ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

初詣

2005-12-30 14:07:24 | 着物・古布

一足お先に、破魔矢のイラスト。素材屋さん「薫風館」様よりお借りしました。
あさってはもうお正月ですね。
ご家族そろって初詣にお出かけのかた、寒い上にヒトが多いでしょうから、
カゼなんかもらって帰らないように、よぉ~くお参りしてきてください。

さて、では本日は「初詣のお話し」。
初詣のお話しをするには、まず「神社」と「お寺」のお話しを致します。

昔の日本では・・・とひとくちに言ってしまうところが、とんぼ流ですが、
それぞれの地域にヒトが落ち着き「村」「町」というかたちが形成されて・・
という頃のことです。太古の昔ではありません。
そのころは一定の場所に落ち着くと、めったなことでは引越しや転居は
しませんでした。もちろん特別な理由で転居を余儀なくされることはありました。
例えば菅原道真のように「左遷」されたり、江戸時代の「長崎奉行」のように
期限付きの赴任とか・・。また戦国時代は農民でも出世すれば侍になれましたから
家を捨てて士官するものもいました。そのほか悲惨なところでは
飢饉や凶作による一家離散とか、村ごと夜逃げの「逃散(ちょうさん)」とか。
とにかく、そういった特別なことがなければ、ヒトは生まれた土地を
一度も離れずに、一生をそこで暮らすことがほとんどでした。
戦がなくなり身分制度も確立されると、この傾向はより一層強くなり、
例えば村ごと夜逃げの「逃散」は、お上が禁じていたくらいです。

そんなわけで、先祖代々同じ土地に住み続けるということが「当たり前」でした。
これと「初詣」とどういう関係があるかといいますと、実は初詣というのは
自分の生まれた土地の「神様」にお参りをするのが本当なんです。
「氏神様」という言葉をご存知と思います。では「産土神(うぶすながみ)」は?
現代においては、どっちも同じように扱われているのですが、
「産土神」というのは、その字の指し示すとおり、土を生み出す神。
日本は農業国ですから、土地は「命を生み出し、命を守る」大切な場所、
そこには植物も動物も暮らし、人は作物を実らせ収穫をする・・。
全ての生き物が無事に暮らすためには、地面も川や池も全部大切です。
つまり全部ひっくるめて、その場所をこの世に作り出し守る神様ってことですね。
「氏神様」というのは、読んで字のごとく「氏(うじ)」つまりその名前に
関わるものを守る神様です。どこかの一族、或いは最初ひとりだったものが、
家族を持ち子をなし「一族」を作り上げた、そういう場合の「その一族」を
守る神様です。極端な話し、ある一族が一家全員で別の土地に移り住み、
そこで新しく社を構えたらそこが氏神様、その土地に元々祭られている
土地の神様が「産土神様」です。

結局「人の移動」がほとんどない時代が長く続くうち、この二つの神様は
同じように考えられるようになっていきました。
それで、人は自分の生まれ育った場所の氏神様を自分の守り神とし、
お参りしたり、お守りしたりしたわけです。

一方お寺は少し事情が違います。
歴史は浅くなりますが、江戸時代に入って幕府は「キリシタン」を
厳しく取り締まりました。そこで身分と宗旨を明らかにするために
全ての人間が地域の寺に届出をする、つまり「戸籍」のようなものですね
それを作ることが定められました。お寺はこれをきちんと管理し、
人の出生から婚姻、移動、死亡などを常に把握していました。
どこかへ転出するとか、奉公にでるとか、そういったときはお寺が
「証明書」を発行しました。「寺請証文」と言います。
いまでいう「役所」のような役目をおっていたんですね。
これがいわゆる「檀家制度」です。檀家は仏事についてはそのお寺で
全てを執り行い、お墓もそのお寺を旦那寺として建てました。
菩提寺のことですね。この檀家制度は明治まで続きましたが、
廃止されると同時に世の中が変わり始め、人が動くようになりました。
結局今の時代、実家を離れて暮らすものには「旦那寺」も「檀家」も
死語になってしまいましたね。

神社も同じことで、代々地域に根差して暮らしているとか、
元々街中の大きな神社とかでないと、氏子だの氏神だのという制度も
成り立ちません。そこで近代に入ってからは「有名な神社・仏閣」に
初詣に行くようになったというわけです。

皆さんの家の近くに神社はありませんか?
その土地でずっと暮らしていくのなら、そこがアナタの氏神様です。
赤ちゃんが生まれて「お宮参り」をするのは、本来「子供が生まれました。
この子を新しい氏子としてお守り下さい」というご挨拶なのです。
今度のお正月、地元の神社へ初詣に行くというのも、いいんじゃないでしょうか。
本来のお参りというのは、心を鎮め、清らかなキモチと体で行うもの。
先ずは鳥居の前で軽く一礼、鳥居をくぐったら、参道を進みますが
真ん中は神様の通り道です。少しよけましょう。
手と口をすすぐところ「手水所」へ行き手を清め口を清めます。
「右手でひしゃくを持ちます。はい左・右・左手で受けた水で口・も一度左・・」
の順で清めます。まちがっても「ガラガラッペッ」なんてウガイはしないこと!
ひしゃくに直接口をつけてもいけません。
本殿に進みお賽銭をあげ、鈴があれば鳴らします。「二礼二拍手一礼」です。
しかーし、明治神宮でこれやってたら踏み潰されますね。





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2 コメント

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はじめまして、 (蜆子)
2005-12-30 22:45:03
とんぼさんはじめまして蜆子と申します。

ダン之助さまの掲示板で紹介いただき、伺いました。なんとリサーチの深い!、読者にさせて下さい、そして時々お邪魔させて下さい。よろしくお願いいたします。



初詣、元朝や、鬼ひしぐ手も膝の上

    (桜井梅室、江戸時代文政年間金沢で活躍の俳人です)

そんな元日の朝、我が家の神棚に拍手を、そして産土神に、そして延喜式内社の大きな神社にというのが、毎年の恒例、

もちろん檀那寺、田舎では昔も今もいっしょです。
返信する
ようこそ! (とんぼ)
2005-12-30 22:57:08
蜆子様



はじめまして、ご縁をありがとうございます。

こちらこそよろしくお願い致します。



私の父が次男なので、お墓を自分で用意したのですが

そのお寺のご住職がなくなり、

跡を継ぐかたがいらっしゃらないのと、

今の状況では「お寺」として存続していけない・・

とのことで、しめてしまいました。

何かあると、後事を託された離れたところの

お寺にたのむことになるそうです。

典型的な「都会のお寺事情」ですね。

母は京都の片田舎の生まれなので

「こんなん信じられヘン」と言ってます。
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