる「領置」ではなく、証拠物として差し押えられて「押収」される場合もあります。この場合には、釈放された後もすぐに返却されないことがあります。
 また、顔写真を撮影され、指紋が採取されます。
これらを拒むことはできません。

Q15 逮捕後に、領事に連絡をとることができますか。

 身体拘束された外国人は、その国籍国の領事にアクセスする権利が保障されています。実務的には、領事通報希望の有無を、被疑者に質問する用紙が警察署にあり、その希望に従って処理されることになります。
 領事の協力が得られれば、本国の家族との連絡、本国からの書類等の手配、通訳人の紹介などの協力を受けることができます。

Q16 逮捕された後、黙秘権は保障されていますか。どういうことを黙秘することができますか。

 いかなる事項についても黙秘する権利が認められていますが、日本の最高裁判所は、自己の氏名を黙秘する権利はないと判断しています(最高裁判所1957年2月20日大法廷判決)。
 ただ、外国人の場合には、パスポートを所持していると考えられますから、氏名や生年月日、国籍などはそこから判明しますので、特に黙秘する意味はないと考えられますが、完全黙秘を貫徹するという意味では黙秘しても良いでしょう。
 日本における滞在先は黙秘することができます。

Q17 警察官の取調べに、通訳はつきますか。

 ①第一言語による通訳がなされていない場合、②通訳人に十分な通訳能力がない場合、③通訳人の通訳態度が中立・公平でなく警察寄りである場合には、取調べを拒否して弁護人との接見を求めて下さい。


Q18 逮捕された後の手続の流れはどうなっていますか。

 逮捕されてから48時間以内に検察庁に送られ、逮捕されてから72時間以内(検察庁に送られてから24時間以内)に、検察官は、被疑者を勾留請求するかどうかを決めて、裁判所に勾留を請求します。勾留請求さえあれば、72時間を過ぎて勾留決定がなされなくても良いことになっています。但し、勾留決定が72時間を過ぎてなされた場合には、勾留期間は勾留請求の日からカウントされます。
 勾留は原則として10日間ですが、延長されて20日間勾留されることもあります。
 もっとも、場合によっては、これより短い期間で釈放されることもありますが、外国人だからということで短くなるという訳ではありませんので注意が必要です。
 勾留されてから20日目までに検察官が起訴(公判請求)しなければ釈放されますが、検察官が起訴されると、そのまま勾留が継続します(起訴後勾留)。
 その後、保釈を請求し、それが認められて保釈保証金を納付して釈放されなければ、裁判が終わるまで勾留が継続することになり、起訴されてから第1回公判まで、通常1ヶ月半くらいかかります。
 第1回公判で裁判が終わった場合には、それから2週間以内に第2回公判が開かれて、判決が言い渡されます。

Q19 逮捕後、どこに身体拘束されますか。

 日本では、海外とは異なり、検察官に送られて裁判所による勾留決定を受けた後も、警察署の留置場(留置施設)に収容されるのが普通です。これは「代用監獄」制度として国際的に批判を受けています。
 そのため、警察に生活の全てがコントロールされて、連日、長時間の取調べを受けたり、就寝時間(午後9時)を過ぎても取調べが行われることがあります。

Q20 警察官に逮捕された後、誰と面会できますか。

 ほとんどの場合に、裁判官による勾留決定と同時に、接見禁止決定がなされ、弁護人以外との面会や差し入れが禁止されるのが普通です(刑事訴訟法81条)。
 したがって、外と連絡をとるためには、連日のように弁護人に面会してもらうことが必要になります。

Q21 勾留に対する不服手段はどうなっていますか。

 裁判官の勾留決定に対して不服申立て(準抗告)を申し立てることができます(刑事訴訟法429条1項2号)。勾留延長決定に対しても不服申立て(準抗告)ができます。但し、それによって勾留が取り消される可能性はそれほど高くありません。
 もっとも、不服申立てをすることで、勾留延長後の期間が少し短くなる場合があります。
 勾留中に1度だけ、勾留決定をした裁判官から、勾留の理由を開示させる裁判(勾留理由開示公判)を求めることができます。誰でも傍聴することができ、マスコミが取材に来ることもあります。
この裁判では、裁判官に対して釈明を求めることができ、また、被疑者と弁護人がそれぞれ意見陳述をして勾留の不当性を訴えることができます。

Q22 略式手続で簡略に裁判を受けることができますか。

 100万円以下の罰金になるような事件については、裁判官による書面審査だけで罰金が命令される略式手続があります。
 この場合には、罪を認めることが前提となります。
 通常、その罰金額を支払うと、釈放されることになります。

Q23 入管法上の手続との関係はどうなりますか。

刑事事件で逮捕された場合は、刑事手続が入管手続に先行することになります。そのため、できる限り早く本国に帰国したいと思ったとしても、刑事手続が終了するまでは本国に帰国することはできません。
起訴されて実刑判決を受けた場合は、原則として日本の刑務所で刑を受けることになります。
他方、刑事事件で逮捕されたとしても、直ちに在留資格を失うわけではありませんが、刑事手続が終了するまでに在留期間を経過した場合は、不起訴又は無罪・執行猶予となったとしても、また、刑が終了したとしても、直ちに入管に収容されて、退去強制手続が開始されることになります。
退去強制手続が開始された場合、法務大臣の特別の許可により、在留が認められることもありますが、原則として本国に退去強制されることになります。

デモでの注意事項(外国人の方向け)

2008-07-03 19:37:26 | デモにおける注意事項
デモでの注意事項(外国人の方向け)


Q1 デモに参加する場合、どういう点に注意したらいいですか。

 警察官は、デモの動向を監視し、何か口実があれば、参加者を逮捕することを狙っていますので、以下の点に注意が必要です。
 服装は、脱げにくく履き慣れた靴、あまり肌が露出しない服を着て下さい。集会の会場では参加者の写真を撮影(最近ではデジタルカメラでの撮影)していることがありますので、写真撮影されたくない場合には、サングラスやマスクや帽子を着用することをお勧めします。
 持ち物は、ハンカチ、ティッシュ、現金など必要最小限のものだけを身に付けて下さい。そうしないと逮捕された場合に持っていた物は拘束が解かれるまで全て取り上げられて警察が保管することになるからです。但し、前述したように、警察官の職務質問に対応するために、外国人の場合にはパスポートは必ず持って下さい。
 デモに参加する場合には、一人にならないで、他の参加者となるべく行動を共にするようにして下さい。

Q2 デモにはどのような物を持っていくことが禁じられていますか。防護器具を装備しても良いですか。旗ポールなどを持っていても良いですか。

持っていくことが禁じられている物は、デモ許可書に記載されています。詳しいことは、事前にデモの実行委員会に聞いて下さい。覆面したり、防護器具を装備することは禁止されていませんが、一般的に、危険物を持っていくことは禁止されています。旗ポールはデモに持っていっても通常問題ありませんが、具体的な使い方によっては危険物と見なされてしまう可能性もあります。

Q3 自発的にデモや集会をすることは可能ですか。

日本でデモや集会をするためには、デモや集会の許可を72時間前までに申請しなくてはなりません。無許可のデモや集会は、警察の規制を受けます。

Q4 どのような警察官がデモを見張りますか。どうやって見分けられますか。
デモに直接介入する警察官には、機動隊と制服警官がいます。権限は同じですが、機動隊は重装備をしています。また、公安調査官が私服で歩道を歩き、デモ参加者の写真を撮ったり、情報収集します。公安調査官は、直接デモに介入する権限はありません。

Q5 デモでメディアや警察官に撮影されたら、どのような権利がありますか。逆に警察の行動を記録しても良いですか。

最高裁判所は、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するとし、その例外として、現に犯罪が行われ、もしくは行われたのち間がない認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性及び緊急性があり、かつ、その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法で行われるときには、撮影される本人が同意がなく、裁判官の令状がなくても個人の容ぼう・姿態の撮影が許容されると判断されています(最高裁判所1969年12月24日大法廷判決)。
デモの場合、事前にデモ申請をして、その許可条件に違反したとされる場合には公安条例違反の現行犯として、顔写真等が撮影される場合があります。
また、実際には、公安警察は、上記の最高裁判例とは関係なく、公道にいるという理由で写真を撮影することもあります。
上記の判例に違反して警察官に撮影された場合には、抗議しましょう。ひどい場合には、国賠訴訟を起こしても良いでしょう。
メディアに姿を撮影され、それが嫌であれば、抗議しましょう。しかし、デモ行進に参加している者は、被写体となることを事前許諾していると認められてしまう恐れがあります。
職務中の公務員は、肖像権を有さないため、撮影をしても良いという判例があります。

Q6 逮捕の条件は何ですか。

デモの現場で逮捕される場合は、現行犯(「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った」と警察官が認識した場合)か、準現行犯(①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするときのいずれかに該当して、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められる場合)に限られます。
 自分に身に覚えがない場合には、警察官に対して、自分が逮捕される理由がないことを告げて、現行犯逮捕に抗議しましょう。その際、周囲の人にも訴えて協力してもらうことが望ましいです。
 自分が警察官に逮捕されたときは、周りの人に、自分の名前を伝えて、救援体制をとってもらえるように依頼して下さい。

Q7 どのような罪で逮捕されますか。
公務執行妨害罪、建造物侵入罪、威力業務妨害罪、道交法違反などが、通常デモでの逮捕の理由とされますが、その他いかなる微罪も逮捕の口実を与えてしまいます。また、警察は、犯罪をでっち上げることもあります。


Q8 逮捕後の手続はどうなりますか。

 逮捕されたら最寄りの警察署に連行されます。手錠をかけられて、1~2名の警察官が付き添ってパトカーや護送車に乗せられて警察署に行きます。
警察署に着いたら、まず、弁解録取書が作成されます。被疑事実が告げられて、それを認めるか否かを質問されて書類が作成され、署名と指印を求められます。その際に、弁護人を選任する権利があることも告知されます。
電話を使って直接弁護士を依頼することはできませんが、警察官に弁護士を呼ぶように頼むことができます。弁護士を選ぶためには、2つの選択肢があります。
 
まず、地元の弁護士会が運営している当番弁護士を頼むことができます。当番弁護士は、各地の弁護士の組織である弁護士会に所属する弁護士の中から、当番弁護士名簿に登載された弁護士から、その日の当番になっている弁護士が出動して面会に来てくれる弁護士です。最初の面会は無料で行ってくれます。

当番弁護士は、警察官の立会いなしに逮捕された人と面接し、その人の言い分を聞いたり、その人の権利やこれからの手続について説明してくれます。そして、外部との連絡をとってくれます。招聘団体などがいる場合には、連絡を取ってもらいましょう。

 当番弁護士による初回の接見後に、その弁護士による捜査弁護の継続を望む場合には、面会に来てくれた弁護士を私選弁護人として選任することになります。その場合、原則としては弁護士費用を払わなくてはなりませんが、弁護士費用を援助してもらえる場合もあります。Q10を参照してください。

当番弁護士の代わりに、救援連絡センター(03-3591-1301)の指定する弁護士を選任することができます。救援連絡センターとは、逮捕された活動家の支援を専門的に行う組織です。当番弁護士と救援連絡センターが指定する弁護士の違いに関しては、Q9を参照して下さい。

当番弁護士を頼みたい場合には、警察官に「当番弁護士を呼んで欲しい」と言えば、警察から最寄りの弁護士会に連絡が行き、弁護士会が当番弁護士と通訳を当日又は遅くとも翌日には手配してくれます。
救援連絡センターが指定する弁護士を選任したい場合は、警察官にそう伝えて下さい。警察から救援連絡センターに連絡します。

また、逮捕者本人だけでなく、その友人や支援者でも、弁護士会や救援連絡センターに直接電話して、弁護士を頼むことができます。
 連絡先は次の通りです。

札幌弁護士会:011-272-1010
救援連絡センター:03-3519-1301

留置場(留置施設)に入る前に、所持品検査と身体検査が行われます。身に付けている物は、時計やベルトを含めて全て取り上げられ、身体拘束が解かれるまで、警察が保管します(これを「領置」と言います)。眼鏡を取り上げられそうになったら、断固として抗議してください。
持っていた携帯電話は、単なる「領置」ではなく、証拠物として差し押えられて「押収」される場合もあります。この場合には、釈放された後もすぐに返却されないことがあります。
 また、顔写真を撮影され、指紋が採取されます。
これらを拒むことはできません。


Q9 当番弁護士と救援連絡センターが指定する弁護士の違いは何ですか。どちらを選べば良いですか。
救援連絡センターが指定する弁護士は、政治活動で逮捕された活動家の弁護の経験がある弁護士です。当番弁護士の場合には、そのような経験を有していたり、政治活動に対する理解を有している保証はありません。
しかしながら、救援連絡センターが指定する弁護士は、東京の弁護士が中心であり、北海道での対応に限界がありますし、外国人については通訳の手配の問題がありますので、北海道で逮捕された場合には、救援連絡センターに連絡するよりも、弁護士会に当番弁護士を依頼する方が望ましいと考えられます。

Q10 弁護士費用の援助を受けることはできますか。

一般的に、デモで逮捕者が出た場合には、デモの実行委員会は、その人のために支援グループを組織し、その支援グループが弁護士費用を賄うためのカンパなどを集めてくれます。
その他にも、各弁護士会が、弁護士費用を援助する制度を設けています。詳しいことは、当番弁護士やその他の弁護士に聞いて下さい。

Q11 逮捕後に、領事に連絡をとることができますか。

 身体拘束された外国人は、その国籍国の領事にアクセスする権利が保障されています。実務的には、領事通報希望の有無を、被疑者に質問する用紙が警察署にあり、その希望に従って処理されることになります。
領事の協力が得られれば、本国の家族との連絡、本国からの書類等の手配、通訳人の紹介などの協力を受けることができます。


Q12 逮捕された後、黙秘権は保障されていますか。どういうことを黙秘することができますか。

 いかなる事項についても黙秘する権利が認められていますが、日本の最高裁判所は、自己の氏名を黙秘する権利はないと判断しています(最高裁判所1957年2月20日大法廷判決)。
 ただ、外国人の場合には、パスポートを所持していると考えられますから、氏名や生年月日、国籍などはそこから判明しますので、特に黙秘する意味はないと考えられます。日本における滞在先は黙秘することができます。

 取調中にやっていないことを「やった」と認めないで下さい。一度自白してしまうと、証拠として採用されてしまい、裁判でその自白を撤回することは非常に難しいからです。取調べでウソをついても裁判で本当のことを言えば良いといった考え方は、とても危険です。


Q13 警察官の取調べに、通訳はつきますか。

 ①第一言語による通訳がなされていない場合、②通訳人に十分な通訳能力がない場合、③通訳人の通訳態度が中立・公平でなく警察寄りである場合には、取調べを拒否して、別の通訳人か弁護人との接見を求めて下さい。


Q14 逮捕された後の手続の流れはどうなっていますか。

 逮捕されてから48時間以内に検察庁に送られ、逮捕されてから72時間以内(検察庁に送られてから24時間以内)に、検察官は、被疑者を勾留請求するかどうかを決めて、裁判所に勾留を請求します。勾留請求さえあれば、72時間を過ぎて勾留決定がなされなくても良いことになっています。但し、勾留決定が72時間を過ぎてなされた場合には、勾留期間は勾留請求の日からカウントされます。
 勾留は原則として10日間ですが、延長されて20日間勾留されることもあります。
 もっとも、場合によっては、これより短い期間で釈放されることもありますが、外国人だからということで短くなるという訳ではありませんので注意が必要です。
 勾留されてから20日目までに検察官が起訴(公判請求)しなければ釈放されますが、検察官が起訴されると、そのまま勾留が継続します(起訴後勾留)。
 その後、保釈を請求し、それが認められて保釈保証金を納付して釈放されなければ、裁判が終わるまで勾留が継続することになり、起訴されてから第1回公判まで、通常1ヶ月半くらいかかります。
 第1回公判で裁判が終わった場合には、それから2週間以内に第2回公判が開かれて、判決が言い渡されます。

Q15 逮捕後、どこに身体拘束されますか。

 日本では、海外とは異なり、検察官に送られて裁判所による勾留決定を受けた後も、警察署の留置場(留置施設)に収容されるのが普通です。これは「代用監獄」制度として国際的に批判を受けています。
 そのため、警察に生活の全てがコントロールされて、連日、長時間の取調べを受けたり、就寝時間(午後9時)を過ぎても取調べが行われることがあります。

Q16 警察官に逮捕された後、誰と面会できますか。

 ほとんどの場合に、裁判官による勾留決定と同時に、接見禁止決定がなされ、弁護人以外との面会や差し入れが禁止されるのが普通です(刑事訴訟法81条)。
 したがって、外と連絡をとるためには、連日のように弁護人に面会してもらうことが必要になります。

Q17 勾留に対する不服手段はどうなっていますか。

 裁判官の勾留決定に対して不服申立て(準抗告)を申し立てることができます(刑事訴訟法429条1項2号)。勾留延長決定に対しても不服申立て(準抗告)ができます。但し、それによって勾留が取り消される可能性はそれほど高くありません。
 もっとも、不服申立てをすることで、勾留延長後の期間が少し短くなる場合があります。
 勾留中に1度だけ、勾留決定をした裁判官から、勾留の理由を開示させる裁判(勾留理由開示公判)を求めることができます。誰でも傍聴することができ、マスコミが取材に来ることもあります。
この裁判では、裁判官に対して釈明を求めることができ、また、被疑者と弁護人がそれぞれ意見陳述をして勾留の不当性を訴えることができます。

Q18 略式手続で簡略に裁判を受けることができますか。

 100万円以下の罰金になるような事件については、裁判官による書面審査だけで罰金が命令される略式手続があります。
 この場合には、罪を認めることが前提となります。
 通常、その罰金額を支払うと、釈放されることになります。

Q19 入管法上の手続との関係はどうなりますか。

刑事事件で逮捕された場合は、刑事手続が入管手続に先行することになります。そのため、できる限り早く本国に帰国したいと思ったとしても、刑事手続が終了するまでは本国に帰国することはできません。
起訴されて実刑判決を受けた場合は、原則として日本の刑務所で刑を受けることになります。
他方、刑事事件で逮捕されたとしても、直ちに在留資格を失うわけではありませんが、刑事手続が終了するまでに在留期間を経過した場合は、不起訴又は無罪・執行猶予となったとしても、また、刑が終了したとしても、直ちに入管に収容されて、退去強制手続が開始されることになります。
退去強制手続が開始された場合、法務大臣の特別の許可により、在留が認められることもありますが、原則として本国に退去強制されることになります。

【声明】法務省によるG8サミット関連の入国制限に抗議します

2008-06-30 09:25:58 | 声明
【声明】法務省入国管理局による学術関係者・メディア関係者に対する不当な入国の制限に抗議し、自由な表現・言論活動を保障することを要請します

2008年6月30日

サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)

 現在、6月30日及び7月1日に東京を中心として開催が予定されている「G8対抗国際フォーラム」に参加する海外からの学術関係者について、8割以上に当たる11名のパネラーが空港に留め置かれて長時間の尋問を受け、そのうちの数名は会議と会議の間の数日間の予定が明白ではないという理由で一旦上陸を拒否され、その後、予定していた期限を大幅に短縮した形で特別に上陸が許可されています。
 他方、メディア関係者についても、G8サミット関連のイベントを取材するために来日する多くの海外のジャーナリストらが、同様に、特段の理由もなく、各地の空港で留め置かれ、尋問を受ける状態が続いています。
 しかしながら、このような措置は、学術関係者・メディア関係者に対する不当な入国の制限であると言わざるを得ません。このことは、G8に関する多様な意見や主張の公表を制限しかねないのみならず、自由な調査研究活動や報道活動に対する萎縮的効果を及ぼすおそれがあるものです。
 当ネットワークは、法務省入国管理局に対し、直ちにこのような表現・学問の自由を侵害することにつながる不当な審査を正常な審査に戻し、G8サミット期間中を含めた自由な表現及び言論活動を保障することを強く要請します。

以上

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なお、声明の英訳は英語版ブログに掲載しております。

【声明】グリーンピース・ジャパン2名の不当な勾留に強く抗議します

2008-06-28 11:38:10 | 声明
【声明】グリーンピース・ジャパン2名の不当な勾留に強く抗議します

2008年6月28日

サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)

 2008年4月16日に、グリーンピース・ジャパンの活動家2名が、調査捕鯨船が捕獲した鯨肉入りダンボール箱を青森市内の運送会社から持ち出し、その鯨肉を東京地方検察庁に提出した件で、青森県警と警視庁公安部は、6月20日、この2名を窃盗及び建造物侵入容疑で逮捕し、グリーンピースの事務所を家宅捜索しました。

 今回のグリーンピース・ジャパンの2名の行為は、彼らの説明によると、単なる窃盗及び建造物侵入などではなく、税金でおこなわれている調査捕鯨の肉を船員が持ち帰るという「業務上横領」を告発するためになされたものです。しかも、この2名は、すでに詳細な事実関係を列挙した上申書を作成して東京地検に提出し、いつでも出頭に応じると公けに表明していました。しかも、彼らの行為は、あくまでも「違法行為の告発」のために行われたとのことです。そうであるとすれば、2名には、勾留の要件である「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」も「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」〈刑事訴訟法第60条1項2号、3号〉がないと考えられるにもかかわらず、青森県警と警視庁公安部は彼らを逮捕し、現在も勾留しています。今回の事件における2名の行為は、あくまで「違法行為の告発」を前提としてなされたものであり、捜査に協力しているにもかかわらず、逮捕・勾留するのは正義に反し、違法、不当なものにほかなりません。

 こうした「逮捕劇」が、7月初頭に開催されるG8サミットの直前におこなわれたことには、各所から懸念の声があがっています。マスコミでは「気になるのは、逮捕に関して7月に開かれる主要国首脳会議〈洞爺湖サミット〉と絡める見方があることだ。目的のためには違法行為も辞さない、過激な市民団体への警告的な意味合いではないかというのだ。事実だとすれば強い懸念を禁じ得ない…法律の運用はあくまで厳正になされるべきだ。政治的な意図が込められてはならない」〈新潟日報6月20日夕刊〉。またG8にかかわる取り組みをすすめる活動家からも「サミット前に市民運動全体への萎縮効果を狙っている」という声があがっています〈信濃毎日新聞6月20日夕刊〉。

 青森県警及び警視庁公安部が、このG8サミットの直前というタイミングで、あえて、予想される国際的な非難をも省みず過度な取り締まりを強行したことの背景には、G8サミットにかかわるさまざまな運動の取り組みに「萎縮効果」を与えようという強い意図がうかがえます。本事件が「公安警察」によって指揮されていることも、こうした意図を裏付けています。このように今回の事件は、ゆきすぎた逮捕・勾留・捜索による人権侵害であることにとどまらず、日本社会の、ひいてはG8サミットに関心をよせる国際社会の取り組みを萎縮せしめる「表現の自由」への挑戦とも言えます。このような市民団体がおこなった告発行為を、G8サミットの警備と絡めて取り締まることは、国際的にも全く通用しない対応であり、人道的観点からの全世界的非難は免れ得ません。

 G8サミット人権監視弁護士ネットワークは、今回の事態が今後のG8における自由な表現活動、抗議行動、告発行為への妨げになることを強く懸念します。また目前に迫ったG8サミットでは日本国憲法で保障された自由な行動、自由な空間が保障されるよう強く要請します。

以上

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なお。声明の英訳は英語版ブログに掲載しております。

デモなどにおいて逮捕者が出た場合のサミット人権監視弁護士ネットワーク<WATCH>の対応について

2008-06-27 18:25:49 | ニュース / News
(この文書は、海外から日本に来た活動家にWATCHの活動を説明するためのものです。)

WATCHは、2008年G8サミットにおける警察当局による人権侵害を監視するために結成された弁護士のネットワークです。活動家により組織されるリーガルチームとは組織的に直接関係ありませんが、情報交換などの連絡はしています。

WATCHは、人権侵害の予防を目的としています。
その一環として、活動家が不当弾圧から自分の身を守るために最低限必要な、日本の刑事手続などに関する法律情報を公開しています。さらに、7月5日に札幌で行われるデモに立会い、警察の行動を監視し、もし弾圧があった場合には、それをメディア活動家の協力を得て記録し、公表し、世界に向けて抗議していきます。

逮捕者が出た場合、WATCHは原則として逮捕者を直接的に支援しません。
また、全ての逮捕者に関する情報を総合的に収集して、救援活動を組織することもありません。逮捕者が外国人の場合、招聘団体があるケースにおいては、その団体が救援活動を組織すべきです。もし招聘団体が無い場合には、WATCHがなるべく対応していきますが、人員に限りがあるため、全ての逮捕事件に対応することができないことを予めご了承下さい。

外国人の逮捕者が出た場合、当番弁護士を頼んで下さい。当番弁護士とは、最寄りの弁護士会が組織してくれる弁護士で、初回の相談を無料で引き受けてくれます。イメージとしては、応急処置を施してくれる救急医のようなものです。逮捕者本人は、警察署で「当番弁護士を呼んで下さい。」とだけ言えば、警察から弁護士会に連絡してくれます。本人でなくても、友人や支援者が最寄りの弁護士会に連絡することもできます。(電話番号は文末に掲載されています。)当番弁護士は、警察官の立会なしに逮捕された人と面接し、その人の言い分を聞いたり、その人の権利やこれからの手続について説明し、外部との連絡もとってくれます。もし招聘団体が存在する場合には、その団体に連絡をとってもらいましょう。

もし当番弁護士による初回の接見後に刑事弁護の継続を望むのであれば、面接に来た当番弁護士やその他の弁護士を私選弁護人として選任しなくてはなりません。その場合、弁護士費用が必要となりますが、費用を援助してもらえる場合もあります。詳しいことは、当番弁護士に聞いて下さい。

当番弁護士は、地域の弁護士会によって組織されるものであり、WATCHとは直接関わりがありません。しかしながら、WATCH参加弁護士が、当番弁護士を務めたり、私選弁護人を務めることはあるかもしれません。

また、救援連絡センター(電話03-3591-1301)という、逮捕者の救援活動を専門とする民間の組織があります。外国人が逮捕された場合、救援連絡センターに連絡することも可能です。救援連絡センターは、救援活動のスペシャリストですが、地理的に北海道での対応に限界があると思われること、言語などの側面からすると、救援連絡センターに連絡するより、当番弁護士と通訳を手配してくれるであろう弁護士会に当番弁護士を頼むことが望ましいのではないかと考えます。

当番弁護士の連絡先
札幌 011-272-1010
東京 03-3580-0082
大阪 06-6363-0080

これらの電話番号は、逮捕者の友人や支援者が当番弁護士を頼む場合の連絡先です。逮捕者本人は、警察署で「当番弁護士を呼んで下さい。」といいましょう。逮捕された時のために腕に「tôban bengoshi」と書いておくと良いでしょう。

外国人向け刑事手続案内

2008-06-25 08:35:36 | 日本の刑事手続について
初めて日本に来る方へ

 日本を初めて訪問される外国人に対して、最低限知っておいてもらいたい日本の刑事手続について説明します。

1、逮捕された場合のリスク
 日本では、警察に一旦逮捕され、72時間以内に、検察官が裁判官に勾留請求し、裁判官がそれを認めると(かなり高い割合で勾留が認められます)、少なくとも10日間、通常であればさらに10日間延長されて、最大で23日間、身柄が拘束される可能性があります。
 したがって、一旦逮捕されてしまうと、かなり長期間にわたって身柄が拘束されて自由が奪われる可能性があることを覚悟しておく必要があります。
 日本では、海外とは異なり、裁判官による勾留決定を受けた後も、警察署の留置場に収容されるのが普通であり、これは「代用監獄」として国際的に批判を受け、今年の6月にも国連の人権委員会(UPR)でも取り上げられています。警察は、逮捕した人の生活の全てを24時間コントロールして、連日、長時間の取調べを行ったり、就寝時間(午後9時)を過ぎても取調べを行うことがあります。
 しかも、身柄が拘束されている23日間は、弁護士以外の誰とも面会できない可能性があります(接見禁止)。
 日本では、外にいる人に電話をする権利は一切認められません。あなたが持っている携帯電話は、拘束期間中は警察に取り上げられて使えなくなります。

2、逮捕されたらどうするか
 逮捕されて警察署に連行され、留置場に入る際には、身体検査と荷物検査をされ、身につけている装飾品、ネクタイ、ベルト等は、拘束期間中は取り上げられます。
 警察に逮捕されたら、直ちに、「当番弁護士を呼んで下さい」と要求して下さい。
その日のうちか、遅くとも翌日には、弁護士会から派遣された弁護士が、通訳人を連れて面会に来てくれます。初回の面会の費用は無料です。
 面会した際に、弁護士に対して、あなたと面識がある日本の運動団体の方への連絡をお願いして下さい。
 その後、正式に弁護人を依頼する場合の弁護士費用については、日本の法的援助サービスを受けて、その弁護士費用を自分で負担しなくても良い場合があります。この点については、面会した弁護士とよく相談して下さい。

当番弁護士の連絡先
 札幌:011-272-1010
 東京:03-3580-0082
 大阪:06-6363-0080
また、東京近郊では「救援連絡センター」(03-3591-1301)へも相談できます。

札幌弁護士会への申し入れ

2008-06-21 13:08:12 | ニュース / News
WATCHを含む5団体が、以下のように札幌弁護士会に申し入れました。

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札幌弁護士会会長 三木正俊 殿

   G8北海道洞爺湖サミット期間中の刑事弁護体制強化のお願い


2008年6月20日


G8サミット市民フォーラム北海道
G8サミットNGOフォーラム
G8を問う連絡会
G8女性の人権フォーラム
サミット人権監視弁護士ネットワーク

 2008年7月7日から9日にわたって「G8北海道洞爺湖サミット」が開催されます。これに向け、各種のNGO、市民団体が、環境、平和、人権などさまざまな課題を掲げて取り組みをおこなっており、例えば7月5日には大通り公園で大規模なデモ・パレード、また7月6日~9日にかけては壮瞥町、豊浦町でキャンプを設置するなどの企画が予定されています。
 こうした市民による自主的な動きに対して、警察当局はサミット警備を「テロ対策」と位置づけ、厳格な警備体制を敷いています。そしてサミット開催を前にして、すでに、不当な入国拒否、または理由なき入国拒否を含む外国人の入国管理の不当な運用、また微罪逮捕などが起こっています。このような動向を鑑みると、サミット開催期間とその前後に、警察の厳格な警備体制のもと、公務執行妨害等での逮捕・勾留が頻発する可能性は否定できません。
 私たち五団体はこうした過度な警備体制が不当な人権侵害をもたらし、正当な表現行為への萎縮効果をもたらすことを深く憂慮しております。さらに、今回の取り組みでは稀にみる規模の海外からの来訪が予想されるので、その意味でもこうした人権侵害が国際問題にまで発展する可能性も大いにあります。
 貴弁護士会は2002年の「サッカーワールドカップ」開催時に、会として特別な刑事弁護体制で臨まれたと聞いております。その経験に則り、今回の「G8北海道洞爺湖サミット」開催期間ならびにその前後においても同様の特別体制をとっていただくことをお願いいたします。

*G8サミット市民フォーラム北海道
代表:宮内泰介(011-206-4674)

*G8サミットNGOフォーラム
代表:星野昌子 (03-5292-2911 JANIC)

*G8を問う連絡会
代表連絡先:日本消費者連盟(03-5155-4765)

*G8女性の人権フォーラム
代表連絡先:アライズ法律事務所:鈴木隆文弁護士(047-376-6556)

*サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)
代表:中村順英 事務局長:海渡雄一 (03-3341-3133 東京共同法律事務所)