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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『集中力』

2005年12月07日 | Book
 『集中力』という本を読みました。棋士の谷川浩司さんがこれまでの将棋の人生や勝負に挑む際の心構えなどを書いたものです。

正直に言えば彼が勝負に挑む際の心構え、考え方などを述べた本の中心部分はほとんど頭に残りませんでした。ただそれは、おそらく当たり前のことを書いていたからで、しかしその当たり前のことをちゃんと実践できているところが谷川さんのすごいところなのだと思います。

僕は将棋のルールを全く知らないし、習おうと思ったこともありません。そういう人にとっては将棋の世界の一端が垣間見えて、そういった部分で興味深い本でした。

日本の将棋人口というのは増えているのか減っているのか、それが話題になることもないですね。話題にならないということや、困窮する棋士の生活というのも聞いたことがないので、状況が変わっているわけではないのかもしれません。四段以上であれば協会か何かから給料が支払われて生活が保障されるそうです。ただ、その域に達すること自体がじつは大変なのでしょう。

ひとつ気づいたのは、谷川さんが羽生さんと本格的にプロとして対戦するようになったのは30代からであり、それに対して羽生さんは20代だったということ。二人はライバルとしてとらえられているし本人同士もそう認めているけれど、二人の8年という年齢差は最初は決定的だったのではないかと思わされます。

谷川さんが言うように20代の人は仕事に対してとにかくガムシャラに取り組むと思います。悪く言えば視野が狭いし良く言えばひたむきです。

谷川さんが羽生さんと対戦するようになったのは、そのガムシャラだけではやっていけないと精神的に感じるようになる30代だったのに対し、羽生さんはとにかく突っ走る馬力・体力がある20代だったのは、二人の対戦にとって決定的だったのではないかと思います。

ただガムシャラに突っ走り四冠を達成した後、おそらく谷川さんは、年齢的に大人になり精神の変化を体験することで、技術を極めることだけに専念することに一種の空しさも感じたのではないかと思います。勝ちたいがただ突っ走るだけの勢いもない、そういう状況です。そういうときにとにかくしゃにむに走る力がある二十代の羽生さんと闘うのはつらかったと思います。

技術だけでは30代・40代になってもトップ棋士でいることはできないと谷川さんが言うのは、そういう自身の経験がベースになっているのでしょう。

谷川さんと羽生さんがまったく同じ世代なら、二人の戦績も違ったものになったのかな、と思わされました。


涼風

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