原子力と核兵器

「本来なら、ボーアかシュレディンガーが英霊化して説明するべき内容だが……

天才故に、代役も軽くこなしてみせよう！

やや、役不足感はあるがな」

「なぜ、こいつを呼んだ！」

「御堂くんは、タイトルを見て逃げた……

しかし、そこまで踏み込まんのだろう？」

「はい、原子力研究の意義を一言述べて終わろうかと……」

「ふん……まあ、凡俗な輩は『危険だから』とか『非人道的』とか言っているようだが……細菌と毒がどれだけの人類を殺したかわからんと見えるな……

それに比べれば、原爆の被害者など、微々たるものだ！」

「でも、それは発明されてからじゃないですか……

原爆は兵器として作られて、今後も使われる可能性があるから、毒と細菌に並ぶ可能性はあります。

今から規制……できれば使用を禁止するのはいいことだと思いますが……ね」

「……毒と細菌は『原始』武器だぞ？

生物が作り出す武器だ……

まあ、それを戦略レベルの兵器に変わったのは最近だがな……

そして……

原子爆弾も『原始』的なものだからな？」

「それは、太陽の『核融合』のことですね？」

「放射線も宇宙にいくらでもある。被爆の影響は今の我々にもあるぞ？

大気とオゾン層で『気にならない』程度にはなっているがな……

面白い学説では、放射線の被爆で遺伝子情報が欠損し、その欠損を補うことで進化してきたんじゃないか？

という説を何処かで見たが……ふむ、これは貴様の課題だ」

「（ど忘れしたな……）

以前、原子力研究を続ける意味として『空に太陽がある限り』と、言ったんですが」

「ほう、神に弓引く所業よな……ニトクリスやオジマンディアスがなんと言うか……

しかし、天才ニコラ・テスラは、その所業に賛同しよう。

原子力の研究で、太陽の核融合反応を制御しようという試みは、科学者として大いなる野望だな！」

「まあ、これは僕だけの考えですけどね……

未だに過渡期の研究を『悪』と断罪して否定するのは、狭量だと思います。

研究が進めば『放射能』に対する対抗策ができるかもしれない。

副産物だけでも、社会生活に役に立つかもしれないんです。

だから、核兵器は『必要悪』と思っています……

もちろん『必要』が無くなったら『悪』でしか無いんですけどね」

「そうなれば、世界はもっと簡単に核廃絶できるな」