このブログで、ローリングス・トーンズのアルバムを取り上げるのは初めてである。正直、このバンドに関しても何処から取り上げたら良いのかが中々決まらなくて、ついつい後回しにしてしまていた。というのも、本来ファースト・アルバムから取り上げるのが最も良いのであるが、この時代のアーティストはデビュー時期が自分とリアルタイムでないから、どうしても後付けになってしまう。なので、アーティスト別で括ると最初の取り上げるアルバムというのは、どうしてもそのアーティストの最初に聴いた作品か、最も好きな作品のどちらかになってしまう。
このアルバムは、ストーンズと最初に出会ったアルバムだ。尤も楽曲レべルでいうとビートルズ同様有名な曲が多いから別である。この前のアルバム「山羊の頭のスープ」からシングルカットされた名曲「アンジー」が好きで、その直後の発売となったこの作品がアルバムとしてのストーンズとの出会いである。ただ、この頃はまだ然程、ストーンズサウンドに傾倒していなかったから、なるほど良く出来た作品だと思った程度だったが、このバンドを暫く聴きこんでいくうちに、うーん、ストーンズっていうのは、やはりブライアン・ジョーンズなんだなと思ってしまい、所謂、ブライアン派になってしまったのは事実である。映画「ストーンズから消えた男」を観ても、確かに、彼は色々な形で音楽界の絶頂から転げ落ちていくのだが、でもストーンズというのは、結局、ブライアンが作り上げた白人ソウルサウンドをずっと守って来たのである。略、同時期にビートルズという超ヒットメーカーが存在したために、何かとこのバンドは引き合いに出されることが多いが、そもそも共通点と言えばイギリスのバンドというくらいで、ポップ・ミュージックの寵児としてあらゆる音楽ジャンルに挑戦し、沢山の道を探りだしたビートルズに比べ、ストーンズほど半世紀近くにわたり、そのサウンドをひとつも変えていないバンドというのも全く同じ意味で、ポップ・ミュージックの至宝である。このアルバムは、ストーンズの作品の中でもとびきりロック色が強く前面に打ち出している。また、このアルバムは前述したブライアン・ジョーンズがプールで変死した後、ギタリストとして加入しグループの危機を救ったミック・テイラーの最後の参加アルバムである。ミック・テイラーが入って、少しストーンズはロック色が強くなっていたが、前作では随分、本来のソウルミュージックに戻りつつあったので、その辺りが彼の音楽性と何か不都合があったのかどうかはわからない。但し、ミックが加入してからというもの、ライヴツアーが大変多くなり、そもそもがリード・ギターでありながら、曲によってはリズムやベースに回ったりという器用さがあり、ストーンズがライヴバンドとして他の比類なき存在に押し上げた功績は大きい。しかし、天才にしてバンドの始祖ブライアンの後釜というのは大きなプレッシャーであっただろうし、それはツアーを重ねる度にもミックとキースの人気は急上昇していく中で、大きなジレンマを抱えていたこともあっただろうと思う。そんな時に、ツアーに友情出演していたロン・ウッドに、ストーンズで足りないのは「華」であると彼は音楽性を理由に身を引いた。当時、キース・リチャードは、「彼の在籍した時代に出したアルバムがストーンズ黄金時代の金字塔」と言っているのは強ち間違いではない。
このアルバムだけを聴くとストーンズは思いっきりロックン・ロール・バンドだと思ってしまうし、現に自分がそうだった。しかし、タイトル曲といい、何処か普通のロックではなく音楽構成に奥行きが感じられた理由を後から聴いたときはなるほどと理解した。ジャケットも当時としては斬新だが、私はこの意としているところは、LSDによる幻覚症状であるとしか思えなく、なんだかんだ言ってもブライアン・ジョーンズの呪詛から解き放たれてはいないらしい。
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