音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ザ・ギフト (ザ・ジャム/1982年)

2009-12-25 | ロック (イギリス)


1970年代に英国でデビューしたバンドで最も衝撃的なのが、私にとっては、ピストルズでもクラッシュでも、また多大なる影響を受けたポリスでもなく、このジャムであることは間違いない。ジャムのデビューは然程、センセーショナルなものではなかったが、私は確か「ミュージック・マガジン」誌の評価がやたらと高かったので、デビューアルバム「イン・ザ・シティ」から、この最後のアルバムまでずっとつきあった。そして、このバンドくらい、新しいアルバムを出す度に音が自分たちのものに変わっていく進化を遂げたバンドというのは他には知らない。特に、イギリスのバンドで成功する定義というのは、それまではストーンズに代表されるように黒人音楽とR&Bというテイストをミックスさせた音楽性を兼ね備えているバンドと相場は決まっていた。だが、それを壊したのはピストルズに代表されるパンク・ロックに端を発し、その直後のニューウェイヴという大きなムーブメントの到来であった。

特に、ザ・ジャムに関して言えば、ポール・ウェラーの存在は大きく、良く言われるようにそのルックスとは正反対の演奏とヴォーカルが、私にとっても、またイギリスの音楽ファンにとっても可なり強烈で、「ビートルズのライヴは見られなかったが、ジャムのライヴはそれ以上の価値がある」と言われるほど、ライヴが支持されたバンドであった。当時、アメリカミュージシャンの商業化が一段と進み、ライヴ(というより、コンサートとかショウ)とレコード発売がセットで売られるように慣例化してしまった「作られた個性」を露呈した音楽シーンに比べ、イギリスはまさに実力で這い上がっていかなくてはならない、まさに音楽の戦場であった。だからイギリスはこの時代に様々な新しい音楽を創生していったのであった。特に、3枚目のアルバム「オール・モッド・コンズ」の高い音楽性と、それに対するファンの反応と支持が、デビューからわずか1年半でこのバンドの地位を不動にしたといっても過言ではない。そして、この「ザ・ギフト」は冒頭にも述べたように、最後のアルバムとなったが、ホーンセクションを導入したり、中南米音楽を取り入れたりという斬新な試みと、そもそもジャムの資質として備わっているパンクの要素が見事に融合して、全11曲を息をもつかせず、まさに「突っ走る」という表現が最も相応しい内容である。また、結成当初に比べると、ポール・ウェラーが少し後方に引っ込み、ブルース・フォクストンが前面に出た影響からか、ファンキーなサウンドがベースとなっていて、このことを後々のスタイル・カウンシルへの架け橋とみる向きも多い。ただ、私的には、それはたまたま音楽シーンの趨勢であり、スタイル・カウンシルの偶然と当アルバムの必然は必ずしも一致するものでなく、ザ・ジャムはまさにこのアルバムで見事に完結をしたのである。1978年から、僅か5年間の活動期間であったが、その充実度は他のどのミュージシャンよりも濃く、いつしか伝説となり、結果、ビートルズやストーンズと比類されることにより、同時期のどのミュージシャンよりも衝撃的に伝えられているのであり、私もその影響を受けたひとりなのである。また、このアルバムがすごいのは、今述べてきたジャムの突っ走って来た経歴と呼応するような躍動的な内容であり、ジャムの活動のそれと呼応しているのが、もし意図的で無いとしたら純粋に凄いバンドである。

このバンドに関して、いきなりラストアルバムであり、ベストアルバムのことから書いてしまったが、どのアルバムもそれぞれが大変興味深い内容なので、ジャムに関しては今後も他のアルバムを取り上げると思うが、21世紀になり、徐々にこのミュージシャンの存在感が薄れてしまっているのは残念であり、是非、機会があったら、まずこのアルバムからで良いので聴いて欲しいと思う。


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