音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ア・クイック・ワン (フー/1966年)

2012-01-27 | ロック (イギリス)


この時代のフーの音楽を聴いていていつも思うのは、明らかに出てくる時代を間違えたとしかいいようがない。まず、例えばこのバンドが1970年後半のニューウェイヴ時代に出ていたら、恐らくジャム以上にスポットを浴びたし、また2000年以降の新しいロックの時代に出てきたら、きっとアークティックモンキーズ以上に支持されたと思う。ただ、こういうアホなことを言っている一方で、フーがいなかったらパンクが生まれなかった現実(さらにジャムはまさにフーそのもの)と、同時にオルタナティヴなロックは生まれなかったことも併せると、アークティックモンキーズだけでなく、ストロークスだって、リンキン・パークだって出てこなかったと思うので、やはり私の言っていることは矛盾だらけである。かといって、もし、このバンドがポップスのメイン・ストリームにいたとしたらどんなだったろうと真剣に悩む。フーはやはりこの位置がいいのだし、60年代にあのコンセプトを持っていたことが貴重なんだと思う。いつも言うように、彼らはモッズ・カルチャーの代表であり代弁だった。

さて、デビュー作品「マイ・ジェネレイション」は私的には凄いアルバムだった。レビューに書いているので敢えて触れないが、同時期の名盤をことごとく上回っていると改めて思う。そしてこの2作目は前作よりさらにオリジナリティが進化していて、1曲以外はすべてメンバーの作品、しかも今回は、ピート以外にもメンバーの全員が曲作りに参加しているが、不思議なくらい統一性があるバンドだと思う。"Run Run Run"の様な正統なロックを演奏してると思えば、2曲目の"Boris the Spider"(ポリスの蜘蛛野郎)の様なプログレっぽいサウンド、3曲目の"I Need You"は完全にサイケを先どっている(これはファーストアルバムにもあったが・・・)し、次の"Whiskey Man"では、ビートルズビーチボーイズに勝るとも劣らないハーモニーの見事さに楽器演奏による妙を見せている。ある意味この作品が「ペット・サウンズ」「サージェント・ペパーズ~」の間に発表された事は大変意義深いし、音楽的にいえば「進化の流れ」をみているようだ。そして実は私が凄いと思っているのが、6曲目の"Cobwebs and Strange"であるが、これはキース・ムーンの曲であることが分かるほど、ドラムソロのオンパレードであるが、それにしてもキースのテクニックは凄い。さすがに、デビュー前のフーのステージを見て、「オレの方が上手い」と言ってドラマーを変わって叩いたところ本当に凄いテクで、すぐメンバーになった程のミュージシャンである。そしてこのパロディっぽい曲、コメディバンドの様な曲のセンスはピカ一なのである。というか、私が彼らに最初に出会った70年代には、彼らのニュースというとライヴよりキースの滑稽な写真ばかりが音楽雑誌に掲載されていて、このバンドってまともなんだろうかと思ったりしたから、申し訳ないが今になって、東郷かおる子さんなんかを恨んでしまう、ま、冗談だが・・・。そして圧巻は、”A Quick One While He's Away”であろう。この10分近い大作には、この2作後のロックオペラと言われた「トミー」の導入部分になっている。この時代に素晴らしい。

フーが時代を越えた寵児であることは今更、力説するほどのものではない。だがこれもある。そう60年代に、ビートルズやビーチボーイズ、ボブ・ディランが音楽にエナジーを求める若者に対してしっかり受け止め役を引き受けていた。だからフーみたいなバンドが存在できたということも。そして、多くの後継者が、30~40年経ってもこの特異な音楽コンセプトを繋いでいってくれている。そう、21世紀にフーがいなくても、フーの試みはしっかり継承されているかれである。


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