元旦に去年の屁をしてゐる (餓)
大晦日。除夜の鐘を聞くと、昔、誰かにもらったマフラーを何重にも頸に巻きつけ、
古い革ジャンを重ね着して暗闇に出る。近くの神社に天照大神と天神社の御札を授け
てもらうためだ。暗闇の夜道を遠くの神社の灯りと三々五々集まりくる初詣の声を頼
りに歩く。いかにも寒々しい境内には初詣の人だかりと夜店の呼び込みが交錯してに
ぎやかだ。
まず、御札を求め自分の懐に祭る。列の後ろに並んで身を揺らせながらまとわりつ
く寒さを振り払う。神前に立つと、脂肪がほどよくまわった女の神主が新年のあいさ
つに続いて参拝のしかたを教えてくれる。そして、一人ひとりにお祓いをして新年を
告げる。お神酒を勧められたが、甘酒を所望して暗闇に戻っていく。この暗闇と体の
芯まで震えさせる寒気が文明の汚れを払い落としてくれるようでうれしい。このうれ
しさを確認することで新しい年がはじまるのだと毎年のように思う。
毎年のことだが、門前ではもちを焼く香りが、お汁粉を振舞う口上とともに暗闇を
わたってくる。誘われて近づくと、大きなタルヌキ柿を売っているのだという。寒さ
のためか皆お汁粉に群がる。柿の売れない柿売りは毎年身を切る冷気の中であたたか
い会話を売っている。
大晦日。除夜の鐘を聞くと、昔、誰かにもらったマフラーを何重にも頸に巻きつけ、
古い革ジャンを重ね着して暗闇に出る。近くの神社に天照大神と天神社の御札を授け
てもらうためだ。暗闇の夜道を遠くの神社の灯りと三々五々集まりくる初詣の声を頼
りに歩く。いかにも寒々しい境内には初詣の人だかりと夜店の呼び込みが交錯してに
ぎやかだ。
まず、御札を求め自分の懐に祭る。列の後ろに並んで身を揺らせながらまとわりつ
く寒さを振り払う。神前に立つと、脂肪がほどよくまわった女の神主が新年のあいさ
つに続いて参拝のしかたを教えてくれる。そして、一人ひとりにお祓いをして新年を
告げる。お神酒を勧められたが、甘酒を所望して暗闇に戻っていく。この暗闇と体の
芯まで震えさせる寒気が文明の汚れを払い落としてくれるようでうれしい。このうれ
しさを確認することで新しい年がはじまるのだと毎年のように思う。
毎年のことだが、門前ではもちを焼く香りが、お汁粉を振舞う口上とともに暗闇を
わたってくる。誘われて近づくと、大きなタルヌキ柿を売っているのだという。寒さ
のためか皆お汁粉に群がる。柿の売れない柿売りは毎年身を切る冷気の中であたたか
い会話を売っている。