歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

妻を愛す(雑誌ネタバレ含みます)

2008年02月27日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
雑誌ネタバレ含みます。










ああ、そうか。
ブラッドレイがマスタングにとどめを刺さなかったのは。
ラストVSマスタングで、マスタングが辛くも勝利した後、叫ぶように彼の名を呼ぶホークアイを、ブラッドレイは見ていたからだ。
あの時、抜き身の刀を手にしながら、ブラッドレイは出て行かなかった。
それはホークアイの涙に、心揺り動かされたから、なのかもしれない。
そこに、例えば、あこがれを見たのかもしれない。

自分の足元を脅かす若い存在、マスタング。
彼を愛するホークアイ。
だから彼は、ホークアイに、本心を語った。

彼女を通して、本当は妻にそれを語りたいのだ。
貴女の立場も、息子も夫の存在も、すべて作り物だ。けれど、貴女を想う私の心だけは、本物なのだと。

その、本物の心こそ。
ブラッドレイの「人間」

ヒューズの葬儀で、手が震えるほど腹が立ったのは。
妻と娘を置いて簡単に死ぬ、人間の弱さに?
それとも、自分が死ぬ時にあのように泣く人はいないという確信に?
あるいは、妻が死んだとき、私はあのように泣くのだろうかという怖れに?

ブラッドレイにとって、ホークアイは、妻の分身。
だからホークアイを守るかもしれない。
あるいは、だから、ホークアイを使えば、焔の錬金術師に真理の扉を開けさせることができると、確信しているのかもしれない。

ホーエンハイムは、永遠の時を生きる仙人のような幽鬼のような人生から、トリシャという女性によって、人間として生きることに目覚めた。
男が女を愛する。
それは、人間として生きる、ということなのかもしれない。

神になろうとしている「お父様」に、妻がいないのは、当然のことなのだ。
男と女がつがうことを、最初から理解できなかったフラスコの中の小人は、人間になる日は来ないのだろう。

ブラッドレイは、何者だ?
彼は、己を含めた全存在への憤りと、人造人間である己への誇りと、人間の手による制裁と、老いへの諦めと、愛する心を持っている。
彼は人間だ。
だからつかみきれない。
彼は、どう動くのか。
彼の救いは何なのか。救いを必要としているのかさえも。

いくらでも、考えることができる。
深い物語。深いキャラクター。
だから私は、「鋼の錬金術師」が大好きだ!


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6 コメント

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感動しました! (HIRORI-1819)
2008-02-28 02:43:02
歌猫様の心情読み取りは本当にスゴイですね!すっかりブラッドレイに興味をかきたてられました。

勝手にホムンクルスにされ、彼が人生で唯一選べたのは妻だけ・・本質的には彼は被害者でもあると思います。

お父様の計画が妻をも奪おうとした時、彼は何を考えどう行動するんでしょう?あー面白過ぎますね!

三月号のホークアイのなんとも言えない表情、気持ちがわかる気がしました。
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コメントありがとうございます (歌猫)
2008-02-28 08:40:18
HIRORI-1819様こんにちは!

ブラッドレイは一番謎なキャラだと思います。

ホーエンハイムは朴訥で不器用なただの男だと明らかになったし、「お父様」は全知だが全能ではない傲慢な子供で、プライドはその縮小再生産だと私は思っています。

でもブラッドレイだけはわからない…。多分誰よりも複雑なキャラ。

それが物語の行く末に立ち塞がっている。だから ここまで来てなお、鋼は先が読めない!

本当に鋼は面白いですよね!

コメントありがとうございました♪
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こんにちは~! (のわこ)
2008-03-08 17:59:03
歌猫さん
こんにちは!
最近ブログが(というかネット生活自体が)おろそかなので、今週末一気にお気に入りブログ様をご訪問させていただいているのですが。

>ヒューズの葬儀で、手が震えるほど腹が立ったのは。
妻と娘を置いて簡単に死ぬ、人間の弱さに?
それとも、自分が死ぬ時にあのように泣く人はいないという確信に?
あるいは、妻が死んだとき、私はあのように泣くのだろうかという怖れに?

うおおー!すごい!何かストンときました。
今日実は貸してあった鋼13-18巻が帰ってきて、読み直していたりしたんですが、大佐と大総統のやり取りなんかも、何度も読むと実に奥深いと言うか、そこからここへ繋がるか!といった感じで。
中尉との、今回の話も、若干唐突かな、と思ったりしてはいたんですが(それよりも大総統かっこよすぎてヤラレタ)、そっか、そういう引きがあってのこの場面なのね(10巻ですよ!そのシーンは)。
荒川弘もすごいけど、歌猫さんもすごいです(今更ですか;)
たまーにしか来られないのですが、また面白いご考察をお待ちしています。
あ、と、別途メールを差し上げようと思っていることがありますので(自ら気になっていてしょうがない・・・けど時間がない・・・)しばしお待ちくださいましたら嬉しいです。
ではでは。
のわこ
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コメントありがとうございます。 (歌猫)
2008-03-10 06:01:55
のわこ様こんにちは!
鋼は読み返すとまた、ああ!とか、おお!とか発見があって、なんてゆーか、瞼の裏がじーんときちゃいますよね・・・!
私は10巻以前を読み返すとエドの幼さが目に付いて「あー成長したなあ!」って思います(笑)作品内時間だと半年かそこらなのに!
大総統の台詞は、どれ一つとっても、もう深くて深くて眩暈がします。
少年は(少女も)真っ直ぐに成長するけれど、大人は一枚一枚覆いがめくれて本当の姿が現れる。(ホーエンハイムもマスタングも)
誰よりも覆いがめくれる回数の多い大総統が、最も大人のキャラクターなのだと思います。だから彼の動向が気になる!!!
コメントありがとうございました♪メールもお待ちしています~vvvv
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あとになって気付いたこと (つみれ)
2008-03-11 22:59:26
ひさかたぶりにやってまいりました、つみれです。
そして残念ながら、ブログとかそういうのはやっていないのであります(泣)喋りたい!語りたい!!と思うことは大いにあるのですが、それを公式に不特定多数の方に見せる度胸は…!!歌猫さまはじめ、自ブログやってらっしゃる方すげえ、と本気で思います。私には…私にはとてもッ!

ところで。
随分たってから突然思い出したのです。
大佐がいっぺん捕まって、大総統と話していたシーン。「あれは弱点にはなりえんよ」って台詞が、その後のプライド判明でああそりゃそうかそうだろうなと思ったもんですが。
大総統、「あれ“は”」って言ったんですよね。てことは「あれ」じゃないほうは弱点になるかもなったかもってことでしょうか!?荒川先生だから、そうかも、なぁ…なんて思った次第です。う~すごいな大総統。やっぱりカッコいいなぁ!

そして、いつも長くてすみません。でもあえてもうひとつ。
私の地元では、ガンガンは早売り。つまり…うふv
表紙でどかーん!ときてしまいました。エドが私を見てる!(違)
まだ中身は見てないのですが、今月は出てくれるかな~?

ホントに長くてすみませ…っ!
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コメントありがとうございます (歌猫)
2008-03-14 08:53:15
つみれ様こんにちは!
>「あれ“は”」
そうですね、そうかも。
逆に、私もまた彼らの弱点とはなりえない、という解釈もできるかもしれない。あとから読み返すと、どの台詞も色々な意味が感じられて、何度も噛み締めてしまいます。
台詞のない場面でも、例えばグリードが溶かされるシーン。ブラッドレイだけ背を向けている。己の選べなかった反逆の道を選び死ぬ兄弟に、彼はどんな思いを抱いたのだろう、とか…。
ところで、ブログは公式でもなんでもない、ただのおしゃべりですよ~!
語りたい?ならもうそれだけで!ブログ、楽しいですよ~。
素敵コメント下さる方の見方や感じたことを、私‘が’もっと読みたいだけなんですけれど!(笑)
コメントありがとうございました!
あ、今月のエドはむちゃくちゃカッコイイですねっ!!
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