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国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

小金井市の焼却施設と新庁舎問題

2009年04月18日 | 廃棄物政策
 二枚橋焼却場以外の建設候補地とは蛇の目ミシン工業小金井工場跡地である(写真)。
 17年前(1992年)小金井市は1.1ヘクタールのその土地を119億円で買収し、現在も市債の償還が続いている。近隣住民はそこに市役所庁舎が建つものと信じていた。
小金井にミシン工場ができたのは1936年である。当時はまだ帝国ミシン株式会社という名称であった。この工場には、全国120の工場からのミシン部品が集まり、ミシンの組み立てと検査を行っていた。1985年の時点で、1500台/日の生産量だったという。小金井工場の転機は1993(平成5)年、高尾に新工場が完成した時点である。ミシンの主要な部品は山梨の工場から輸送されてきているため、高尾の方が輸送面でメリットが大きかったことも移転の理由だった。そして1998年、小金井工場は高尾工場に統合され、跡地が残った。

◆税金の無駄遣い
 しかし10年前(1999年)に初当選した稲葉孝彦現市長は翌2000年、武蔵小金井駅南口再開発の中で「駅前新庁舎」建設計画を発表している。 これに対し市議会側は税金の無駄遣いとして計画撤回を求める決議を過去2回行った(01年6月と9月)。
 稲葉市長は蛇の目ミシン跡地を売って駅前庁舎建設の足しにする考えだったが、バブル崩壊後、売却価格は大幅に下落していた。専門家の試算では約43億円。単純に計算しても119億円-43億円=76億円の損失となる。
 現在の市役所本庁舎は武蔵小金井駅から南西に約1.5キロのところに位置しているが44年前の建設で老朽化が著しい。その100メートル先に近代的な鉄筋8階建ての第2庁舎があるが、これは市が民間から借りている建物である。リース料は年間2億3000万円で、すでに15年間にわたり支払いがつづいている。賃貸契約は今後5年間延長することになっており、その額は駐車場代や管理費を含めると、総額50億円を優に超えている。
 このため、本庁舎と第2庁舎をまとめた新庁舎建設問題が常に浮上していたのだが、買い取った当時は資金不足などのため、建設は断念されたという。
「リース庁舎に50億円も払っているのであれば、とっくに、買い取った蛇の目の工場跡地に建っている」というのが市民の率直な声である。
 これら一連の事態に多くの市民が反発。昨年6月8日、「駅前庁舎の是非を問う住民投票を実現する会」(以下「実現する会」)を立ち上げ、住民投票条例制定に向けた直接請求署名を1万人以上集めた。
 その案件を審議する市議会臨時会が本年1月19日~21日に開催されたが、激論の末、22日未明、1票差で条例制定案は否決となった。賛成は共産、みどりの会、民主1の10人。反対は市長与党の自民、公明、改革連合の11人だった。民主の議員があと2人いたのだが、どういうわけか彼らは議決に加わらず退席した。
こうして市長の計画は首の皮1枚でつながる形となったが、市民側はむろん納まらない。
 
◆市議会勢力逆転!
3月に入って事態が再び動いた。 それは「18歳以上の市民(登録外国人を含む)が1割以上を超える署名を集めて直接請求すれば自動的に住民投票を実施する」という異例の条例案〔市民参加条例)が13対10の賛成多数で可決されたのである。
 この結果、住民が有資格者の10分の1を超える署名を添えて直接請求した場合、市長は住民投票の実施を拒否することが出来なくなったのである。
 これまでの住民投票は議会が可決しても市長の拒否権でほとんど葬り去られてきたのである。
 この規定に従えば署名の有資格者は約9万5,000人。これに対し本年1月に否決された際に集めた直接請求署名は1万252名分だったから市議会の議決を経なくても実施が可能となる。
 当日の定例会で与党側は必死の抵抗を試みた。たとえば署名数を16%以上と市、投票率が50%以下だったら不成立、とする修正案を提出したが、あえなく否決された。
 この勢いは3月29日行なわれた小金井市議選に持ち込まれた。駅前庁舎反対の候補者は12名中11名が当選。市長派と目された賛成候補は7名立候補したが、4名しか当選せず、議会勢力は完全に逆転した。

◆冷静な市民の声
 前出のK氏がいう。「3月半ばに駅前再開発の第1地区が完成して、その祝賀会があったのですが、理事長の乾杯あいさつでこんなくだりがありました。『駅前庁舎は付録みたいなものだから身の丈にあった庁舎を蛇の目跡地に造ったらいい』。これには市長も保守系議員もショックでシーンとなったそうです」。
以下、駅前庁舎についてweb上に寄せられた市民の代表的意見を紹介しておく。
《小金井の庁舎問題が迷走を始めてから、10年以上が経ちました。バブル期に庁舎用地として119億円で購入したジャノメ跡地(現評価は45億円)のローン返済は重く、庁舎建設基金も積み立てられず、その一方で他に類のない「賃借庁舎」が続いています。稲葉市長は、リース庁舎はそのままに貯金もない中で、再開発事業成功の担保として新たな借金による武蔵小金井駅南口再開発の第2地区に庁舎を、と方針変更しました。
 庁舎問題は「場所」だけでなく、市役所の「あり方」、市職員の働き方も重要です。
 大きな本庁舎に人や仕事の権限など全ての機能を集中して、一元化するのでなく、住民参加と住民自治の視点から、人も仕事も各地区、各領域へ分散化することや「賃借庁舎」の買取という道もあります。駅前大型市庁舎には反対。市民参加による市民のニーズに即した財政負担の少ない庁舎問題の解決を求めましょう。
そもそも再開発ビルのフロアが大幅に売れ残りそうだからと、その分を買って豪華文化ホールや市役所を作る計画は、市民に大きな借金を残します。環境破壊もますます明らかになっていきます。現計画の超高層マンションと、大型駐車場や大規模スーパーは「はけ」につながる水の自然、緑、そして交通渋滞など市民の暮らしを破壊します》。

◆燃やさないごみ処理?
 焼却施設の建設と新庁舎建設という「二兎」を追ってきた稲葉孝彦市長の目論みは結局一兎も得ずに破綻しそうな気配である。焼却施設の方はとりあえず八王子市や国分寺市の支援であと半年間(うまくいけば1年間)は持つとしてもその後、いくつかの自治体に「人道的見地からの支援」を要請するために動かねばならない。そのため市民の側も市長リコール運動は手控えているようだ。こうしていま小金井市はつかの間の静謐状況にあり、そこを狙っていくつかのベンチャー企業が「燃やさないごみ処理」という技術の売り込みを図っている。
たとえば生ごみ処理では「亜臨界」「バイオガス化」「高速減圧発酵処理」「機械的乾燥化処理」、その他の可燃ごみについては「炭素化処理」「炭化処理」など、多彩を極める。
 だがその手の話にうっかり乗れない、と市民側・議会側ともに慎重だ。「亜臨界については家庭ごみ処理の実証データがない。炭素化技術は実証装置自体未完成であり、一般可燃ごみの処理データが極めて少ない」(実現する会資料「新ごみ処理施設建設についての検討」09年2月19日)。



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