音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

イズ・ディス・イット (ザ・ストロークス/2001年)

2012-03-16 | ロック (アメリカ)


2000年以降、確実にロックは変わった。正確にいうと、2000年はまだ、静かだった。いや、というよりも、ロックは行き場を、失っていた。この年最も衝撃的だったのはエミネムの登場だったことは衆目の一致するところである。そしてこの衝撃はロック音楽の必要性に関して一石を投じた。そう、この時点で、ロック音楽は死にかけていたのである。もうこの領域から新しい可能性は生まれないのではないか、そんな不安が充満していたのである。2001年、そんな閉塞感の中から突如その殻を突き破って現れたのがこのグループ、ストロークスであった。この年にはリンキンパークも、ホワイトストライプも現れた。そして2000年代には、このあと、アークティクモンキーズフランツ・フェルディナンドなど全く今までとは違ったロック音楽がたくさん現れる。しかしそれは、既に、オアシスニルヴァーナの影響ではなく、「ストロークス以降」という表現に代表されるように、すべて、このアルバムが起点になっているに相違ない。

それでこのアルバムだが、タイトルからして大変意味深である。これは自分たちの音楽に対するかなりの自信の現れでもある。例えばロック音楽は、レディオヘッドが一年前に「キッドA」という、かなり決定的な独創領域を開拓開墾してしまった。無論、ここが終着点ではないものの、あ、もしかしてここが最後なのかと思わせてしまうほど、そこには退廃と完成が混在した音楽であった。しかし、ここに来て、たとえば、ミューズやコールドプレイという、レディオヘッドを後継する音楽が出没し始めた。かれらの原点は恐らくレディオヘッドより前にはない。つまりは、正統なロック音楽の継承者が、一体どこに軸をおいているのか、その軸が確実にズレてきているのかという危惧がロック音楽ファンに芽生えてきていた。オアシスだって現役なんだが、でも数年前の勢いはあったのか、R.E.Mだって健在、レチッリも。だがこれらのグループが所謂、R&Bを、ロックンロールを継承しているのかというとそれは違う。それが残っていたのは、残念ながらストーンローゼズ、ニルヴァーナ、そしてオアシスまでだ。そういう状況で出てきたこのストロークスは正真正銘、ロックンロールを継承している、いわば、これが新世紀のロックンロールなのだ、だから"Is This It"なんだって、こんなにわかりやすい音楽は、ロック魂を覚醒させる音楽は久しぶりである。そう、これが私が「ストーンローゼス」のレビューでも書いた、「ロックは三度死にかけた」の三度目を、蘇生させたのである。それも、とても簡潔に。

この作品がこれから後に及ぼす影響というのも実は凄い。冒頭にも書いたが、2000年代のスーパースターがこの後、続々登場する。そのどれもがまるで90年代には考えられなかったほど、新しく、そしてちゃんとロックンロールなのである。何処が違うんだ、そんなことはどうでもいいと思ってしまうほど完成度が高い。そして、それはすべて、このアルバムがきっかけで、このアルバムがあったからこそ、彼らが出てこられたというのは、最早全く間違いのないところなのである。しかし、何度聴いても見事である。


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