年が明けてからはじめてのボランティアの日、新しいノートをめくるような気持ちで二葉館の戸を開ける。
今年は暖冬だが、書庫でずっと座り続けていると、しんしんと足元から冷えてくる。もちろん、暖房ははいっているのだけれども。これは冬だけではなく、書庫は夏でもひんやりとする。それで、かれこれずっと冬も夏でも、ひざ掛けと予備の靴下を持ってくるようになっている。まあー、極度の冷え性な私ではあるのだが。
今日は、歌集の整理が多かった。
伊藤一彦歌集『火の橘』には、春日井建のものと思われる書き込みが少しだけあった。えんぴつとペンの二種類の跡。この歌集の代表歌とされるような、「啄木をころしし東京いまもなおヘリオトロープの花よりくらき」のものにはしるしはなかった。たとえば○がついていたのは、こんな歌である。
われもまた破れをもてば立ちつくし羽をひろげし孔雀に応ふ 伊藤一彦
寒ざむしき朝日なるかな真鴨らに羽摶(はう)て羽摶てと声投げつけし 同
『薫染』は、1928年刊行の九条武子の歌集。平福百穂の装丁。口絵に、武子の肖像写真が掲載されている。着物姿が多い中で、洋装で白い毛皮を首にかけている一枚がなんともゴージャス。麗人と呼ぶにふさわしい。また、この歌集の序は佐々木信綱なのだが、44ページにもわたっている。序というには長いかも。この歌集はなかなかおもしろく、九条武子の歌をもっと読んでみたくなる感じがしてくる。
たたけどもたたけどもわが心知らずぴあのの鍵盤(きい)は氷(こほり)のごとし
九条武子
春日井の歌集『海石榴』は、たしか前に整理したおぼえがあるのだが、今回ふっと奥付に目がとまる。印刷日が、1977年12月20日で、発行日が1987年1月18日なのである。春日井建と春日井政子のそれぞれの誕生日ではないかと気がつく。
「短歌四季」の、尾崎左永子アルバムの中に、春日井建の姿を見つける。1993年NHK全国短歌大会のときに対談をしている写真である。また、これには、春日井建の歌が三首掲載。
雑木の芽立ちのうへをははらぎて日にきらめける雨の吹き過ぐ 春日井建
雑木々は雨後の光にけぶりたち柔らかき浄衣ふはりとまとふ 同
風象はおのづから見ゆひるがへり芽裏を見せる柳細葉に 同
●本日の蔵書整理(整理順)
森山晴美歌集『畑中の胡桃の木』1985年
伊藤一彦歌集『火の橘』1982年
高瀬一誌歌集『喝采』 1982年
小瀬洋喜歌集『地球遺跡』 1974年
九条武子歌集『薫染』 1928年
春日井歌集『海石榴』 1978年
川田順歌集『寒窗記』 1940年
「東海地域文化研究」創刊号 1990年
「短歌四季」夏 1995年
今年は暖冬だが、書庫でずっと座り続けていると、しんしんと足元から冷えてくる。もちろん、暖房ははいっているのだけれども。これは冬だけではなく、書庫は夏でもひんやりとする。それで、かれこれずっと冬も夏でも、ひざ掛けと予備の靴下を持ってくるようになっている。まあー、極度の冷え性な私ではあるのだが。
今日は、歌集の整理が多かった。
伊藤一彦歌集『火の橘』には、春日井建のものと思われる書き込みが少しだけあった。えんぴつとペンの二種類の跡。この歌集の代表歌とされるような、「啄木をころしし東京いまもなおヘリオトロープの花よりくらき」のものにはしるしはなかった。たとえば○がついていたのは、こんな歌である。
われもまた破れをもてば立ちつくし羽をひろげし孔雀に応ふ 伊藤一彦
寒ざむしき朝日なるかな真鴨らに羽摶(はう)て羽摶てと声投げつけし 同
『薫染』は、1928年刊行の九条武子の歌集。平福百穂の装丁。口絵に、武子の肖像写真が掲載されている。着物姿が多い中で、洋装で白い毛皮を首にかけている一枚がなんともゴージャス。麗人と呼ぶにふさわしい。また、この歌集の序は佐々木信綱なのだが、44ページにもわたっている。序というには長いかも。この歌集はなかなかおもしろく、九条武子の歌をもっと読んでみたくなる感じがしてくる。
たたけどもたたけどもわが心知らずぴあのの鍵盤(きい)は氷(こほり)のごとし
九条武子
春日井の歌集『海石榴』は、たしか前に整理したおぼえがあるのだが、今回ふっと奥付に目がとまる。印刷日が、1977年12月20日で、発行日が1987年1月18日なのである。春日井建と春日井政子のそれぞれの誕生日ではないかと気がつく。
「短歌四季」の、尾崎左永子アルバムの中に、春日井建の姿を見つける。1993年NHK全国短歌大会のときに対談をしている写真である。また、これには、春日井建の歌が三首掲載。
雑木の芽立ちのうへをははらぎて日にきらめける雨の吹き過ぐ 春日井建
雑木々は雨後の光にけぶりたち柔らかき浄衣ふはりとまとふ 同
風象はおのづから見ゆひるがへり芽裏を見せる柳細葉に 同
●本日の蔵書整理(整理順)
森山晴美歌集『畑中の胡桃の木』1985年
伊藤一彦歌集『火の橘』1982年
高瀬一誌歌集『喝采』 1982年
小瀬洋喜歌集『地球遺跡』 1974年
九条武子歌集『薫染』 1928年
春日井歌集『海石榴』 1978年
川田順歌集『寒窗記』 1940年
「東海地域文化研究」創刊号 1990年
「短歌四季」夏 1995年