切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『幸せはシャンソニア劇場から』 クリストフ・バラティエ監督

2009-09-04 06:01:07 | アメリカの夜(映画日記)
ちょっと義理があって、試写を観ました。久々に「古きよきフランス映画」という感じのよい作品です。簡単に感想っ。

舞台は1936年のパリ。

(日本だと昭和11年。2.26事件のあった頃だと考えると案外、ディテールがわかりやすいかも。)

不況の煽りを受けて閉館の危機にあるシャンソニア劇場をめぐって、父子、若い男女、芸人たちや街の実力者たちが織り成す、笑いと涙のストーリー、といったところですかね~。

わたしが最初に思ったのは、久々に、むかしのフランス映画みたいなフランス映画を観たなあということ。

印象でいうと、ルネ・クレールの映画みたいなんですよね。『巴里祭』とか『巴里の屋根の下』あたりのね~(因みに両方とも1930年代の映画です。)。あるいは、監督が違うけど『天井桟敷の人々』あたりも近いかな~。

つまり、おそらくセットで作られたであろう、「古きよき時代のパリ(本当は「巴里」と書くべきかな?)」って感じの映画になっているので、古い映画好きの方には雰囲気だけで充分楽しめるんじゃないのかな?

また、撮影当時二十歳くらいだったらしい、ノラ・アルネゼデ-ルという女優がなかなかキュートでよいんですよ。彼女はわりと現代的なルックスだったりするから、『アメリ』なんかが好きなひとにもよいかもしれませんね~。

で、ちょっと面白いのは、最近のクリント・イーストウッド作品で撮影を担当しているトム・スターンがこの作品のカメラを回していること。

映画冒頭で、パリの街の俯瞰からシャンソニア劇場の外観を写しながら、カメラが路地に降りて劇場内へ、そして客席から楽屋裏までを手持ちカメラのワンカットで撮っている画面には、映画的な興奮を覚えましたね~。

全般的に、時代物らしいくすんだ色調もよいし、画面的にも映画らしい映画だと思います。

また、歌の場面には、ハリウッドのミュージカル映画『バンドワゴン』を思わせる軽快感もあって、結構楽しめます。

ただ、この映画がいかにもフランス映画だと思ったのは後半の展開。

ハリウッド映画だったら、単純にハッピーエンドで終わりなんでしょうが、時代の傷痕というか、ちょっとほろ苦い終わり方をするんですよね~。(ネタバレしちゃあ悪いので、これ以上書かない!)

たぶん、ヨーロッパ文化って、「たんなるハッピーエンドは大人の鑑賞に堪えない」という感覚なのかもしれないなぁ~。

というわけで、オススメします!

・公式HP

PS:そういえば、プロデューサーのジャック・ペランって、むかしアンナ・カリーナの浮気相手だったんじゃなかったけ?まあ、ゴダールよりはよい男だしね~。

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2 コメント

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クラシック仏映画 (Obeone)
2009-09-21 20:36:30
僕が見たクラシックなフランス映画の多くはアメリカ映画、日本映画とは違った部分を主に表現していることが多いような気がします。
深く心に響くというより新しい光を袈裟懸けされるような気持ちになります。
コメントありがとうございます。 (切られお富)
2009-09-28 22:11:40
コメントありがとうございます。

戦前の日本映画が歌舞伎や新派など演劇の世界と密接な関係にあったのと同様、フランス映画もフランスの演劇界と深い関係があったんじゃないかって想像しますね。

あるいは、この映画みたいな劇場文化とか。

でも、今では国柄を示す映画って、どこでも低予算映画の枠でしか作れていないような…。特に日本がひどい気もします。

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