スカーの兄は生きている

スカーの兄は生きていると思う。

第一に、死の描写が無い。
「死」以外ありえない状況を描いてはいても、「死」そのものは描いていない。
背表紙さえも！

第二に、誰も「死んだ」とは言ってない。
殺人大好きキンブリーでさえ、スカーの兄が「苦悶していた」としか言っていない。つまりその死は見ていない。
もちろん、７巻の師父の台詞「兄が悲しむぞ」が、生きている兄を指しているとも思いませんが・・・てか、そうだったらあの師父、超！意地悪野郎じゃん（笑）
それに、師父も東部に来て初めてスカーの復讐を知ったのだから、兄がどこかで生きていて、けれどスカーの悪行を知らないことだってありえる。

第三に、兄は「再構築」の左手を持っている。
錬丹術の流れをくむ術なのだから、怪我を治すこともできるはず。

そして最後に、スカーの本名。
いつか明かすから、今は出さない。
じゃあ誰が明かすのか。
彼の兄しかいないでしょう？


スカーはエドの陰。
（他にあんまり強烈なキャラが多いから、対比がぼやけてしまったけれども。２巻登場時の描き方から、それは間違いない）
彼らはともに「ロックベル医師」に命を救われた。
スカーの右手は破壊、エドの右手は創造。共に人間の行いの表裏。
弟を取り戻したエドは全てを取り戻そうとして、兄を失ったスカーは全てを滅しようとする。
「生きる」道を進むエドの未来には間違いなく幸福が待っているけれど。
「殺す」道を進むスカーに未来は無い。

兄に己の名を呼ばれたとき。
スカーは神より賜った名を捨て全てを捨て、兄と仲間の復讐のためだけに生きた意味を失う。
スカーは救われ、そして打ちのめされる。


生き別れの兄弟、というベタベタな設定！だけど、きっと荒川弘はお約束も大好きv
そしてお約束を超えるドラマを描く力を持っている。

スカーの兄は、片腕の人間として生きているのか。
あるいはアルのように、あるいはキメラのように、人間とそれ以外のモノの狭間で生きているのか。
彼がいつ現れるのか、彼の左手は何を生み出すのか、それは物語の中心軸である賢者の石とどう関わり合うのか。

スカーの兄は生きている。
だから、いよいよこれから面白くなるのです！


09.6.1追記
先日発売された「キャラクターガイド」で上記仮説は否定されてしまいました（汗

これ書いた頃は、スカーの未来は死しか無い、と思ってた。
でもその後、彼は彼の歩む道を見つけた。（キャラから人へ、そして２１巻へ）
スカーの未来はすでに明るい。だからもう、兄を必要としないのでしょう。

スカーは、自ら、己の名を名乗るのでしょうか。
うん、その方がきっといい。物語にとっても、スカーにとっても。