右近の日々是好日。

障害者グループホームで働いています。

「意思」

2024-07-25 21:12:20 | 私の支援論
 相手の意思を尊重すること、相手の意思を実現すること、は大事なことです。でも、実際には、相手の意思を尊重すること、実現することはできていないことが目立つ。


 自分と相性が合わない人には、自分の意思を言えない、言いたくない、という気持ちが働くことがあります。でも、相性が良くなくても、支援の必要があることがあるし、支援を受けざるを得ないことも、あります。支援のやり方や、気配りの技法について、一つひとつ、話し合い、考えたり、共有したりすることが大切、ではないでしょうか。


『社会福祉士』第28号(公益社団法人日本社会福祉士会、2021年)に掲載されているI氏の研究ノート「認知症高齢者の介護現場における「意思決定支援」の現状と課題-高齢者施設における介護福祉士の聞き取り調査から-」では、認知症高齢者に物事の判断を行う意思があることを認識した上で、支援のための資源を用意し、実際の支援における工夫や努力をしていくことが大切だと論じられています。


 相手の意思を尊重することは、自分の意思を尊重することです。一方、相手の意思を尊重することは、自分に負担をかけること、でもあります。相手の意思を尊重したり、実現することができて嬉しい、という感情や論理と、相手の意思を尊重し、実現する努力を負担したくない、という思いや気持ち、に向き合いながら、相手への支援を続けていく。


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「目標」

2024-04-06 20:52:56 | 私の支援論
 日本社会で生きる人間は、目指す目標が見出せない状況のなかで、当面、自分の仕事や生活を成り立たせることが求められるという、苦しい状況にあります。どうすれば、良いのでしょうか。


 目標が見出せない、ということは、目標を設定して、目標を実現するために努力しても、自分が生きる状況を改善できる、という見通しを持つことが困難だ、ということでもあります。一方、目標を設定して、目標を実現するために努力をした方が良い、という論理は、社会に存在しています。


 A氏の『福祉の哲学 改訂版』(誠信書房、2008年)では、社会において目指す目標が見失われている状況に対して、人間の要望に応じる社会としての、福祉社会を生み出すことが大切だと論じられています。


 自分が目指す目標を持つこと、自分の要望を表現すること、は、関わりを持っています。自分の目標があることによって、自分はこうしたい、自分はこうしてほしい、という要望を表現することが可能になる場合が、あるからです。一方、自分の意欲が低下すると、目標を持つことや、要望を表現することが、困難になることがあります。相手の要望を聞き取り、他の人間の協力も得ながら、要望を実現していくための実践が、求められています。

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「要望 その2」

2023-11-27 23:15:14 | 私の支援論
 自分も、相手も、切実な思いを抱えることがあります。ですが、思いの切実さというものは、なかなか伝わらないこともあります。切実な思いに向き合ったり、受けとめたりするすることを回避しようとする意識が、働くこともあります。


 自分の思いというものは、なかなか言葉にならないことがあります。思いが言葉にならない、ということは、積極的な意味合いを持つことがあります。思いが言葉にならないことで、思いの意味合いを豊かにすることが、できることがあります。


『社会福祉士』第27号(公益社団法人日本社会福祉士会、2020年)に掲載されているO氏の論文「高齢期の精神障害をもつ人の地域生活に関する研究~就労継続支援B型事業所を退所後の社会参加と支援者~」では、支援を必要とする人間と関わり、よく見る過程において、明らかになる、支援を必要とする人間の要望に応じるための支援を行うことの大切さが、論じられています。


 自分の思いや、要望を抱える、ということは、苦しいことです。ですが、思いや、要望を、性急に表に出しても、問題の解決や改善にならないことがあります。大事なのは、関わりや、よく見ることの過程において、明らかになってくる思いや要望に対して、一つひとつ対応していく、ということ、ではないでしょうか。

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「受動性」

2023-07-24 21:46:32 | 私の支援論
 自分の気に入らない人物や、嫌いな物事に向き合うことに積極的には、なれません。一方、自分の嫌いな人物や、物事に向き合うことを拒否する論理や、態度は、自分の外側にある危機を感じ取る感受性を、失わせるものです。


 現在の日本社会では、自分と相手との対立を無意味化しようとする論理や態度が、強く存在します。ですが、どんなに親しい人物であっても、自分と相手との対立は、なくなりません。自分と相手との対立と向き合うと共に、どのようにして自分と相手との、議論や交流を可能にできるか、考え、行動する必要があります。


 Y氏の『システム社会の現代的位相』(岩波書店、2011年)では、人間を平準化させ、社会システムの内側に人間を閉じ込め、社会の外部に対する感受性を失わせる状況に対抗し、自分の外側にある状況にある危機を感じ取る受動性を回復することが大切だと、論じています。


 支援者として、支援を必要とする人間に対して、直接に関わるか、間接的に関わるか。直接に関わることで、間接的にでは感じ取ることは難しい物事に触れようとします。一方、支援を必要とする人間が、自分で問題に取り組もうとする工夫や努力を尊重するためには、間接的な関わりについても検討します。

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「要望」

2023-03-29 23:33:36 | 私の支援論
 自分のやりたいことを、実現したい。だが、何がやりたいことなのか。実際のところ、自分がやりたいことが何か、わからない場合は、どうすれば良いだろうか。


 やりたいことがあっても、やりたいことを実現するための資源が不足している場合には、どうすれば良いか。自分がやりたいことについて、他の人の理解や、支持を得ることが難しい時は、どう考えれば良いのか。


 『社会福祉士』第27号(公益社団法人日本社会福祉士会、2020年)に掲載されているO氏の論文「高齢期の精神障害をもつ人の地域生活に関する研究~就労継続支援B型事業所を退所後の社会参加と支援者~」では、支援を必要とする人間と、支援者が、関わり合うことにより、支援を必要とする人間の仕事や活動、生活についての要望を支援者が良く見て、対応することが大切だと論じられています。


 自分がやりたいことは、何か。相手がやりたいことは、何か。自分と、相手の関わり合いの中で、実際に何がやりたいのか、良く見る。良く見て、実際にやりたいことを探り当て、やりたいことを実現するための資源を用意し、他の人の理解や支持を得る、ことが大切ではないか。

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「確かに知ること その2」

2022-11-08 21:18:01 | 私の支援論
 支援を必要とする人間を支援するということは、日々の支援や生活を積み重ねていく、という部分があります。日々の支援や生活を積み重ねていくことにより、人間は安定を取り戻すことがあります。一方、日々の支援や生活を積み重ねていくことは、人間を支援することの理念を見失わせる場合があります。


 支援者が、支援するための知識や技法を学び直すことは、日々の実践に埋もれた、自分が、支援を必要とする人間を支援するための理念を掘り起こす、という部分があります。自分が掘り起こした、理念は経験を積む以前に知っていた理念とは、別の意味合いを持つことがあります。


『社会福祉士』第26号(公益社団法人日本社会福祉士会、2019年)に掲載されているO氏の研究ノート「社会福祉士であることを基盤とした「自己覚知」の捉え方に関する一考察」では、支援を必要とする人間を支援するための知識や技法を確かに知るという過程を経験することを通じて、自分の支援者としての知識や技法を吟味し、自分の姿勢を捉え直し、自分の支援者としての力量を強く豊かにすることが大切だと論じています。


 支援者が、支援を必要とする人間を支援するための知識や技法を、確かに知ろうとする努力を行うことは、自分が、相手に支援を提供する際に必要なことは何か、ということを思い出す、という部分があります。思い出したことを、自分と相手にとっての価値として、捉え直すこと、が大切です。

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「違い」

2022-06-28 22:11:42 | 私の支援論
 支援を必要とする人間を実際に支援するためには、支援を実践するための計画を作成することが大切です。支援を必要とする人間を支援するチームを構成する個々の人間の視点や立場の違いを利点として生かし、お互いの話し合いの過程を通じて共通理解を得ることによって、支援を必要とする人間の特性や課題に対応するための計画を作成し、支援の実践を行うことが重要です。


 支援を必要とする人間を支援するチームを構成する個々の人間は、支援についての一つひとつの概念について、違う理解をしています。例えば、相手の自立ということを考えた場合、支援者や他の人間に頼らず、自分で仕事や生活を成り立たせることを自立と考えるか、支援者や他の人間の支援の提供を受けた上で、自分の希望を実現することを自立と考えるか、では、支援の方針は違ってきます。個々の人間の違う理解を、お互いの話し合いの過程を通じて共通理解を得ることにより、支援を必要とする人間の特性や課題を把握し、支援の実践を行うことが大切です。


 M氏の『障害者の個別支援計画の考え方・書き方 社会福祉施設サービス論の構築と施設職員の専門性の確立に向けて』(日総研出版、2004年)では、支援を必要とする人間を支援するチームを構成する個々の人間の視点や立場の違いを利点として生かし、お互いの話し合いの過程を通じて共通理解を得ることによって、支援を必要とする人間の特性や課題に対応するための計画を作成し、支援の実践を行うことが大切だと論じられています。


 支援を必要とする人間を支援する計画を作成するためには、支援を必要とする人間の特性や課題を分析し、把握するための書式を用意することが重要だと論じる人がいます。もちろん、特性や課題を分析し、把握するための書式が有効に機能する場合はあります。一方、書式を過度に重視することは、視点や立場の違いを利点として話し合いを行い、共通理解を得ることを軽視することになる場合があります。話し合いをせず、単独で課題分析をするための書式ではなく、支援を必要とする人間を支援するための話し合いを充実させるための書式を用意することが重要です。

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「確かに知ること」

2022-02-27 23:33:35 | 私の支援論
 自分の、支援者としての専門性や力量は、まだ十分とは言えません。支援を必要とする人間に対して、的確な支援を行うための専門性や力量を獲得するには、どうすれば良いのでしょうか。


 自分の支援者としての専門性や力量を獲得するためには、専門職としての理論や態度、技術を確かに知ろうとする過程を経ることが大切です。専門職としての理論や態度、技術を確かに知ろうとすることは、ただ専門職としての理論や態度、技術を論じた論文や書物を読むだけではなく、支援を必要とする人間と、支援者や他の人間との関わりや状況を読み、知ろうとする過程を経ることが重要です。


『社会福祉士』第26号(公益社団法人日本社会福祉士会、2019年)に掲載されているO氏の研究ノート「社会福祉士であることを基盤とした「自己覚知」の捉え方に関する一考察」では、専門職としての支援者の理論や態度、技術を確かに知ろうとする過程を経ることが、自分の支援者としての専門性や力量を獲得するために重要だと論じられています。


 自分の専門性や力量に依拠して、支援を行うことは、支援を必要とする人間に対して直接的な人間的関わりをすることをしないことになる場合があります。重要なのは、自分の支援者としての専門性や力量が、支援を必要とする人間と、支援者や他の人間との関わりや状況を読み、知ろうとするための専門性や力量になっているか、ということです。わかったつもりになって人間的関わりをしないための専門性や力量ではなく、支援者の人間的関わりを生かすための専門性や力量を獲得することが大切です。

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「印象」

2021-10-09 22:51:17 | 私の支援論
 自分が表現しようとするのは、自分の表現したいことを相手に印象を持ってほしいということが一つあります。自分の表現したいことを相手に印象を持ってほしいという論理や感情は、自分だけではなく、相手も持つものです。


 自分が生きる社会で問題が発生している場合、問題の解決や改善が求められます。問題の解決や改善が求められた場合、問題が起こっている状況で生きる人間に社会の常識を押しつけ、社会の常識を強化する形で問題の解決や改善を図ろうとする場合があります。一方、問題が起こっている状況で生きる人間に社会の常識を押しつけても、心に印象づけることは難しいです。問題が起こっている状況で生きる人間の心に印象づけるには、問題が起こっている状況を読み、言葉を探ることが必要です。


 I氏・K氏・K氏・S氏・T氏・T氏による『読むための理論-文学・思想・批評』(世織書房、1991年)では、自分が相手の心に強く印象を響かせるための言葉の論理や感情を読むことが大切だと論じられています。


 強く印象を響かせるための言葉は、自分や相手を沈黙させ、自分や相手を従わせるために用いられる場合があります。強く印象を響かせる言葉に対して、反対することは難しいです。ですが、強く印象を響かせる言葉がある一方で、自分が相手に表現するためには、自分が表現するための言葉の論理や感情を立ち上げる必要があります。自分が表現するための言葉の論理や感情を立ち上げるには、自分が相手の心に強く印象を響かせるための言葉の論理や感情を読むことが大切です。


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「接点 その2」

2021-05-31 23:00:24 | 私の支援論
 支援を必要とする人間はしばしば、障害や疾病といった要因が複合的に重なり、人間と社会との接点に不具合が生じることにより、無力化することがあります。障害や疾病といった要因が複合的に重なっている状況と向きあい、人間と社会との接点の不具合を修正し、人間の力を回復させることが、支援者の仕事です。


 人間はしばしば、哀しみや孤立を深めると、社会や、他の人間からの関わりを拒絶し、自分と社会との接点に不具合を生じさせます。人間が哀しみや孤立を深めることは、社会の中で自分の力を発揮できないという無力感を一つの要因とします。人間と社会との不具合を修正すると共に、人間が社会の中で自分の力を発揮できるようにすることが重要です。


『関東学院大学文学部 紀要』第102号(関東学院大学人文学会、2004年)に掲載されているK氏の論文「新自由主義と社会福祉の必要性」では、障害や疾病といった要因が複合的に重なることによって、人間と社会との接点に不具合が生じることに、社会福祉の必要性があると論じられます。


 現在の日本社会では、民営化と規制緩和の強化を主張する新自由主義の価値観が強くなり、社会福祉の現場に、経営と接客サービスの論理を導入する運動が展開されています。一方、経営や接客サービスの論理では、貧困や、人間と社会の接点の不具合の問題に対応できません。経営や接客サービスの論理の良い所から学ぶと共に、貧困や、人間と社会の接点の不具合に対応するための価値や論理を形成し、展開する力量を強く豊かにすることが、支援者にとって大切です。

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