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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

処罰 『竹中プランのすべて―金融再生プログラムの真実』

2005年09月08日 | Book
『竹中プランのすべて―金融再生プログラムの真実』という本があります。もう2年も前の本ですね。木村剛さんが竹中さんの「経済政策」の重要性を解説したものです。


この本を読むと、基本的に竹中さんがやろうとしたことは悪者の成敗という個別的な正義の行為であって、やはり日本経済全体の活性化というものは視野にはなかったのかな、と思わされます。

この本で木村さんは、日本の銀行経営がいかに腐敗していたかを鋭く衝きます。80年代から大企業が資金調達を直接金融つまり株式発行によって進めたため、銀行の収益源は中小企業への融資へと90年代にシフトしていきました。

しかしバブル時代の無理な貸付の影響もあり、銀行がかなり強引に中小企業から取立てを行い、融資プランどおりに経営し利息はもちろん元本をも返済し続けている優良な中小企業ですら、その資金と担保にしていた権利を銀行に奪われ、倒産に追い込まれていくケースを木村さんは指摘しています。

そのような不条理な取立ての原因は元来は銀行側の無計画なバブル融資にあるのですが、そのことによる銀行の損失は公的資金の投入によって賄わせ、銀行の取引先となった中小企業はその経営状態にかかわらず銀行の取立てにより90年代に倒産に追い込まれていきました。

このような銀行の経営陣と財務省の役人との癒着なども木村さんは指摘し、そのようなヤクザな人間が徘徊する場で独り「ファイター」(原文より)として闘っているのが竹中さんだというのが木村さんの指摘です。

そのように現実と闘う竹中さんに対し、多くの評論家は机上の空論を述べて竹中さんを批判しているが、実際に「リング」に上がれば彼らは簡単にノック・アウトされるだろうと木村さんは繰り返し主張しています。


竹中さんの行った経済政策で、その効果はともかく、「不良債権の処理」というのは理屈のある政策です。過剰な貸付で資金ショートを起こしている金融システムを建て直すため銀行に健全な経営を迫るというのは、その言葉だけを取れば、適切か不適切かを別にすれば、一つの選択肢にはなります。

その是非をここで僕は述べることができないけれど、一つ言えるのは、竹中さんの経済政策の発想というのは日本の旧来の経営体制にある悪い部分をなくすという、とてもシンプルなものだということですね。経済政策というより、監視と処罰というニュアンスです。つまり、日本の経済全体の方向性を考えると言うよりは、目に見えて悪い部分を強引にでも除去するということです。

それゆえに、不良債権を抱えた銀行の国有化をすすめても、それを自力で再建するという地道な行為の主導権は握らずに、アメリカの資本に格安で売り渡すという事態が起こっているように思いました。

本来であれば、経済政策は、論理的に最適な経済効果をもたらす選択肢を考えるものですが、竹中さんの発想は、マクロな影響の論理的考察ではなく、「悪者を処罰する」という勧善懲悪的な漫画的ヒーローの行為に近いように思います。

まず自由競争の前提条件を作ることが彼の意図であり、それが結果的にどれだけの影響を経済にもたらすのかについては、論理的には考察していないような印象が僕にはあります。


涼風



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