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水曜日の朝のこと。
妻が突然『「みいちゃん」の羽子板を買いに行くの』と、言いだした。
女の子が産まれると"羽子板"を買って健やかな成長を願うのが慣例(男の子は破魔矢らしい)だというので、長女「ひいちゃん」の時は"あっちバアちゃん"がガラスケース入りで名前も入った羽子板を買ってくれた。
次女「ふうちゃん」の時は、"置き場所に困るからいらないよねぇ"と言っていたのだが、「ふうちゃん」が大きくなってから『自分のが無い』とスネたりしたら困ると言うので、正月になってから慌てて買いに行った(人形屋さんで羽子板を片づけようとしているところを間一髪で買い上げた!)。
というわけで既にガラスケース入りの羽子板が2つもあって場所を取るから『「みいちゃん」のはいらないよねぇ』と夫婦で話していたので、アタシは妻の言葉に『やっぱ羽子板買うんかい!』と心の中で突っ込んだ。
が、妻の言葉が絶対なので覆すことは不可能であった。
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なんでも『ガラスケースはもう必要ないから、ちっちゃい羽子板を買って「ひいちゃん」か「ふうちゃん」のケースに一緒に入れる』のだというのだ。
それはそれで「みいちゃん」が大きくなった時に『なんでアタチのだけちっちゃいの?』と不満を言われそうだが、その時の回答は妻に一任することにしよう。
『でね、羽子板市に行って買ってくるの』と、妻は続けた。
羽子板市って、浅草の? と、聞き返してみたらビンゴ!であった。
妻が何か言いだす時は、詳細まで決まっていることが多い。
今回は、「みいちゃん」のために、ちっちゃい羽子板を、浅草の羽子板市の最終日である19日の土曜日に、高速を使って(すなわちアタシの運転で)、家族みんなで買いにいくんだよ、ということまで決まっていた(もっと言うと羽子板のサイズも決まっていたし、そのあとお台場に行くことも決まっていた)。
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しかし、前日の事故で予定は白紙になった。
旅行先で「みいちゃん」の具合が悪くなったら、大変だからである。
それでも今年の羽子板市は19日が最終日。来週行くわけにもいかない。
と、いうことで久しぶりの「ひいちゃん」との二人旅が決定した。目的は"妻のイメージ通りの羽子板を買ってくること"だ。
車だと時間が読めないし、駐車場探しが大変なので、東武電車で浅草に向かう。「ひいちゃん」スペーシア初体験である(が、あまり感動してくれなかった)。
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浅草は普段から大勢の観光客がいるのだけれど、羽子板市ともなれば歩くのに苦労するほどである。
雷門から仲見世を抜けると、20件近い羽子板売りのテントが所狭しと並んでいた。行く前は"どの店もあまり変わらないだろう"と考えていたのだが、その店その店で個性があって、大きさも仕上がりも値段も違っている。
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それはそれで予定外である。個性が違うとなれば、一通りすべての店を見て廻り考えなければならない。しかし、店の前には人だかりが出来ていて品物を見るのでさえ苦労をするほどだ。おまけにアタシは迷子にならないようにと「ひいちゃん」を抱っこしているのである。
アタシは『やっぱ羽子板買うんかい!』と、妻に言えなかったことをもの凄く後悔した。
(つづく)