音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ヴィーナス・アンド・マース (ウイングス/1975年)

2010-10-25 | ロック (イギリス)


このバンドは実は、アルバムを出す際にはバンド名を、ただのウイングスだったり、ポールマっカートニーがついたり色々であるが、このアルバムは、「ワイルド・ライフ」以来、久しぶりにウイングスと表記された。この二つの違いは良く分からないが・・・。

前作の「バンド・オン・ザ・ラン」が大ヒットしただけに、この作品までは約2年が空いたが、その間の「ジュニアズ・ファーム」というシングルを出していて、この曲はアルバム未収録(ウイングスはこのケースが大変多い)で、ポールのベストアルバムにもなぜか邦盤からは外された(米盤には入っている)。ウイングスというバンドは面白くてアルバムを出す度にバンドの音楽性が可なり変わっていく。要するに、彼らの音楽には余り癖がない。ミュージシャンというのは癖がある。中には何を聴いても同じ曲だと思ってしまうミュージシャンもあるがウイングスにはそれが無い。だからこの「ジュニアズ・ファーム」が次のアルバムの傾向になると思いきや、寧ろこの曲は前作の流れであり、発表された本作品は全く違うものになっていた。これは多分にポールの音楽性であろうが、彼はビートルズ時代もそうであった。ひたすらロックン・ロールを志したジョン・レノンとの違いがそこであった様に、ポールは常に自分の「音楽を求めつづける」姿勢をこのウイングスにあっても変えていない。だからこのアルバムが発表された頃も、新しいメンバーである、ジミー・マカロクの影響だとか何とか言われたが、ジミーは前述のシングルからのメンバーであり、更に言えば次回作の「スピード・オブ・サウンド」も全く違う傾向の作品であるからは、これは間違いなくポールの考え方であろう。この作品の中では何と言っても「あの娘におせっかい」である。この曲は実はアルバムより2週間先に発売され、追いかけるようにアルバム発売となったために相乗効果でシングルも1位を獲得した。そもそもこのアルバムは予約が殺到して全米の注目を浴びていた矢先だったので、このシングル先行発売もグッド・タイミングだった。一方でこの邦題は日本のポールファンには大変な不評で彼ら曰くは「最も珍妙なもの」だと酷評されている。この曲はギターにデイブ・メイスン、サックスにトム・スコットというところが参加していて、特にサックスのリードは曲を印象深いものに仕上げている。この曲に代表される様に全体的に前作にあった、ロックっぽさは消えていて、それよりも上質なポピュラー音楽(ロックが上質でないという意味ではない)を聴いているようだが、これがポール・マジックなのであり、ビートルズも「サージェント~」、「マジカル~」、「ザ・ビートルズ(ホワイトアルバム)」はまさにこのポール・マジック絶頂期だったためにリスナーは贅沢な音楽の時間を過ごせたのである。まさにポールは音楽の魔術師である。

私も若い頃はやはり好き嫌いで音楽を聴いていたから、余り、ビートルズ系は聴きこんでいなかった。だが今ひと通り世界の色々音楽を聴くと、ビートルズ、特にポール・マッカートニーという人はクラシックの音楽家同様、音楽に対して実に真摯で、また素晴らしいメロディを沢山輩出し、そして何よりもその音楽のクオリティが実に高いことが分かった。だから今になって必死にビートルズを聴きこんでいるが(幸い活動期間も短く、アルバム数、曲数ともに少ないから何度も聴けて良いのだが・・・)、この点に関しては自分の音楽歴の汚点であるし、だからポールの音楽は是非聴いて欲しいと思うし、この点に関して彼らを支持した多くの大衆は正しいと思う。


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