ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

このモンドコロが・・?

2006-04-15 20:50:57 | 着物・古布

羽裏がでてきました。使いまわしのようで、短くて少ししかありません。
見事なもようの印籠がぽんぽんとおかれている感じ。

「籠」と言うのは「かご」、つまり本来は竹やつる草で編まれたものを
言うのですが、なぜか「印籠・食籠・薬籠」などは、編まれたものではなく、
「漆器」をいいます。食籠などは、見事な蒔絵のものなどが作られ、
「飾り物」として、贈り物などにもされました。
現在「印籠」というと、時代劇に出てくる武士が腰につるしているもので、
中身は「薬」というのが一般的ですが、印籠はその名のとおり、
元々は「印(はんこ)や印肉」をいれるものでした。
当初は腰にぶら下げるようなカタチではなく、普通の蓋付の箱、
「籠」とつくからには当然、漆、金蒔絵の美しいものが多かったことでしょうね。

まずは「印」というものについて・・。
元々「印」は中国・ヨーロッパから伝わったと言われています。
ヨーロッパなどでは、手紙の封部分に蝋をたらして、そこに自分の印を
押しました。差出人が自分であるという証明と、途中で開封されても
わかるように・・というセキュリティ・・今でも使われていますね。
どこの国でも、まずは「身分」をあらわすものであると同時に、
身分の高いものしか使うことはできませんでした。
日本では「大宝律令」で、天皇御璽とあとは「官印」つまり、政治上の文書に
押印するものが取り決められています。
最初は、すべて「公印」というわけで、個人の印はありませんでしたし、
後年、作られるようになってもかってに作ることは許されず、
お上の許可がいりました。庶民は当然印なんてものは使いませんでした。
時代が下がっていくにしたがって、この「はんこ」ではなく「花押(かおう)」
と呼ばれる、いわば「サイン」が使われるようになった時期があります。
のちのち印が再び使われるようになっても、この「花押」は使われました。
外国では、今も「はんこ」ではなくサインが「証明」として
広く通用していますが、花押は言ってみれば、この名前などをデザインした
独特のはんこのようなサインです。そのため「書き判」とも呼ばれます。
今でも古文書や書画骨董の真贋を決める基準のひとつとして、
花押が本物かどうかを調べるということがあります。

さて、印鑑は花押が使われても「公文書用」として生き延びてきたわけですが、
それでは、なぜ印鑑を入れる器が「印籠」に変化したのでしょうか。
実は、いろいろ調べてみたのですが、これ、という決定打はないようで、
いくつかの推測がありました。私が、なるほどな・・と納得できた説は、
本来「飾り物」として、室内の棚などに置かれている印籠であるが、
薬籠としてもよし・・とすることを書き記した古文書があるのだそうです。
つまり「印籠は薬籠としても使えるよ、いいんじゃないの?」というわけ。
それで、はんこを入れていた器に薬を入れるようになった・・・、
次に、なぜそれが腰にぶら下がったか・・。これは「戦国時代」という
背景が、それを生んだ・・つまり、戦にでていく武将にとって、
薬は大事なのもの、それを戦場で身に着けて持ち歩くには、
小さくして腰にぶら下げる・・・というのが便利だった、ということですね。
やがて世の中落ち着いて、戦場を歩き回ることもなくなりましたが、
便利なものは、世に残った・・というわけです。
「籠」は籠ですが、印籠となると「漆」・・だったわけですが、
江戸時代もさがってゆくと、庶民にもこれが「小物」として使われるようになり、
漆だけでなく、木工品、陶製品、竹製品など、いろいろと凝ったものが
作られるようになりました。それと同時に、この印籠を落ちないように
帯に紐でくくりつけるとき、最後に「留め」として使われた「根付」もまた、
美術品として、高く評価されるほど、さまざまな材質のさまざまな形態のものが
作られるようになったわけです。今では帯に印籠を下げる・・ということが
なくなりましたので、根付はおさいふなどにぶら下げるもの・・
になってしまっていますが、本来はけっこう大きなものもありました。

とまぁ、印と印籠についてのざっとおおざっぱなお話です。
印籠は、たいがい一個だけ、刀とかそのほかの道具などと一緒に描かれて、
羽裏を飾ることが多く、こんなふうに印籠だけを散らした柄は
あまりみたことがありません。もっと小さいものはありましたが・・。
それにしてもドハデな印籠です。着物の柄だからでしょう。
実際に残っている江戸時代の印籠などは、蒔絵の落ち着いたものとか、
粋なもの、木工品などは生地をいかしたあっさりとしたものが多いです。

ところで、皆様は玄関に印鑑を置いていますか?
私は仕事柄よく宅配便が届きますので、シャチ○タ印をおいています。
以前三文判をつかっていたころは、蓋を載せるタイプの「香炉」を
玄関において、その中にいれていました。
ところで「三文判」の由来、これはすぐにわかりますね、
「三文」と言うのは江戸時代の貨幣の一番下「一文銭」が三枚、
つまり「安物」とか「たいしたことないもの」の意味で、
「三文雑誌」とか「二束(足)三文」などという言い方もする、
あの「三文」です。でも三文判と言えども、悪用されないよう注意しましょう。
ちなみに、私の母が再婚する前の姓は「柳島」という、
市内でも親戚しかないという珍名でして、三文判は探してもありませんでした。
ちょっと珍しいお名前のひとは、これってけっこう面倒ですよね。



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2 コメント

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印籠! (蜆子)
2006-04-16 00:25:59
高山に「印籠美術館」があります。

まあ、すてきというか個性的な印籠、そして根付の面白いもの様々、あまりの面白さに何回もいきました。根付、帯の下からはさんで落ちないようにするんですね。「この印籠が目にはいらぬか~」のあの葵の御紋の印籠、あれで何十万もするといつかテレビでいってました。三段になった蒔絵の豪華な印籠、どれだけしたんですかね。贅沢ってどこでもできるのねと感心しきり、あ~、印籠の中に多分入っていたのは、富山の反魂丹です。

茶会、花押がいっぱい、なければ話にならないなんていう勢いです。

あれ、だれでも作ってもいいのかしらね。作ってみませんか?
昔の技は・・ (とんぼ)
2006-04-16 11:58:29
蜆子様

すばらしいですね。

花押は今でも作れますよ。

でも、私はお茶のたしなみもありませんし、

普段使いに「遊印」がほしいところです。

それにしても「花押」はお高いですー!

ちなみにHPはこちらをみつけました。



http://www.kaou-tsuzuli.com/option.htm

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