歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

「盲目の錬金術師」

2005年04月26日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
「鋼の錬金術師」◆
だから、ロザリーに似た錬成物の中に、ロザリーの魂は無い。


「盲目の錬金術師」感想。
この話、上手い! パーフェクトガイドブック1の、さくさくとおちゃらけた楽しい一冊の最後に、ずん、と、錘のように置かれた話。
暗闇と開く門扉に始まり、閉じる門扉に終わる構成も、上手い。

一番好きな台詞は、これ。
「いやな仲間だけどね」
エドらしい!と思う。苦笑の表情は、自分を突き放しているということで。間髪入れず返すタイミングも。

二番目に好きな台詞。
「お嬢様は…私の理論は完璧だと証明されたのですか?!」
理論は完璧か、と。錬金術師の驕りと業を、端的に示す台詞だなあと。



ところで、ジュドウは手パン錬成ができるのか?つまり、真理を見たのか?という謎があるけれど。
それに対する私の個人的な答えが、白き焔BLOGの記事をきっかけにして形になりました。(リンク記事は「ロイは、手パン錬成について何を知っているのか?」この考察もとっても納得!)
記事引用
「あの人は真理を見てないんじゃないかなぁ。目を持っていかれたから、見えなかったという可能性もあるけど」
あ、そうかも。

イズミの台詞。「『あれ』を見たのか」
見る=知る だから。
「作り出す」=錬金術は必ず「手」で行われるように。
(破壊するのも燃やすのも、手)
「立ち上がる・前へ進む」を「足」に象徴するように。
(だからパニは手ではなく、足)
「知る」は「目」。

ジュドウは目を持って行かれたから、きっと、真理を見て(覚えて)いない。だからきっと手パンはできない。
と、私の中では帰結しました。



ジュドウひとりを池の中央のあずま屋に残して夫人とエドは屋敷に向かうけれど、あれはジュドウを隔離する行動。門への広い石畳でさえ杖と執事の誘導が要るのだから、あの細い道を池に落ちずに1人で歩くことは困難だろう。そしてその危険を冒す必要も無い。後で誰かが必ず、迎えに来るのだから。

「あの子が錬成の結果です」
結果、なんだよね。錬成で生まれた、とは言わないんだ。
「娘の名で育てる孤児」という結果。

ミイラの髪を、身代わりの少女が大切に漉く。
構図だけ見ればホラー。なのに、ホラーのようなおどろおどろしさが無い。
それは少女、エミが、全てを知っているから。
そして恐ろしさ、は、既知のこと、目に見えること、に有るのではなくて。

あの中にいるのがロザリーであろうと無かろうと、エミは「本当の子供」にはなれない。
なぜなら、ハンベルガング氏も夫人も執事も使用人も、エミも、あの中に宿る魂がロザリーのものであって欲しいと願っているから。
皆が願っているから、あの中にいるのはロザリーなんだ。

でも私はもう、あの中にロザリーの魂がある、とは、考えられない。
きっと錬成に巻き込まれたハエか何かの魂だ、としか。
残酷な話。

でも、エミは不幸じゃない。不幸か幸福かは本人が決めること。アルが自分を不幸だとは思っていないように。そして死んだロザリーも不幸じゃない。

最も不幸なのは、錬金術師としてのジュドウだ。
ハンベルガング家の家族、としては幸福であるけれど。
真理からも真実からも目を塞ぐ。彼はもう錬金術師ではない。

「みんないい人だね」
アルはロザリーと呼ばれる錬成物に自分を見ただろう。もしかしたら、そうなっていたかもしれない可能性を。
「だけどみんな救われねえ」
そしてエドはジュドウに。

柔軟なアル。純粋なエド。


「盲目の錬金術師」という題はもちろん、身体的なことだけを言っているのではなく。
  【盲目】 (名・形動)[文]ナリ
  (1)目が見えないこと。
  (2)理性や分別をなくして適切な判断ができない・こと(さま)。

禁忌を犯した錬金術師は皆。

本当に、荒川先生は容赦が無い。そして、上手い!


TB
テーマサロン鋼の錬金術師
ハガレンピープル

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2 コメント

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Unknown (れたす)
2005-04-29 11:22:03
【盲目】

(2)理性や分別をなくして適切な判断ができない・こと(さま)。

そうか、事の真相にもまた盲目が当てはまる、二重の意味だったとは。いわれてやっと気付きましたorz
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そうなんですよ。 (歌猫(管理人))
2005-04-29 14:02:29
れたす様こんにちは。そうなんですよ。

外伝で、本編の根幹ともいえる「人体錬成」をテーマに描く。その題が「盲目の錬金術師」。

すごいな、と思うのです。
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