ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物、きましょかね・・・

2006-04-22 15:04:44 | つれづれ

写真は昭和45年の「雑誌」の1ページ、秋の号で、七五三の特集です。
真ん中の女の子、かわいいですが、注目すべきは、両サイドの女性。
左のかた、帯の上脇がたれてきてますね。右のかたは、おはしょり短すぎ。
次の一枚は、30代後半の頃の私、ヒトのこたぁ言えません。
もちっとすっきり着んかいな・・半衿、波うっとるし・・。



でもさらにウワテがいました。



おばーちゃん、胸元見えても「せくしー」やないでぇ~~。

とまぁ、こんな具合に、同じ「着物姿」でも、
モデルさんたちが着て写っているのとはエラい違いで・・。
でも、実は、これが普通なんです。
たぶん、脇のたれた女性は、このあとちょこちょこっと直したでしょうし、
おばーちゃんは、きっと年寄りっぽいしぐさで、
ひょいひょいと衿元をあわせたでしょう。どうせまた開くんですけどね。
で、とんぼはこのとき、半衿の波うちが気になって気になって、
「朝になってバタバタつけるんじゃなかった、前の晩からつけときゃよかった」と
ずーっと後悔していました。でも「バタバタ」はちっとも直ってませんが。

さて、なんでこんな写真を載せたかといいますと・・、
実はメールでお友達と「着付け」のお話をちょっとしたんです。
メールのあと、3年ほど前のことを思い出しました。
友人が、はかまの着付けを頼める人を紹介してほしい・・・と
電話してきたのです。知り合いを紹介しましたが、そのとき
「アナタは着付けできないの?」と聞かれました。
私は着物を着ますから「こうやって着るんだよ」ということくらいは
教えられますが、他人様の着付けは致しません。
自分なら二重太鼓でも変わり結びでも致しますし、
家族なら男物のはかまでも着付けますが・・・家族なら気楽ですからね。
私の周囲には、かつて着付け教室に通った・・という人が何人かいます。
そういう人たちの何人かが、上の科に進むごとにお免状代が高くなって
到底続けられないからやめた・・と聞きました。
これは着付け教室に限らず、お免状を出す稽古事は、
たいがいそのようですね。大阪の知人は「いけばな」で
師範をしていますが「ここへくるまでには・・」と言っていました。

ところでこの「免状・免許」ですが、とんぼは二つ資格を持っています。
ひとつは「調理師」、もうひとつは「和文タイプ講師」です。
実は今、どっちも何の役にもたってません。
調理師のほうは国家試験を受けての取得ですから、
国内ならどこでも通用します。「和文タイプ」のほうは、それを習った
「タイプ学校」の免状ですから、全国区ではありません。
なんでどっちも役にたってないか、調理師のほうは、結局職業にしなかったので
(就職したいところが大阪の料亭だといったら、母が「なんで一人娘を
板場の修業にださねばならんのだ」と激怒し、そのあと泣き落とされたのです)
結局は宝のもちぐされ・・。今じゃどこにしまってあるかもサダカでない・・。
タイプ講師のほうは、結局その学校だけで通用する免状でしたから、
関東一円のその学校の分校なら、どこでも行けました。
私はその学校にそのまま就職し、研修を2ヶ月やって「講師」になりました。
でもコレじゃ何もできない、と思い、同じ講師でパートできていた人に
相談したところ、自分が下請けで仕事している「印刷所」を紹介してくれました。
ただし、履歴書に「講師」とは書くな・・といわれました。
そこで言われたとおり「○○タイプ学校卒業」とだけ書いてだしたのですが、
なるほど、実際に仕事をしてみたら、学校で講師としてやっていたことなんて
基礎中の基礎・・ただ「機会いじれる程度」だと、わかりました。
なぜかというと、講師は実際には書類を打ったり、
原稿をみてレイアウトしたりはしないからです。見るのは教科書だけ、
人に教えても自分は打たない・・です。タイピストとしてのキャリアはゼロ。
会社からみれば、実践でやってないなら生徒も講師も「初心者」だったわけです。
それがわかったとき、金色のワクで飾られた免状は、捨ててしまいました。

さて、着付け師の免状ですが・・・。これは、私の持っている、いや
今となっては「かつて持っていた免許・免状」と比べると、
両方の特徴を持っていると思うのです。着付け師に国家試験はありません。
着付け教室は、それぞれ個々の団体が開いている学校が多いと思います。
ここで出す免状は、言ってみれば私の「タイプ講師」と同じ、
その学校の中でしか通用しないもの・・です。
でも、私の場合と違うのはその学校自体が全国区で名前を知られていたら、
たとえばどこかに着付け師として就職をする場合、
それなりの段階の免状があれば、「あの学校でこの免許をとったなら」と、
実績として認められます。公的資格でなくとも通用するわけです。
タイプとちがって着付けは毎日が実践です。着たり着せたり・・。
確実に腕はあがっていきますから、当然技量として認められます。
同じ「プロ一年生」でも、私の金ワクの免状とはエラい違いです。

あるブログで、着付け教室で、ひとつ科が終わるとさらに「上」の科へ進めと、
しつこく勧められて困った・・という記述がありました。
知人からは、そうやって進んでいくと、とてつもなくお金がかかる・・
呉服屋とつながりがあるから着物もかわなければならなくなる、
それがたいへんだ・・・という話を聞いたことも何度かあります。
もちろんそういう教室ばかりではないでしょうし、
短期間で、ほんとに「自分で着られるようになるところまで」という
教室もたくさんあると思います。ただもし、そういう状況になってしまって
それで迷うなら、まず自分が「着付け」をどうしたいのか、
着付け師になって、それを職業としたいのか、ですよね。
それならば、免状は着付け師として就職するときも大きな力になると思います。
だとすれば、かかるお金は、自分の将来への投資でしょう。

それにしても、おかしな世の中になったものです。
つい100年ほど前までは、着付け師といえば「芸者さん」とか「役者さん」とか
特殊な着方をする人のための仕事だったわけです。
だってみんな自分で着物着て当たり前でしたから・・・。
親は子供に日常生活のなかで着物の常識を教え、子供は見よう見まねで
きものの着方を覚えていったわけです。
着物離れが始まり、親が子供にそれを伝えなくなってしまったし、
着られる人、着せられる人が身近にいなくなってしまいました。
今、着物を着たいと思う人は、着付け教室に通わければならないわけです。
私が子供の頃は、親とか近所のおばちゃんが「着付けの先生」でした。
親がきせられないと、隣のおばちゃんに頼んだり、おばあちゃん呼んだり。
たとえば結婚式だの成人式だの、そういう特別なときは、髪も結うし、
プロは見目良く、華やかな帯結びなどをしてくれますから、
両方とも「美容師」さんに頼んだわけです。
美容師は国家試験での資格取得ですが、着付けは化粧とともに、
その資格の中の「技能」であって、着付け師という免許はありません。
今の着付け教室は、美容師が資格をとるための教室ではなく、
フツーの人がフツーに着るための教室です。本来資格だの免状だのなんて
なんにもいらないはず・・・ですよね。たとえば着付け師めざすにしても、
「着付け師というのは免許がないとできない仕事」ではないはずです。
もしアナタが自分もちゃんと着られる、人に着方を教えてあげられる・・なら、
何も免状がなくても「着物の着方教えます」と看板あげてもいいわけですよね。
そう思いませんか?それは実は、昔の親や近所のおばちゃんが、
みんなやっていたことなのですから。
HPを見ていたら「免状を出さない着付け教室」というところがありました。
こういうところもあるんだ・・とちょっとうれしくなりました。

私は今の着付け教室が悪い・・おかしい・・と責めているわけではありません。
着物を着ることを教えてくれる人が身近にほとんどいない現在、
そうやって習いに行くことは、着物を着られるようになる一番の近道です。
ただ、習うなら何か免状とか、段・級というものだけに目を奪われないように、
何のために必要か、自分にとって必要か・・と考えて上を目指すように、
とそう思うのです。

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社会に出るまで、 (ぶり)
2006-04-22 20:52:17
着付け教室は、プロの着付け師を養成して、歌舞伎座とか、新派の劇場、太秦の衣装部、芸妓の置屋などで、働くものとばかり思い込んでいました。

ある時、ひょんなことから、自分で着付けできるようになるための所と知って、びっくり仰天。

私と同年輩でも、自分で着物を着られない人が結構いるのだと知った時の驚愕は、今でも、鮮明に覚えています。

娘の頃、○月○日には、これを着るからと一式渡され、家で着る練習を事前にしていました。「民族衣装を自分で着られないなんて、海外旅行の時どうするの」が、母の口癖でした。



昨今の文化断絶状況を考えると、着付け教室の必然性はわかりますが、格式に応じて美しく着ることばかりでなく、普段着として着るときのコツなど主体に教えればよいのにと思っています。

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着方 (蜆子)
2006-04-22 21:45:39
着物って洋服ではないけど、ただ身にまとうもの



ぐずぐずの着方、あのばあちゃんのような着方、本人は結構楽らしい、私のお茶の先生、どちらかといえばぴしっとしてなくてぐずぐずの着方、これが何年もみなれていると、これがその人の個性になってしまうのですね。



着付け教室のびしっとした着方、

これはきれいな着方の基本で、なにもそんなに頑張ったきかたせいでも~という体のもの、

着物姿が特別にも見えず、みるからに楽そうに身に添うている、これがあらまほしい着方では



木綿者も、柔らかものも一様にびしっと着ようとすると、おや今日は何かありました?になってしまう



なにもなにも、経験、ぐちゃぐちゃでもいいから着慣れるとどうにかなっていきますって、というのではあきませんかね。

返信する
資格は・・・ (陽花)
2006-04-22 22:20:18
とんぼ様



私も一応着付師にのはしくれですが

同じ着付師といっても段々で私が習った

先生は魔法の手というほど、どんな着物や

帯でも手早く綺麗に着付されます。

そういう方が本当の着付師なんだと思います。



成人式なんか見に行くと着物はぐさぐさ帯は

おっこちそうなんて娘さん時々おられます。

お母さんに着せてもらったの?なんて聞くと

いいえ、着付してもらいました。との答え

だから、とんぼ様のおっしゃるとおり資格は

なくても綺麗に着せられればそれでいいと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-04-22 22:32:11
ぶりねぇ様

それぞれのご家庭の状況・事情にもよりますが、我が家のように「お茶・お花」にとんと縁のない家でも、母がずっと着物を着るひとでしたので、私は着物がいつも身近にありました。こんなことを言って責めるつもりはありませんが、私たちの親と私たちの年代が、着物からはなれてしまったんですね。伝えられなかった分、いまからでも、ほんとはきものってカンタンなんだよ・・と教えたいですね。



蜆子様

着物を着るのが結婚式だの成人式だの、きちっと着るときだけの「特別なもの」になってしまって、着物はきちんと着るものだ・・になってしまいました。きらーくにきればいいんですけどねぇ。「しりっぱしょりにたすきがけの雑巾がけ」・・なんてのは、時代劇のなかでしかみられなくなってしまいました。
返信する
ほんものですね (とんぼ)
2006-04-22 22:53:26
陽花様

そうなんですよね。人に着付けられるということは

ほんとにすごいことですよね。

私、結婚直後の近所周りの挨拶、姑の知り合いの

美容師さんに着付けてもらったんですが、

まぁ苦しい苦しい、そのくせ踏んでもいないすそが

だれてきて、自分で着たほうがよかった・・・と。

いい着付け師さんと出会うのは、

くじ引きみたいなものです。

陽花様、いい先生でよかったですね。
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ほんと、そうですね。 (ぶり)
2006-04-22 23:54:06
戦後50年間のアメリカナイズ、猫も杓子も、アメリカに追いつけ追い越せ、それが着物離れの原因ですよね。

せめて、私の世代が着続ければ、それなりに伝わるかも~と思っています。

若い人の着物ブーム、和物趣味、我々と上の世代の反動なんでしょうね
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ですからして・・ (とんぼ)
2006-04-23 00:10:24
ぶりねぇ様

HPで「着物術」「こんな着方」「これもあり?」

なんてタイトルで、いろいろな着方、

たとえば正統派「お茶席の着物」とか

「縞の着物」とか「花見の晴れ着」とか、

そんなふうな「実践・実戦?」の写真を

並べたりしたいと思ってます。

その節はごきょーりょくお願いしまっす!

お顔は、ちゃんと画像処理して隠しますから。
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そうそう (蜆子)
2006-04-23 10:19:30
私たちの親から伝わらなかった、というのはなにも着物だけの問題ではなく、家庭料理をはじめとしたこまごま全てといわれています。というのも、戦争で今までの価値観が間違っていた、あるいは本人を尊重してという甘い言葉にほだされて、なにも教えないというのが正しいと思ってしまったのですね。



前の世代、私たちからすればじいさん、ばあさん世代からの価値観は否定され、じゃ新しい秩序は?ということが構築されないまんま、

親から厳しくしつけられたかた、そんな幸せな方?はいなくなった、

着物って文化?という有様、

こりゃ根が深いわ。

ごまめのはぎしりかもしれないけど、今踏ん張らないと根なし草状態は続く~。
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そうですね、料理も・・ (とんぼ)
2006-04-23 12:43:23
蜆子様

私は母が短気でしたから、叱られて育ちました。私が子供のころに、洗濯機だの冷蔵庫だの、便利なものが家庭で使えるようになり始め、ちゃぶ台からテーブルの暮らしになりましたけれど、それでも「洗濯物はこうやって干すと、早く乾く」なんていう「暮らしの知恵」みたいなものは、うるさく仕込まれました。ブツブツいうと「嫁に行って困るのはオマエや」というのが口癖でした。なるほど、おかげさまで結婚しても家事については、何も困りませんでしたね。
返信する
舞踊の教室で… (りさこ)
2006-04-23 16:22:43
とんぼさま♪

今月から新舞踊(演歌に日舞の振り付けをしたものです)のお稽古を始めましたが、そこで五十~六十代のお姐さま方の半分が「帯が締められない」と言われてます。お稽古は浴衣に半幅帯なんですけどね…貝の口も一文字もできない。そこで、できる人が手伝ってますが、教えるほうも適当です。踊りの先生は着付けは教えないので、毎回、なんだかな~と思ってます。着付け教室では浴衣は基礎なのに、基礎もできない五十代~六十代の方が大半なのが実情です。その娘である現在子育て中の娘たちも、当然ながら着物の知識はゼロでしょう。こうなったら、民俗教育として、学校で浴衣の着付けくらいは教えてもらわなければ、本当に着物文化が消滅してしまいますね
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