フィールドワーク通信

広島を拠点にフィールドワーク。カンボジア、インドネシア、市民まちづくり

内藤廣氏の島根県芸術文化センター

2006-05-22 20:10:27 | 研究室通信
グラントワに行ってきた。
内藤廣氏の建築である。

牧野富太郎記念館、海の博物館につづき、私がみる内藤氏の建築は3作目である。

石州瓦と水盤が印象的である。

いたるところ石州瓦である。瓦を使わないとしても、茶褐色のタイルか、コンクリートの打ち放しを茶褐色に塗装している。
やりすぎで食傷ぎみになるといえばなる。悪いわけではない。いいといえばいい。
素材が魅力的なので、その集積によって魅力的な空間ができてはいるが、なんとなく釈然としない。

水盤も素敵である。薄い水盤が中庭に置かれ、子どもたちの格好の遊び場になった。水盤に写る建築がゆれるさまもきれいだ。水はおそらく循環式のものだと思うが、莫大な維持コストがかかるのではないかと気になる。維持にコストがかかれば、じきにつかわれなくなる。水盤はただのだだっぴろい中庭になる。

水盤という建築言語自体も、ある意味、既視感を伴うものだ。直島ベネッセのアネックスでも水盤はあったし、安藤氏の淡路島の建築にもある。

家族と訪れたので、ちゃんとは見ていないが、大きなヴォリュームも気になる。ヴォリュームの処理は、劇場建築では、共通するテーマだ。そういう意味ではしかたのない面もあるのかもしれない。なぜだか裏口からのアプローチだったが、見た感じ正面からのアプローチ空間は、スケールを落としていい感じだった。アプローチよこのランドスケープや地元出身の芸術家澄川氏の作品と思われる石のオブジェもいい感じだった。

石州瓦業界には、いい意味で、いい建築だったんだと思う。大量の瓦が使われたから、そう言うのではない。瓦の多様な使い方が、建築家の手によって提示されたことの意味は大きい、という意味である。技術的にも、そうした要望に応えるべく、新たに開発が進められた部分もあると思う。

建築に圧倒されて、美術館の展示を見る機会を逸してしまった。建築だけでも見る価値のある施設だ。ゆっくり展示とともに建築も楽しみたい。

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