オレンジ屋根のピエール

読書好きの覚書。(過去の日記は老後の楽しみ♪)

「さいごの戦い(ナルニア7)」

2006-08-29 22:06:00 | インポート
C.S.ルイス 作  瀬田貞二 訳
(岩波書店)
ナルニアの国のとある場所で、ずるがしこそうな毛ザルのヨコシマと、人はいいが少し考えの足りないロバのトマドイは、滝から流れ落ちた黄色いもの・・・ものを言わないライオンの死んだあとの毛皮を拾い、それをトマドイがかぶってアスランに扮せば、この国はいずれ自分たちの思い通りになるという悪巧みを考えました。

この偽者のアスランを単に見かけたというものが後を絶たず、そのときのナルニア王・チリアンは心躍らせます。
しかし、星で事象を占うセントールの星うらべは、星ぼしはそのような事実を知らせてはいない、だからうわさを本物と信じていけないと忠告しました。

しかし、チリアンと愛する一角獣・たから石はやはりアスラン出現のうわさをいたるところで耳にします。

しかし、行き着くところで彼らが見たものは、毛ザルがふんぞり返りアスランの唯一の口ききと豪語し、ナルニアの様々な動物たちにカロールメン人のために働くようアスランの名の下に命令をしている姿でした。

どうやらこの企てには、カロールメンのあやしいタルカーンも一枚加わっている様子。あげくに毛ザルとタルカーンはカロールメンのあがめる神タシとアスランは同じ存在だとうそぶくのでした。

チリアンはナルニア最後の王となってしまうのか・・・。危うし!ナルニア。
彼は以前聞いた、違う世界からやってきてはナルニアの窮地を何度も救ったという子どもたちの助けを一心に望むのでした。
そこへ現れたのは、ジルとユースチスでした。

彼らは毛ザルとタルカーン率いるカロールメンとの戦いに備えるべく、策を練るのでした。はたして本当にナルニアは救われるのか!?

最後にはナルニア一の王・ピーターにエドマンド、ルーシー、ディゴリー、ポリーがやってきます。(ここでもうスーザンは、子ども時代の冒険のことはきれいさっぱり忘れてしまい、最後の戦いには参加しません。)

ルイス氏もこのシリーズをどうやって終わらせるか、悩み考えたのでしょうか?
でも悲しい結末ではないので、ご心配なく。

こうやってすべての巻を読み終えて感じるのは、読まれた方のほとんどがおっしゃる、キリスト教の影響が強いということ。
この最後の巻も、ノアの箱舟に似た箇所もあるし、最後などは究極の神の救いを表しているのでしょうか。
え!?そうなの?と思いましたもの。(ナルニアは人々が人生をかけて願う、最後の希望のパラダイス=天国だったのですね。)

どの巻でも作者の感情でだったり、登場人物のセリフにだったりにあらわされている言葉に、「最近の学校ではこんなことも教えないのか!?」というようなものが出てきます。
当時(今も、かもしれないけど)、一般に信心が薄くなっているのかもしれない風潮を憂いてのことなのでしょうか。

あまり仏教国で育っている私たちにはピンと来ない部分もあるかもしれませんが、それを引いても楽しい、読みやすいファンタジーであることには違いありません。
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「ギフト~西のはての年代記Ⅰ」

2006-08-19 15:41:00 | インポート
ル=グウィン 作  谷垣 暁美 訳
(河出書房新社)

西のはてといわれる世界には、高地にすむ”ギフト(たまもの)”と呼ばれる不思議な力を代々受け継いでいるいくつかの族と 低地にすむ、いわゆる”ギフト”など持たない人々が分かれて暮らしていたが、ギフトを持ついくつかの族は、それぞれのギフトの力の大小で、争いが絶えなかった。

カスプロマント族の族長であるカノックには息子がいた。息子オレックは幼い頃から、一族が持つギフト・もどしの力について父親から多くのことを学んでいた。もどしのギフトとは、目で対象物を見て、手でそのものを指し、心の奥から発する言葉で、もどそうとする意志でもって、そのものを元々の状態に戻す(破壊する)という、かなり危険で強力な武器となりうる力だ。

そろそろその力を試す年齢になっても、オレックは力をだすことができないでいた。そのことが焦りとなり、そして怒りとなり、あることをきっかけに爆発的にその力を見せ付けることになった。
それは自分でその力を使おうとする意志とは関係なく、自ら制御できない危険なギフトになっていた。その”荒ぶるギフト”のために愛する家族や大事な一族の民を守るには、そのギフトが正しく使えるまで目隠しをしてすごさなければならなかった。

しかし、そのオレックの状態は隣り合う好戦的なドラムマント族を脅かすに足りるものだったが・・・。

血筋として受け継がれるべきギフトがなかなか使えず、使ったら危険な人物となり、目隠しを余儀なくされた少年オレックの、家族やまわりの者たちとのさまざまな葛藤と、こころの成長を描いています。

「ゲド戦記」を読んでいるときにも感じたのですが、ル=グウィンの表現にはどこか大人の冷静なものが感じられ、普通子供向けのファンタジーに感じる高揚感とはまた違った趣があります。
それでも、このお話でも独特の架空の世界で生きる主人公たちの物語のあらすじに、ドキドキしながら読みました。

3部作であるこのシリーズ、また第2巻で別の少女のお話がすぐ出るようですが、成長したオレックも登場するとのことで、とても楽しみです。



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「魔術師のおい」(ナルニア6)

2006-08-12 09:28:00 | インポート
C.S.ルイス 作  (岩波書店)

これはナルニアという国が、どうやってできたのかという、ずっと時をさかのぼったお話です。
ここに出てきて不思議な国に迷い込む男の子・ディゴリーは後にあのルーシーたちが入っていくタンスのある家の主人である教授なのです。

彼は母が病気がちで、父親がインドに行っている間おじ夫婦の家に世話になっていました。そのおじ・アンドルーは変わった人で、その昔名付け親であるルフェイ大おばあさん(妖精の血を受け継いだ人間の一人)の持っていたアトランティスの土から、こっそり指輪を作ったのです。

その指輪は、黄色と緑色の2種類。黄色をはめると現在の世界からある森と池のある空間に飛び、緑色をはめるとその池から別の世界へ行ったとき元の世界へ戻ることができるのです・・・が、おじさんは自分では確かめられず、ディゴリーと、隣に住む少女ポリーを使って、実験を試みたのでした。

でもディゴリーたちがつい入ってしまった「終わってしまった世界」から”悪”をいっしょに連れてきてしまったために、大変なことが起きてしまいます。

子どもたちは、冒険の中で様々な誘惑という”悪”と立ち向かわなければなりません。
いわゆる「禁断のりんごをかじったイヴ」や「パンドラの箱を開けてしまった伝説」などが、このお話の要素として取り上げられているように思います。

またディゴリーが病気の母親を思う気持ちが、ものすごく切実に表現されておりせつなくなります。

たくさんの教訓が満ち満ちたお話は、ぜひ子ども時代に読んでもらいたいものですね。
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