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1号機

2013-03-20 20:08:10 | 脱原発依存
a. 1号機

① ICに関する操作及び判断と行動は妥当であったか
後から振り返ってみれば、全電源喪失の際、ICの運転状態を把握し、隔離状態にある場合には速やかに運転状態に復旧させることが、一刻を争う何よりも優先度の高い対応であった。偶然一時的に直流電源が復旧した際に、運転員がその隔離状態に気づいてインサービスしたときには、既にこの重要な系統の機能が不可逆的に失われ、手遅れの状態になっていた可能性が高い。

すなわち、設定圧力を超えたSR弁を介しての蒸気排出による、又は配管破損があった場合はその破損箇所からの冷却材喪失による炉内の水位低下に伴い、燃料上部の露出や過熱による損傷、水蒸気との反応による水素ガスの発生が既にある程度進行し、ICの胴側にはまだ十分な冷却水が残っていたにもかかわらず、細管に蓄積した非凝縮性の水素ガスによって自然循環が働かない状態になっていたと推測される。

いったんこのような状況に陥ったICを再び本来の状態に復帰させることは、その設計上実質的に不可能であり、その後、運転員が再びICを隔離させた行為が適切だったか不適切だったかを論じることには、もはやそれほど重要な意味はない。

しかし、津波の来襲とそれに伴って発生した直流電源の喪失に際し、その直後から、ICの系統確認と運転状態への復旧操作に迅速に対応できなかった背景には留意が必要である。すなわち、現場確認のための出発時刻が、ICの喪失後、若しくは運転性が不明になってから1時間半以上も経過した17時19分であったこと、その確認目的がICを優先したものでなかったこと、ICの胴側の水位確認という重要な任務を現場の汚染レベルが幾分上昇したという理由によって簡単に断念してしまったこと、胴側の冷却水が何らかの原因によって喪失した可能性を考慮し補給のための活動を行っていながら、細管に非凝縮性の水素ガスが蓄積して自然循環が停止してしまったことに思考が及ばなかったこと、21時19分になって確認された水位が、TAF+2000mmであったことに疑念を抱かなかったことなど、一連の判断と行動において重大な技術的弱点があった可能性がある。

しかし、これを運転員個人の問題に帰すべきではない。なぜなら、ICや過酷事故に関する事前の備えがなく、すなわち、運転員に対する教育・訓練が十分に整備・運用されておらず、プラント運転や定期検査等でもICを作動させたことがなかったことなど、その背景には東電の安全に対する組織的な問題点があると考えられるからである