定番曲

経年、という単位の時間ではないけれど、
わたしが歌い始めた数年前に観たステージで聴いた歌を、
数年たった最近に観たステージでも歌っているというのは、
ほぼ、どの歌い手の方にもある。
きっと、歌う人も、聴く人の中でも、
大事にされ続けている歌なのだと思う。

わたしはまだまだ未熟で未熟であかんけれど、
歌い始めた数年前は、もっともっと、すごく未熟で、
いつか、あの歌う人たちのように、
安定感を持って、ステージに立てるようになりたいと、
それはそれは切に思った。

まだまだ未熟で未熟であかんけれど、
この数年で、数年分の回数を重ねた分のなにがしかが、
わたしの中に蓄積したとして、
その間にまた、あの歌う人たちは数年分、
きっとどこかに、なにがしかを蓄積させているのだろう。

わたしが数年前にみた、その歌う人は、
時間軸でどのあたりに居たのかわからないけれど、
ほんの少しでも、近づいていられればいいのだけれど。
数年歌ったくらいでは、きっと全然近づけないけれど、
それでも、あの歌う人には見えている景色が
わたしにはまだ見えていないんだろう、
ということは、なんとなくわかるのだ。
わたしの中での定番曲を歌うと、
なんとなくそんなことを思うのだ。


0084