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うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

遙かなる虹の大地―架橋技師伝  葦原青   うな

2013年03月31日 | 読書感想
魔法のような手法で即席の橋をわずかな時間でつくりあげる架橋技師。彼らの技術は戦争にも利用され、帝国に繁栄をもたらしていた。
伝説の技師でありながら追放された師の汚名を雪ぐために架橋技師となったフレイは、護衛騎士のレオと共に前線へ出向するのだが……


鋼の錬金術師!鋼の錬金術師じゃないか!
と思わずいってしまいたくなるほどにインスタントに橋をポンと作る設定だが、いざ主人公を見ると、美形なのに向こうっ気が強くてトラブルメーカーというあたりこれがもうエド!エドワード・エルリックさんじゃないですか!とまた言いたくなってしまったが、いやいや落ち着いて周辺の人物に目を凝らせば護衛の騎士は幼なじみで素直で実直でってアル!アルフォンス・エルリックさんじゃないですか! いやいや、一度そう見えたからって無理にそう結びつけるのはよくない。ほら、後半に出てくる養父の師匠なんて、老人なのに頑健な肉体で功績のわりに口が悪くて頼りになってホーエンハイムさん!ヴァン・ホーエンハイムさんですよね!? という気持ちになって、うん、まあ鋼の錬金術師ってことで良いと思う。

それはさておき、「即席の橋を作る」という技術が文化や戦争にまで応用されているという世界観は面白い。たしかにその技術があるだけで文明の在り方はまったく変わるだろう。……そのわりにはわりと文明レベル的には普通の中世ファンタジーなのがどうも納得いかないような気もするんだが。
主人公が橋フェチなのも面白いし、人物配置は丁寧で細かいところまでよく考えられている。
戦争の中で架橋技師がどのような役割を果たし、どのように普通のファンタジーでは有り得ないような橋ならではの方法で物語を変えていくのか、興味をそそった。

が、どうも登場人物はやたら多いせいでシンプルなストーリーのわりにやたらごちゃごちゃしているし、せっかくの架橋技術もあまり有効に戦争や物語を動かしているとは思えなかった。どうも戦争部分と架橋技師部分があまりうまくつながっていないように感じたんだなあ。「橋をかける」ということに焦点をあてた設定だけに、それがどこまで大胆に物語に関わってくるのか期待しすぎていた感がある。話としては破綻なくまとまった丁寧な話ではあるのだが、設定のユニークさを活かしきれてはいなかったと思う。
また文章がやや平坦で、橋を作る場面にしろ戦争の場面にしろラスボスとの戦いにしろ、その他の会話シーンと同じようなテンションとテンポで進んでしまうので、気がついたら終わっていたような肩透かし感があった。

せっかく設定や焦点がユニークなんだから、物語をもっとすっきりさせて橋の魅力を詰めこんだ展開にして欲しかったなあ。


遙かなる虹の大地―架橋技師伝 (C・NOVELSファンタジア)
クリエーター情報なし
中央公論新社
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