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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

倫理 『人間性の心理学』

2005年09月26日 | Book

マズローの古典的名著『人間性の心理学』の中に「倫理」について述べたカ所があります。でもそれは、意外にも、通常わたしたちがいだく「倫理」を批判したものです。彼は次のように述べています。

「明らかに「倫理性」というものは、多くの非受容とか不満足に由来する付随現象である。多くの問題は、異教徒をも受容するような雰囲気の中では不必要であり、次第にその存在は消失していくものである。それは、問題が解決されたというより、それは最初から本質的な問題ではなく、病人が作り出したものであり、ある肉は食べるが他のは食べないといった程度にすぎないのである。

 この発見を深く追求した結果、私は、道徳や倫理や価値として通っているものの多くが実は平均的な人々にしみこんでいる精神病理上の用もない付随現象だということを教えられた」(259頁)。

つまり、マズローからみれば、「倫理」とは、わたしたちが生きていくうえで自分の保存を正当化し、自分を脅かすものを排除するための一つの防護壁あるいは剣にすぎません。

心理的に不健康な人々にとっては、この世界はジャングルであり、「彼が支配できる人々」と「彼を支配できる人々」によって構成されていると思い込んでいます。そのような「世界」に生きる人々は、自分の保存を維持するために、「客観的」な「倫理」を作り上げ、他者を攻撃します。

こういうことは前から私は気づいていたし、しかしそれでも中々ふりほどくことが難しいわたし自身の癖です。たとえ現実には有効ではなくとも、というより現実には有効ではないからこそ、心の中で「倫理」を保持することで、心の中でだけは自分を守り、他人を攻撃することができるからです。しかしそうすればするほど、私は自分の住む世界を野生のジャングルにしてしまい、危険に満ちた世界でおびえて暮らすことになります。

こういう人間の心性を指摘したのはニーチェですが、しかしマズローからすれば、そのニーチェ自身がもっともこの罠にはまり込んでいたように映ったのではないかと思います。


涼風

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