スパイクとサボテン

写真 ニュージーランド ニート 恋愛の文章ブログです。

30代Vol60・・・・・未練

2006-07-01 22:03:07 | Weblog
ふと瞳さんのことが気になった。電話しようかどうか悩んだ。
元気になったことを知らせるのなら、迷惑しないだろう。もう僕も声を聞いても大丈夫だろう。瞳さんに電話してみた。どうせとらないだろう。出ても笑って話そう。心配をかけているといけないので、元気な声で話そう。

「瞳さん?」
「どうしたの?元気にしてたの?」

瞳さんは、相変わらず僕を心配していた。僕の至らないところ、好きだったところを長い時間をかけて、話してくれた。僕は、落ち着いて、幸せそうな瞳さんと話せて嬉しかった。以前のように話せている。やっぱりダメだ。いきなりフィードバック。ダメだダメだとわかっていても言ってしまう。

「瞳さん、もう会えないの?」
「会えないよ。終わったのよ」
「コーヒー飲むぐらいいいじゃない?」
「どうしても会えない」
「好きな人ができたの?」
「・・・・・・」
「本当のことを教えて、僕は何をきいても大丈夫だから」
「うん、いるよ。大切な人が。黙っていてゴメン」

僕の頭の中はゆっくりと渦を巻いて回転した。意味がわからなかった。
時間も何も何処にいるのかさえもわからなかった。僕という風船から空気が抜けていく感じがした。瞳さんはこうなるのがわかっているから言えなかった。瞳さんもここまで苦しみ続けていたんだ。

「どんな人?」
「聞いてもしょうが無いでしょ?」
「いいから教えて」
「・・・絵の先生」

瞳さんを熱心に応援してくれて、公私ともに頼りになり、同じ夢に向かって生きていける人。子供もなついて、母親も大切にしてくれる。もうすぐ一緒に住むと言っていた。瞳さんにはぴったりだ。僕とじゃ比べ物にならない。僕は随分前から瞳さんの眼中に入って無かった。
あったのは、夢を追えない、そこから出られないでもがいている男への同情。もう僕は瞳さんを苦しめた過去の男達と同列。


「幸せになって下さい」
「あなたもね、捨て鉢になったらダメよ」
「うん。わかった。瞳さん」
「何?」
「瞳さん」
「何?」
「瞳さん本当にもう2度と会えないね」
「もう切るね。幸せになってね。ごめんね。」
「待って、瞳さんの心の小さな小さな穴はその人で埋まったの」
「ううん。人に求めるものじゃなかったの。自分で埋めたよ。」

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