音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

レット・イット・ブリード (ローリング・ストーンズ/1969年)

2013-01-05 | ロック (イギリス)


実はどうでもいいことであるが、なんと昨年のレビュー新年第1号もストーンズを書いていた。しかも「ベガーズ・バンケット」である。不思議だが、年頭を意識はしていないが、どんなことでも「区切り」にあるような事はそれなりに考える性分なのかもしれない。それゆえ、年頭だから超ビッグなアーティストをもって来ているのかもしれない。それにしてもこの「レット・イット・ブリード」と前作「ベガーズ・バンケット」はまさにストーンズの作品の中でも「双璧を為している」し、「2作でひとつ」だし、「ストーンズの終わりと始まり」など、色々な言われ方がされている作品だ。しかしその色々な言い方をされている根本は、やはりブライアンが関わった最後の2作であるし、無論、その出来栄えが見事だということもあるし、時代的なことでいえば60年代の最後を飾った作品であること。筆者の場合もやはりその「歴史的事実」を一番重視している。

ストーンズの最高傑作を筆者は、前作「ベガーズ・バンケット」としているが、無論、本作品は音楽的な完成度や、内容に関していえば、こちらの方が上回っているという意見に対して否定はしない。「ブライアンが関わっている」という言い方をしているように、この時点に置いて最早、ブライアンはこのバンドに置いて全く主導権を失墜していたことは明白だ。だが、その中にあって、前作の前後に「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」をヒットさせ、新しいミックとキースの方向性を示した事と、前作でブライアンが作品に最後のプライドを持って参加していたことと比べれば、この作品のブライアンは最後の参加であるが、殆ど付け足しであることが分かる。そして本作の魅力はなんといっても、ミックとキースの楽曲が全編で開花したところにある。これはただ単にストーンズの歴史だけでなく、ポップ音楽の一大事である。正直、60年代の最後の最後でストーンズはポップスの集大成を発表することができたのであり、これは、ビートルズも、シュープリームスもできなかったこの次元の頂点なのであるが、一方で重要なことは、この頂点を極めるためにストーンズが歩んだ道標はブライアンが中心であったこと、そう、白人に黒人のブルースを聴かせるという、彼らの音楽的哲学があったからこそだということなのである。このアルバムに収録されている、”Gimme Shelter”、 “You Can't Always Get What You Want”などは、従来のストーンズの路線を踏まえつつ、新時代へのポップ音楽の胎動を感じることができる新しいサウンドであり、また、”You Got the Silver”はブライアンの曲であるが、キースがヴォーカルを取ったりしている。”Midnight Rambler”も如何にもブライアンらしい曲で好きだ。そしてすべての曲が70年代以降の新しいポップ音楽を先取りしている姿勢に、この作品には、ストーンズの二つの決意、ブライアンなき後のストーンズと、ビートルズなき後のロック音楽を担うべく責任が感じられる作品である。

もうひとつ、特筆すべきが”Country Honk”である。この曲はご存知、1969年に全英、全米で共にNo.1に輝いたあの” Honky Tonk Women”と歌詞は違うが同じメロディである。本アルバムが発表になる5ヶ月前に発売。ファンの期待も虚しくこの作品には集落されず、以降、アルバム未収録(ベストは除く)となったが、このあたり、前作のジャンピング・ジャック同様、ストーンズのプロモーションも一貫性があって冴え渡っていると思う。


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