お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

ミス・アメリカはファンドレイザー

2011-01-24 | from Silicon Valley

TV放映権をもつABC局はウォルト・ディズニー社の配下。そのせいかイベントの中にはディズニーランド訪問も。ミス・アメリカに負けないセレブのミニーマウスは、宣伝に一役買っています。

ミス・アメリカ2011の栄冠に輝いたのはネブラスカ州出身のテレサ(Teresa Scanlan)。大学を卒業してからは法科大学院に進学して裁判官か政治家になりたいと希望している大学一年生です。17歳!での快挙というので、最終コンテストが催されたラスベガスの会場は大いに湧きかえりました。というのも、1921年の第一回コンテストでミスの栄冠を手にしたマーガレット(Margaret Gorman)の「15歳でのミス・アメリカ受賞」以来、90年にわたるコンテスト史上最年少の記録を打ちたてたからです。

テレサは受賞後1年間は大学を休学してミス・アメリカとしての活動に専念します。ミス・アメリカの仕事は、広いアメリカ全土をカバーして、要請があったところには文字通りどこにでも出かけて行ってコミュニティサービスや地域密着型のビジネスの振興に協力するという活動です、これは言うは易し、でも決して楽な仕事ではありません。求められて一日市長を務めるために何マイルもの距離を移動します。ミス・アメリカの移動距離はは毎月2万マイル(1マイル=1.6Km)を超えると言われ、しかも1カ所での平均滞在は24時間から48時間が限度だそうですから、1年間ずっとほぼ"毎日が旅"の暮らしになるわけです。美しいだけでなく、タフでなければ!とうてい務まりませんね。

さて、2011年のミス・アメリカとなってテレサが栄冠(シャンデリアにきらきら輝くティアラ!)とともに手にしたのは5万ドルの『奨学金』です。今日のアメリカではビューティコンテストはただの"美人コンテスト"ではなく、「才能と志のある若い女性を見いだすための機会であり、それら若い女性を"育英する"ための機会である」と考えられており、またそのようにはっきりと銘打たれています。ですからコンテストで競われるのは容姿だけでなく、才能であり、将来の職業人・市民としての資質。そして、だから入賞者に手渡されるのは『賞金』ではなくて『奨学金』なのです。

「だって"水着審査"でしょ? やっぱりただの美人コンテストじゃないの!」の声が聞こえそう。確かに審査ではビキニの水着(ただの水着じゃありません、ビキニです!)とイブニングドレスで容姿とフィット(鍛え方)をしっかりチェックしますが、審査はそれだけにとどまりません。候補者たちは特技を披歴することを求められ、さらに政治・経済や時事社会問題についての意見を求められ、現代社会の諸問題についてきちんと理解し、見識を持っているか、それらさまざまな問題に対して"自分の意見"をきちんと持っているか、さらに自分の考えや意見をきちんと表明できるかも審査の対象になるのです。

加えて、これは日本ではあまり知られていないようですが、1984年以来、ミス・アメリカに応募する際には候補者たちは自分にとって最も重大な社会問題を想定し、その解決のために自分は何をするか(したいか)をプレゼンテーションすることよう求められるようになりました。応募資格に、社会問題の解決あるいは社会変革のためのチャリティまたはボランティア活動が付加されたのです。

2011年ミス・アメリカのテレサが選んだテーマは拒食症や過食症などの「若い女性の摂食障害」の問題への取り組みです。テレサは、摂食障害は彼女らのジェネレーションにとっての重大で危機的な問題であり、一日も早く解決されるべき課題と考えています。テレサは向こう一年間の活動を通じて折に触れ、機会あるごとにこの問題についての講演や情報提供を行って社会の啓発につとめ、さらにこの問題の解決のための研究開発、臨床治療の充実、患者の救済などのための募金(ファンドレイジング)を行います。

ミス・アメリカのチャリティ活動は、こうした彼女自身の個人的な関心領域にとどまりません。ミス・アメリカの主催団体は世界中の小児病院に資金を提供している国際財団であるChildren's Miracle Networkと提携しており、歴代のミスはこの団体のためにファンドレイジングを行うことになっています。ミス・アメリカの公式ホームページには、トップページの目立つ位置にドネーションのボタンがあり、オンラインでの寄付を受け付けています。加えて訪問先の各地でも、講演のたび、イベントの機会ごとに、実情を訴えて寄付を呼び掛け、かくしてミス・アメリカが調達する資金は毎年数ミリオンダラー(日本円で数億円)に上ります。

ミス・アメリカは文字通りのチャリティ・ファンドレイザーなのです。




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