音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

クール・ストラッティン (ソニー・クラーク 1958年)

2009-10-27 | ジャズ


一般的な音楽鑑賞の変遷として、邦楽から洋画のポップスからロック(ポップスという大きなジャンルにロックを入れる場合もある)にから入り、ジャズという流れがあるのだが、ロックからジャズに進むパーセンテージはそんなに高くない(データを取っている訳ではないから明言は避けたいが、あくまでも経験値として)。ロックで止まってしまうリスナーは多い。ジャズ音楽というのは結構、特有のもので、寧ろ、この音楽鑑賞に入ってくる流れはロックやクラシックよりも多様であるといえる。例えば多いのが、音響マニアックである。オーディオファンの多くは、アナログ盤時代のジャズを自宅のシステムで再現するには相当な時間と金を使っている。エセ・オーディオマニアの私ですら、この3つのジャンルはレコードのカートリッジと、スピーカーをある程度変えていたほどであるからだ。次に楽器から入ってくるファンは多い。特に、管楽器はクラシックも良いが、即興音楽であるジャズは面白い。6歳から15歳までクラシックピアノを弾いていた私の唯一の禁止はブギウギピアノを弾くことであった。だが、トランペットなどはやはりジャズを禁止されていたのだろうか。今でも、サックスには憧れがあるし、機会があればチャレンジしたい。ポピュラーミュージックリスナーとしての流れでは、ロックからたどり着くこしもあるが、寧ろ映画音楽ファンが流れてくることも多い。私の場合は冒頭に書いた経緯でジャズに到達したが
バンド活動していたことや、プログレファンだったことと、時代的にクロスオーバー~フュージョンが流行りつつあったという追い風もあった。だが、それよりも「ブルー・ノート」に出会ったことが最もジャズへの興味を加速させた。

「サムシン・エルス」と共に、この時代のブルーノートの名盤といえば、やはりこのソニー・クラークの「クール・ストラッキン」である。まず、ジャケットが「おとな」だ。私はイエスが好きな理由のひとつにアルパム・ジャケットに拘りがあるミュージシャンだからということも以前に書いたが、ジャズのアルバムジャケットは相対的にみてロックよりも「おとな」なのであるが、中でもこのアルバムジャケットのセンスの良さは一度みたら忘れないし、やはり、「どんな音楽なのだろう」との興味もそそられる。そして、音楽は、その期待を裏切るところか、素晴らしい名演奏である。このアルバムには4曲が収められているが、全てがジャズ史上に残る名曲、名演奏である。特に、タイトル曲の「クール・ストラッキン」と「ブルー・マイナー」は、ジャズをご存知ない方でも絶対一度は何処かで、渋谷のショップのBGMかもしれないし、ホテル・バーの演奏かもしれないし、いや、意外に地方の商店街アーケードで流れていたかもしれないが、必ず一度は聴いている筈だし、聴いていなかったとしても、聴いたことがあると思われるほどスタンダードな楽曲である。そして、ソニー・クラークはピアノなのだが、なんというか、肩を張ったところがない自然な演奏で、寧ろ、トランペットのアート・ファーマーや、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンを前面に出している。そのバランスの良さが、とてもピアニストのアルバムとは思えないところが、このアルバムを「サムシン・エルス」と共に世間が認める名盤だと言われる所以だと個人的には思う。

但し、このアルバムはアメリカでは発売当時不評だった。ソニー・クラークもジャズ・ファンには周知の通り、本国よりも日本で支持が高く、ファンも多かったが、最近になって彼を支持するミュージシャンが増えて、本国アメリカでも偉大なるミュージシャンとして評価されている。日本のジャズ・ファンの方が先見の銘があったが、ジャズ喫茶の定番となった点も鑑みると、やはりこれは前述した日本特有のオーディオファンの厳しい耳に彼の音楽が適ったのではないかと推測する。


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