音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

チェロソナタ第1番ホ短調 (ヨハネス・ブラームス)

2009-09-01 | クラシック (室内音楽)

ブラームスは、室内音楽に関してはかなり幅広く色々なアンサンブル形式で曲を書いているが、ご存知のように名曲が多い。ざっとあげるとピアノ三重奏曲(3曲)、弦楽六重奏曲(2曲)、ピアノ四重奏曲(3曲)、ピアノ五重奏曲、ホルン三重奏曲、弦楽四重奏曲(3曲)、ヴァイオリンソナタ(3曲)、弦楽五重奏曲(2曲)、クラリネット五重奏曲、クラリネット三重奏曲、クラリネットソナタ(ヴィオラソナタ)等々であるが、中でもチェロソナタ第1番、2番は人気も高く、完成度も大変高い。ブラームスは生涯で2曲のチェロソナタを残しているが、実は、第1番より以前に作曲したチェロソナタが2曲存在する。これはブラームスが18歳頃、1851年頃に作曲されたと推測され、同年の7月に演奏会で披露されたが、ブラームス自身の自己批判によって完全に破棄された。更にもう一つのチェロソナタは、第1番の緩徐楽章として1862年に作曲されたが、可也悩んだ末に削除され、その後第2番で再び用いられたという。

その後暫くして漸く、1865年に発表されたのが、このチェロソナタホ短調(OP38)である。本来このチェロソナタを全4楽章の作品として構想していたが、前述のように、緩徐楽章を削除したため、全3楽章の作品となったのであるが、緩徐楽章を置かなかったのは、ベートーヴェンに倣ったと言われている。ブラームスがチェロソナタを作曲するにあたっては、ベートーヴェンのチェロソナタ、特に3番~5番を徹底的に研究したと言われ、そういわれてみると、この曲の第1楽章はベートーヴェンの第3番に似ている気がするし、また、第3楽章でフーガを用いているところも、ベートーヴェンの第5番からヒントを得ているのは衆目の一致するところである。また、この曲はすべて短調で書かれているところも中々興味深い。特に。第2楽章はイ短調から嬰へ短調へと流れていて、一見軽快に聴こえるが主部はどことなく寂しげである。この曲が作曲された当時のブラームスの作風を象徴するものであることも忘れてはいけなく、実は、随分後に発表される第2番とはまるで別人が書いたような曲である。さらに、もうひとつの特徴として、チェロが高音域に上がることが殆どなく、略全編にわたり、ピアノより低い音域に抑えられているところも、このチェロという楽器に対してのブラームスの考え方が良くわかる。ある種、弦楽六重奏曲第1番にも共通する楽器理念の上に成り立っている楽典である。実は、最近読んだブラームス研究の書物には、この曲は「バッハ研究」が土台になっていると指摘してあった。そういえば、第1楽章は、バッハの「フーガ技法」のコントラプンクトゥス4の主題を用いている。随所にカノン風や対位法を用いているのも事実である。そしてよく聴くと古典的なソナタ形式で書かれ、第3楽章はまたまた「フーガの技法」のコントラプンクトゥス13を用いて、主題の反行形を組み合わせているのである。ブラームスはベートーヴェンと共にバッハのことも物凄く尊敬していて、交響曲第4番にシャコンヌを用いているのは有名であるが、それ以外にもこうして、自らのバッハ研究成果を公表しているのである。

また、全編を通して、チェロもさることながらピアノの旋律も目立つのは、彼が偉大なピアニストであったという証でもあろう。これもどちらかというとブラームス・フリークには絶大な人気がある曲だが、チェロ好きならば是非聴いて欲しい曲である。


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1 コメント

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ブラームス (Seko-M)
2009-10-17 10:23:03
ブラームスは本当に名曲、名旋律が多いですね。この曲や、ヴァイオリンソナタなどは知る人ぞ知るみたいな感じで、確かに交響曲や協奏曲も良いですが、この辺りの室内音楽曲を聴いて欲しいと思います。

多分、turtooneさんもそうだと思いますが、私はチェロは2番の方が好きです。

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