クリニック便り

尾道市にある小児科・眼科のクリニック,宇根クリニックより。
クリニックホームページの別館です。

予防接種あれこれ~揉む揉まない

2009-12-02 22:59:30 | ワクチン関係
予防接種を受けたあと、

「お風呂入ってもいいですよね」 

「揉んだほうがいいですか」 


と聞かれることがあります。


お風呂については、昔の予防注射は打ったあとに熱が出ることがあったうえ、
以前の日本では「熱い湯に長く」つかる傾向があり、「体の負担になる」ということで問題とされ、入浴を控えるのが一般的でした。今では、ワクチンそのものも改良され、発熱するケースも少なくなったため、当日の入浴は全く問題ありません。




揉むか揉まないか・・・

私(女の先生)は、
「揉まなくていい」
と習ったものですから、問われれば
「揉まなくていいですよ」と答えます。

でも既にもみながら
「もんだほうがいいんですよね」
という患者さんには
「強くもむ必要はありません、軽くね」
とお答えすることにしています。
このように、打った直後にもみ始める方もたくさんいます。

なぜ注射(予防接種)=揉むという意識があるのでしょう?

大人の方の解熱剤の注射や、胃の検査の前の胃腸の動きを止める注射、最近では小児科ではほとんどないのですが、以前は熱を出したら、痛い注射を打ってもらった、そんな記憶のある方は一定の世代以上の方には結構いるのでは?

これは筋肉注射と言って1~2ccの薬剤を筋肉に注入するので、あとからしこりにならないよう
「よく揉んでください」
という指示を
出さなければなりませんでした。その指示が今でも根強く残っていて、
習慣となっているのでしょう。

でも、予防注射は「皮下注射」と言って、筋肉には入れません。
だから揉まなくてもいいのです。接種した場所を強く揉むことによって、
皮下組織がダメージを受けることも。これによってワクチンが
急速に拡散したり、血管内に侵入したりして局所反応やアナフィラキシーの発生頻度が高まると考えられています。



注射のあとが赤く腫れることがありますが、

これは揉まなかったせいではなく、
ワクチンそのものに対する反応の可能性もあります。
いろんな予防接種ありますが、そのなかで腫れたりしこりができやすいのは、三種混合、インフルエンザが多いように思います。これらのワクチンにはアジュバントという、免疫効果を強めるものが配合されています。これが赤みや腫れをおこすのです。

さほどひどいものでなければ、そのままで自然に引いていきます。赤みや痒みが強いようなら、冷やしてあげたり、お薬を使うこともあります(虫さされに使うようなお薬です)。

実は、注射をした場所を揉むか揉まないか、小児科医のなかで意見の分かれるところです。
いろんな病院の先生によっては、今までの慣習で、「揉まないで」とは言わず、
「軽く揉んでおいてください」と言われることもあるかと思います。

そして、実際、うちでは2人いる小児科医が
「男の先生はもみなさいといった」
「女の先生はもまなくていいといった」
ということがあります、それくらい小児科医の中でも意見の分かれるところです。

注射部位をもむことの効果は、
局所の痛みを和らぐような感じ、
軽く揉むと液の吸収がいいとか、
揉んだ方が気がまぎれるという心理的な効果もあるし、しこりも少ないかもといわれています。

しかし、揉む揉まないでしこりの程度・期間は実際のところ、証明されてないし、 
「揉まない」そのように習ったものですから
私、女の先生は今日も
「揉まなくてもいいですよ」
と答えています。

しかし、


風呂も昔は入っちゃいけなくて、はいれるようになったし、
また、時代が変わると次は再び「揉む」が医学的に主流になるかもしれません。




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