2014年9月18日(木)読売新聞朝刊1面
日本の政治家でイスラム国が蠢動するイラクやウクライナ情勢で日本がとる対応の知見を披露した人はいない。マスコミも同じだ。議論の大部分が中国への懸念表明や米国の対中政策、米韓関係、日本の集団的自衛権議論の説明など、東アジア地域の問題に費やされてきた。集団自衛権の議論も、安倍首相が事例を設けて国民に説明したが、”事例”にない事態には対応できない。本質を離れてかえって歪んだものになった。外国からみれば、日本独自の奇妙な論議に見えるであろう。
政府のマスコミも尖閣諸島の防衛、竹島や慰安婦問題や北朝鮮による拉致被害者の救済や北方領土返還など、どれをとっても日本が抱えた重要な問題であるためこれに執心するのは当然であるが、日本が直接かかわらないイスラエルやイスラム国の動向やウクライナ情勢などにな、”傍観”している。欧米や中露からみれば、”一国平和”主義の身の回り外交にすぎないのではないか。米国は日本ロシアや北朝鮮と接近することを妨害する。それに対抗する戦略がどれだけあるのか。
政府の対露制裁強化は、ウクライナの安定に向けて動くことがなく ”拱手傍観”していた ”一国平和”主義の身の回り外交の限界を示している。 下手をすると北朝鮮の拉致被害者救出も、肩すかしを食う可能性がある。
安倍首相は「地球儀俯瞰外交」とか「価値外交」とか言い世界各国を回ったが、これは思いつき外交の域を出ていないのではないか。明確な外交戦略があるのならイラクなど日本から遠く離れた地域での活動に関して、欧米から言われて重い腰を上げる、という悪しき体質を打破すべきである。