歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

人体錬成は可能だ。その先にあるもの。

2005年04月17日 | ◆真面目な考察・・・?
「鋼の錬金術師」◆
単行本11巻収録予定話のネタバレを含みます。
賢者の石と人体錬成についての考察。◆

人体錬成は、可能だ。

アルとエドは、真理の扉の向こうで、母の影を見た。
アルはその手を取ったがために、全身を持っていかれた。

「死んだ人間は、失われた者は再構築できない」
だから人体錬成は不可能なのか?
いいや。違う。
人体錬成は、可能だ。

「思い出した…ボクはあの時」
アルは、「母さん(のようなもの)」(以降、錬成物、と呼ぶ)の中からエドを見ていた。
錬成物はアルの魂によって一瞬だけ生き、拒絶反応で死んだ。
その魂を、エドは右腕を対価に取り戻し、鎧に定着させた。

禁忌とされる人体錬成を行う。
失われた母の、子の、恋人の、かけがえのない者への切実な想い。それに錬成理論のわずかな驕りが、錬金術師に禁忌を犯させる。
扉の中で出迎える影。それは錬成物だ。
けれどその姿は、錬金術師が禁忌を超えて恋焦がれた者の、映し身。
だから、術師はその影に手を伸ばし、その手を取る。
錬成は悲劇に終わる。
残るのは、肉体の一部を持っていかれた血みどろの錬金術師の、魂の抜け殻。
あとは、良くても、人の姿に見えるかどうかの錬成物か。

幸運にもその手を取らずに帰ってきた者が、エドでありイズミでありジュドウだ。

失われた命を取り戻すことは出来ない。
だから、死者の人体錬成は不可能だ。

ならば、生者の人体錬成は、可能だ。

けれど私は今、アルの話をしているわけではない。

人体錬成を行う。
材料を集め構築式を書き、完璧な肉体を作る。
魂は不要。
自分の身体すべてを対価にして、真理の扉を開ける。
影が出迎える。その手を取る。
もしも。
錬金術師が自分自身を錬成するなら。これで成功だ。
力の有る術師が自分の身体と完璧に同じ物を作る。それは不可能ではないだろう。
そしてその中に己の魂を入れるのなら、拒絶反応も無い。

生者の人体錬成は、可能だ。
この時の錬成物=再構築された錬金術師は、ヒトか?それともホムンクルスか?

どちらであっても、この理論で、エドの手足は取り戻せる。手足の質量分だけの材料と、支払う対価があれば。

でも、私は今、エドの話をしているわけでもない。


肉体は魂を求めるもの。(ラスト)
一つの器に複数の魂。(46ことスライサー兄弟)

もしも。
錬金術師が自己を人体錬成する時に、対価として生贄を捧げるなら。
生贄の肉体は対価として持っていかれる。魂は肉体を求める。そこに正に再構築されようとする肉体がある。錬金術師の身体が。
魂が、その手を取るならば。
錬金術師が再構築された時、その身体の中に生贄の魂を取り込むことにはならないか。
生贄が複数なら、複数の魂を。
一万の生贄なら一万の魂を?生贄は人間とは限らない?都市一つ、国一つ、そこに棲む犬も鳥も虫けらもすべて、取り込むことは可能か?

私は、東の賢者の話をしている。

一つの器に複数の魂。
2人くらいなら、可能だろう。5人や10人の多重人格者だってありえる。でも一万の魂は?

一つの器に複数の魂。
ニーナとアレキサンダーの魂は、どうなっていたのだろう。

キメラは錬金術による肉体の融合だ。
ならば錬金術によって魂も融合できるのではないだろうか。
その融合した魂が、賢者の石なのではないだろうか。

その賢者の石を取り分けて、ホムンクルスが創られたのではないだろうか。
「我が魂を分けた息子よ」「生まれた場所へ 我が魂へ還るがよい」
「お父様」の中に、賢者の石がある。
だから、「お父様」は「東の賢者」だ。


人体錬成に賢者の石が必要なのではなく。
賢者の石に人体錬成が必要なのだとしたら。


扉の向こうに行って帰ってこられるだけの力量を持った術師を、人柱と呼ぶ。

扉の向こうに行って、アメストリスの全ての生き物の魂を引き連れ、帰ってこられるだけの力量を持った術師を?
私は今、エドの話をしている。



人柱を使って賢者の石を作る。
それが「お父様」の目的?自身が賢者の石を持っているのに?
目的は石じゃない。その先に、あるはずだ。

ホーエンハイムとトリシャの約束、そこに鍵があるのか?

「ボクたちの今の技術では君を元に戻してあげられない」
「生きて生きて生き延びてもっと錬金術を研究すれば ニーナみたいな」
アルの台詞はもっと深い意味をもつのか?

「完全な人間を作ろうとして」
完全な人間とは何か。
不老不死?ホムンクルスよりもっと、死と無縁の存在?
それとも、女の股から生まれ、ささやかな幸せと不幸せの道をあゆみ、老いさらばえて死ぬ存在か。


人間とは何か。

「ハガレンの根底に流れているもの」、それこそが「その先」を示す答えに違いない。



TB
テーマサロン鋼の錬金術師
ハガレンピープル

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12 コメント

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鋼の錬金術師 (湖南)
2005-04-18 20:31:35
最近午後8時代台は、gooのアクセスが悪いですね。

ここと同じようにシリアス感覚で鋼の錬金術師分析してみました。

TBさせて頂きます。
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今回は (冬子)
2005-04-18 21:56:17
 こちらに感想失礼します。拍手の文字数では足りません!

 人柱、の事に関しては漠然と扉の向こうに行って戻ってくる事が出来る人物とは思ってました。(人柱“候補”と呼ばれていないのは、以前はエドだけでしたよね?)が、こちらはそれに加えて、賢者の石と人体練成、東の賢者に魂の定着、ドミノ倒しのように連鎖的に繋がってゆく様々な事実。

 …ゾクゾクなんてもんじゃなかったです。一瞬、風邪でもひいたかと思ったほどの寒気が走った気がします。こういう考察は大好きなので、歌猫さんのBlogはクセになります!またお邪魔させていただきます。

 それでは、まとまりの無い感想失礼いたしました。
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湖南様TBコメントありがとうございます (管理人)
2005-04-19 06:47:58
湖南様、トラバありがとうございます。

シリアス感覚での「本当の錬金術」から見た「漫画 鋼の錬金術師」考察、感心いたしました……かなり理解に余る所もありましたが……。

私は読み手に知識を要求しない、エンターテインメントとしての漫画という部分を評価しています。だからといって書き手は甘えていなくて、一部のファンタジー作品のように既存のファンタジー(魔法とか)の設定をそのまま使って作るのではなく、きちんと「鋼の世界の錬金術」を規定した上で物語りを描いているところも評価します。ただ「本当の錬金術」を知っている方には相違点が気になるのかもしれませんね。

メジャー作というのは多方面から分析されるので面白いです。



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冬子様コメントありがとうございます! (管理人)
2005-04-19 07:00:34
冬子様、コメントありがとうございます!

「寒気が走った」そのお言葉、本当に嬉しい。

思いついてから書くまで10日間。

どう書くか考えてて、やっぱり私が思いついた展開どおりに書くことにしました。ドミノのように、そう。私の中でもそんな風に、展開していったんです。汲んでいただけて、本望。

自力でこの仮定にたどり着いたことに密かに……じゃなくて、おおっぴらに!満足しています!すげーぞ私(笑)

そしてもちろん、それよりも遥かに遥かにすごいのは、荒川弘先生です。この仮定がアタリかどうかは分からないけど、これだけ考えさせる重さと、その上に乗っかる軽さ。何て上手いんだろう!

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Unknown (れたす)
2005-04-29 11:17:50
こんにちは。駄コメですがひとつ。

>錬金術によって魂も融合できるのではないだろうか。

>その融合した魂が、賢者の石なのではないだろうか。

なるほど。そうなるとキメラやホムンクルスとも密接にかかわってきますね。

こうして精製された賢者の石から生み出そうとしているものが、完全な人間というのも、なんだか変な話。

私は、完全な人間=真の王、をうみだすために賢者の石が作られた、という設定なのかな思いました。でも実験はうまくいかず今にいたる。ちがうか

特別な能力を持った人間のような存在の、ホムンクルスにはない、人間としての本質。

>人間とは何か。

まさしく、根底に流れるテーマですね。

む、難しい。。。
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コメントありがとうございます。 (歌猫(管理人))
2005-04-29 13:55:48
れたす様、コメントありがとうございます。

>完全な人間=真の王、をうみだすために賢者の石が作られた、という設定なのかな

そうかもしれないですね。クセルクセスの時代に。それが失敗して国が滅びたとか。うーん、ありそう。

「お父様」は完全な賢者の石を作ろうとしているのだと思うけれど、その石で「完全な人間」を作ろうとしているかどうかは……私は違うかも、とも、思います。

でもこの先は考察じゃなくて妄想だから、また形になったら書きますね。
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さらにその先は? (真朱薫)
2005-11-15 00:35:15
毎度の事ながらTBさせて頂きました。



12月時点で、さらにその先は?というのを考えたのですが、歌猫さんのように仮説にも至らず、仮説のためのプロセスのようなものになってしまいました。
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考えてしまいます (歌猫◆管理人)
2005-11-15 01:57:09
真朱様こんにちは。

ええもう、12月号があんまりすごいんで、私も考えずにはいられません。

でも連載のスピードから言って、何か結論出る前に、答えが示されそうな気もします。

これでまだ最終回まで間があるっていうのですから、本当に鋼って「良質なミステリー」ですよね!
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すごいです・・・ (KK)
2008-03-25 19:21:13
はじめまして、KKと申します。
19巻の感想から、たどってまいりました。

この時点でここまでストーリー見えていらしたとは・・・。
ただただ、すごいとしか言えません。
最終回に向けての怒涛の展開も
今後歌猫様の予想がどう当たっていくのか楽しみにしております。
まるで、脳みその中をそのままのぞかせていただいたような予想。その書き方だからこそ伝わる推理脳の動きに同調させていただいた気分です。
なんだか、久々にすごく頭の運動になりました。

これからも、感想(コミック派なので、まとめしか追えませんけど)楽しみにしております。

がんばってください!!!
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コメントありがとうございます。 (歌猫)
2008-03-26 07:05:44
KK様、こんにちは。初めまして!
こんな昔の記事にコメントくださって、ありがとうございます!!
はい、この予想は歌猫Blog最大の当たりでした。誇りに思うのは、ストーリー運びからではなく、理屈から、この予想を導き出したことです。
でもこれからの予想はどうかなあ・・・;
何よりすごいのは、これだけの設定や構成を考え出した、荒川弘先生だと思います。
鋼の錬金術師はどうしてこんなに面白いのか、どこが素晴らしいのか、これからも語っていきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
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