お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

アーティストと旅する絵本

2010-11-11 | about 英語の絵本

Anno's Journey

アーティストが創った絵本としてぜひご紹介したいのは、日本の絵本作家である安野光雅の「旅の絵本(Anno's Journey)」です。

美しい絵本です。どれもなにげない風景なのに、いくら眺めていてもあきさせない魅力があります。アーティストにとり「旅はインスピレーションの源泉」といわれますが、その旅をそのままシリーズの「絵本」にした作家は多くありません。見開きページいっぱいに広がる風景は、実在の風景や人物に、画家自身のさまざまなアイディアを加味してふくらませた作品になっていて、画面の中にいくつもの物語が展開していて、それぞれ読者に語りかけてきます。

旅の絵本は、安野自身のスケッチ旅行でのスケッチがもとになっ他シリーズです。1978年から79年にかけて世界各国で(デンマーク、フランス、オランダ、イギリス、アメリカなど)相次いで出版されましたが、1984年にはこの絵本シリーズに、児童文学に与えられるもっとも権威ある賞といわれる『国際アンデルセン賞』の特別賞が与えられています。

アーティストはどんなふうに旅をするのでしょうか? 安野はインタビューに応えて、初めて海外旅行に行ったときの経験をこんなふうに語っています。

「初めて海外に出るまでは、文化の差というのはずいぶん大きいだろうなと思っていました。ところが実際に訪ねてみると、違うことより同じことのほうが圧倒的に多いと感じたんです。しまいには、違いというものはほとんどないんだとまで思うようになりました。たとえば世界のどこに行っても、基本的に、家には外を見るために窓がついているし、雨が流れるように屋根が尖っている。食べるものも、われわれが絶対に食べられないものを彼らが食べているわけではない。そういうふうに考えると、言葉や肌の色などの違いは確かにありますが、頭の中で考えていたほど、文化の差はないのだと思っています。」

さすが!と感じたのは私だけでしょうか。私は、これを読んで、なるほど、アーティストの「視点」というのはこういうものか、「対象の『本質』をつかむ」とはこういうことなのか、と思わず納得してしまいました。

安野は国際社会で絵本作家としての地位を確立した数少ない日本人作家です。今年アメリカで出版された「アーティストからアーティストへ(Artist to Artist)」という23人の絵本の挿絵画家を集めて紹介した本(エリック・カールの絵本美術館が出版した本)にもABC順で一番最初に安野が紹介されています。

改めて言うまでもなく、日本には、安野以外にも優れた絵本作家がたくさんいます。でも、残念なことに、国際的な場でしかるべく高く評価されている作家は多くありません。挿絵画家も、作家もです。安野野評価は、彼がは早い時期海外の出版社から著書を刊行していることと無縁ではないでしょう。また、言葉のない、絵だけで勝負できる絵本であったことも、言葉の壁を乗り越える上で強みになったものと思います。

私は、日本の絵本は素晴らしいと思っているので、日本の作家たちがもっと海外に知られてほしい、と思います。




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