音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

憂国の四士 (UK/1978年)

2010-03-20 | ロック (プログレッシヴ)


プログレッシヴ・ロックの中で私が最高だと思う(というか単純に好きだ・・・)ベーシストとドラマーは、ジョン・ウェットンとビル・ブラッフォードである。この二人が初めて出会ったのは、第2期キング・クリムゾンであり、4枚の名盤を残した。名曲「イージー・マネー」も、この時代に生まれた。その二人はクリムゾン時代から、EL&Pのようなキーボードを主体としたトリオバンドを結成したがっていて、それが、このUKの第1期である。そして、この当時その栄えあるキーボード・プレイヤーに選ばれたのが、なんと、イエスを脱退してソロ活動をしていたリック・ウェイクマンであり、これは今考えても凄いことであった。単純にEL&Pと比べても、キース・エマーソンVSリック・ウェイクマン、グレッグ・レイクVSジョン・ウェットン、カール・パーマーVSビル・ブラッフォードという図式は、略、同格である。ヴォーカル面を加えても、レイクとウェットンは互角だし、しかも、双方共に、エマーソンとウェイクマンは歌えるからどちらも面白い。但し、同じトリオでも、クラシックに軸足を置いているEL&P対して、やはりこのユニットはブラッフォードが、ジャズをやりたくてイエスを脱退したくらいであるから、ウェイクマンとは演奏経験があっても、こちらもクラシックに軸を置く彼がどこまで妥協できるかがポイントになっていたが、結局このトリオのレコーディング化は、マネージメントの問題という公表のされかたで、適わなかった(後に収録した2曲がブラッフォードのソロアルバムに収録された)。

このアルバムタイトルでも分かるように、UKは4人編成でファースト・アルバムを収録したが、エディ・ジョプソンがまず加入。このエディの経歴は面白く、カーヴドエアというバンドに、あのダリル・ウェイの後任として、さらにロキシー・ミュージックには、あのブライアン・イーノの後任として(と、「あの」と思わず言ってしまう大物の後がまとしてバンドに加入している経歴の持ち主)参加し、高い評価を受けていた。そういう意味では実質的に今回もリック・ウェイクマンの後任という言い方も出来て、そういう運命の下にあるミュージシャンなのかもしれない。しかし、このUK参加は後々にハクがつく。一方、リックの時代に音の薄さを歪めなかったビルとジョン(クリムゾン時代はロバート・フィリップが居たのだから当然と言えば当然)は、ギタリストの加入を斡旋し、当時、ビルのソロアルバムに参加していたアラン・ホールズワーズを大抜擢した。アランと言えば、ゴングとソフトマシーンという超マニアックなジャズ・プログレバンドの元メンバーで、当然、ビルとは略、音楽性が一致していたので、この加入に関しては、至って自然の成り行きだったと言えよう。この4人の「憂国の四士」(しかし、見事な日本語タイトルである。但し、音楽性は殆ど無視されているが・・・)がファースト・アルバムを発表し、すぐにツアーを開始するが、正直、このアルバムを最初に聴いたときの不安は、ビルとアランの拘りが何もなく、只管、ジョン・ウェットンの色に染まってしまっている危惧であったがそれは的中した。ジョンの頭の中には、全米デビューという大きな目的があり、そのために最初のリックへの誘いも、EL&Pのポピュラー版音楽の完成であり、ポップス志向、大衆志向に対して、ビルは常に自身の音楽を極めるという命題を抱えているミュージシャンであるから、この二人はツアーの段階で決裂した。今、思えば、このふたりを束ねていたのだから、ロバート・フィリップというのは凄いミュージシャンだったのだ。このイエスに負けるとも劣らないスーパーセッションバンドのアルバムは僅か1枚で終わってしまうのである。

UKは来日ツアーを行ったが、チケット前売りの際にはビルとアランが入っていたのに、来日したメンバーは変わってしまっていた。そして、その間に慌てるように、セカンド・アルバム「デンジャー・マネー」を収録していて、これは顕かにもクリムゾンの名曲「イージー・マネー」をファンに髣髴させようという策略があったが、如何せん、実力不足だったことは周知の通りであった。「憂国の四士」に収録されている音楽の質は高いものの、完全にウェットン色と、ビル・アラン色に分かれていて、特に、インストルメンタル曲にジョンの存在価値はまるでない。来日以前のツアーも精彩を欠いていたらしく、但し、はっきりとしたことは、アメリカで主流になりつつあった、作られた「コンセプト・バンド」はやはり紛い物で、英国紳士は自分の信念を捨ててまでミュージックシーンに乗りたくないという姿勢は貫かれたのである。そして、この姿勢はプログレだけでなく、当時イギリスで主流となり世界の音楽シーンを席捲するニューウェーブにも貫かれていくことになる。


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1 コメント

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turtooneが・・・ (kiyomi)
2010-03-22 10:31:02
ジョン・ウェットンを大好きなのは有名でしたね。

ブラッフォードとのコンビネーションも絶賛してましたけれど、このアルバムが出たときには、クリムゾン時代と違うと、早々に解散危機説を流してましたねw

私はエイジアも良いですが、こっちの方が理屈っぽくって好きですね。


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