ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

夏着物

2009-08-20 17:09:19 | 着物・古布
写真はまたしても「流用」、古い絽の留袖です。


まぁ昨今は、夏が暑いですから、9月に入ってもまだ絽や紗を見ますが、
6月に少し早めに薄物を着たりするのは、まぁ…いいかなと思うんです。
これから暑くなる、といいますか、なんか「先取り」の感覚で。
でも、できれば薄物から「単」は、キリッと切り替えたいなぁというのが
私の感覚です。と言いつつ、実際には暑いから洋服…コレコレ。

よそ様のブログで「絽の喪服」の話が出ていまして…。
お葬式ばかりは、相手に「夏の葬式はやめてね」とはいえませんしねぇ、
結婚式と違って、クーラーのきいているところでじっとしてるだけでは
ありませんし…。私は、先日母から絽の喪服をもらったのですが、
考えたら「幸いにも」今までの身内の葬儀で「夏」はありませんでした。
友人などの場合なら、紺の絽があるので、それに「両面で夏冬使える」って、
あの手抜き作り帯でいいわけですが、今までなかったのを気にもしていなくて…。

最近は、ご遺族が喪服ではなくブラックフォーマル、というのも多いですね。
正直そんな時は「半喪服」でも、いいのかなーと気を使います。
アタリマエのようにお通夜も告別式も、みんなブラックフォーマルですから、
そのあたりのしきたりも、ごちゃごちゃになっているんですよね。

実は、そのよそ様のブログで私、
書かんでもいいことを書いたかもしれないなぁと…。
いえ、うそを書いたわけではないのですが、
今「礼装」というもののさまざまなことが、いろいろ変わってきていますから。
たとえば先日の「絽の留袖」もそうですが、私が結婚したころは、
やっと大きな公共施設ではクーラーが行き渡ってきたころです。(40年前)
でも、今みたいにシステム的に流れができていませんから、
みんな家から留袖を着ていく…おまけにめったにないことだから、
絽の留袖なんて「持ってないわよっ!」…だから式が8月だなどというと
「夏に結婚するなんて」と、ひんしゅくを買ったものです。
昔の結婚式場って、仏滅と夏場はすいてたんですよね。
今じゃ、体ひとつで行ってあちらで着せてもらって、脱いで帰ってこられる。
だから「夏でもクーラーきいてるし、袷でいいじゃない」になるし、
ひとりだけ絽の留袖や訪問着だと浮くとか、この前のいただいたコメントでは、
絽の着物は写真写りが悪いんだそうです。
絽の留袖は、実は着る機会が増えたにもかかわらず、
なんと!袷に取って代わられたわけですねぇ。

そんな風に、いろいろ変わってきてしまうと、
ルーズになることがたくさん出てきます。
これは今までも何度かお話していることなんですけれど、
どこかでのライン引き、っていうのは、守ったほうがいいのではないかと、
いつもずっとそう思っています。
例えば、結婚式もけっこう自由なパーティーの外国でも、
「白」は花嫁の色ですから、出席者は白いドレスは着ません。
そして、花嫁さんは必ずどこかに「白」以外の色を使います。靴下止めとか…。
それをすることで幸運になれる、という言い伝えがあるから。
そして花嫁が花束を投げるブーケトス、でうまく取れた人は、
次のお嫁さんになれるから、必ず行われる…。
そういうことは、ちゃんと守られるわけですね。
日本も、そんなに厳しくすることもないとは思いますが、
「理由のあること」は、その理由を知れば納得もできると思うのです。

まず「喪服」ですが、ややこしいので着物の黒喪服を「喪服」、
洋装のブラック・フォーマルは、ただ「洋装」と書きます。
葬儀には「遺族側」と「一般会葬者・参列者」がいます。
これも長いので「遺族」とお通夜も告別式も「会葬者」と書きます。

まず…
お通夜では、遺族は「喪服」、会葬者は「地味な服装」、これが原則です。
つまり会葬者の場合は、着物ならジミな着物に地味な帯、黒羽織、
もしくは地味な着物に黒帯。この場合、それ以外のものは黒でなくても
ジミであればOK、昔はこういうときのために「縞のお召し」がありました。
洋装も同じで、地味な色のスーツやワンピース。
このとき、黒のブレザーとかスカートだけ黒とかでもいいわけです。

だいたい葬儀というのは「突然」ですから、家の者だってバタバタするものです。
コレばっかりは、あと二~三日だから葬儀屋さんに電話しといて…
なんてことはしませんから。
礼装というのは、相手のあることですから、相手に合わせるし、
相手の状況をおもんぱかる…ということがあります。
お通夜に「割りと普段ぽく」でいい、というのは、
遺族側もまだ落ち着いてなくて、喪服を着ていない場合がある、というのと、
「しっかり支度していったら、いかにも『そろそろだと思って準備していました』
というようで失礼だから」…ということ、
そして、弔問するのに「まぁ急なことで驚きました。とるものもとりあえず、
駆けつけてまいりました」という気持ちを表す、この三つの理由からです。
だから、そんなにピシリと真っ黒けでなくてもいいのです。
むしろ、この理由からいけば、真っ黒けは失礼ってことになりますね。

また「喪服」は、本来原則「三親等まで」の身内が着るものです。
だから、会葬者が着るのは、お通夜であれ告別式であれ、実は失礼なんですね。
ところが洋装のほうは、割とそのへんがゆるい…。
といいますか、ブラックフォーマルは着慣れた「洋装」ですから、
一そろい出せばそれですむ、めんどくさくなくていいんですよね。
私は元々洋装のルールと、和装のルールを一緒に考えるのが、無理なのだろうか、
とそう思います。いえ、みんなが細かいことを知っていれば、
着物だったらこう、洋服だったらこう、という黒だけでない服装が、
混在してアタリマエで、なんの不思議もないことなのですが…。
いつのころからか、お通夜も告別式も真っ黒け、になってしまい、
そこへ「ルールどおり」の着物で行くと、浮いたりする…。
お通夜・告別式に参列するというのは、そうそうあることではありませんから、
お若い方などは、細かいことは知らないまま「みんなそうだから」と、
お通夜でも当然のように「全身黒一色」の洋装でいく…。
そのなかで一人、茶色のスーツとか上着だけ黒でスカートはグレーなどだと、
知ってる人は「お通夜だからあれでいい」と思ってくれるけど、
知らない人には「あの人黒着てないのね」と思われてしまう。
実際は、洋装でいくときもお通夜なら、ストッキングだけは肌色、とか、
スーツなどの場合なら、ブラウスだけ白にするとか、上着だけ使うとか、
どこかひとつ「ランクをさげる」のが決まりです。

さて、次に告別式ですが、親族は三親等までは「喪服」、
会葬者は、着物の場合「半喪服」に黒帯、この場合は小物も草履も全部黒。
半喪服は寒色系が落ち着いています。寒いときは黒の一つ紋羽織。
洋装は、今は面倒がないのでみんな「全部黒」ですが、
着物のレベルに合わせて考えれば、真っ黒けでなくてもいいことになります。
グレーのスーツで中は黒いブラウスとか、それでもいいんです。
それは「無くなった方に失礼」ではなく、告別式をしている遺族のかたより
ランクが上にならないように、という心遣いなわけです。

でも、とにかく最近は洋装の黒が主流になったので、
何でもいつでもみんな黒、になってしまいました。
実際、近所のお葬式で、いつも和服の方が寒色系の色無地に黒帯、黒羽織という、
会葬者としての「礼装」でいるのを見て「やだ、着物が黒じゃない」と、
若い奥様たちが話していました。

なんでこんなにややこしいのか…。
大体がこういうルールそのものが、まだそんなに新しいことではないんですね。
おまけに、途中から戦争になり、あげくの着物離れ…。
それであれこれ、ややこしくなったわけです。
あちこちの「マナーブック」などみても、まずほとんどが洋装のこと、
おまけに言ってることが違ったりします。
突き詰めて順番に考えていけば、今の「全員ずっと真っ黒け」ってのは、
ちょっと違う…と気が付くのですが
ジミなら…なんていう曖昧なものより「黒なら間違いない」ほうへと
そういう流れになったのでしょう。
私だって、舅・姑の葬儀のとき、息子がまだタイヘンでしたので、
実家に預け、合間を見て車を飛ばし、投薬や食事に戻らねばなりませんでしたから、
親戚の方皆様に「こういうわけで喪服が着られません、洋装でお許しください」と
オネガイしたところ「いいわよ別に、私らも洋服だから」と言われて「あらら」。
さすがに姑の妹は喪服でしたが、そういえば、思い出しました、
そのとき、舅側の身内は年寄りが多くて、みな喪服だったのですが
ひとり「地模様のある喪服」…あれはゼッタイおかしい、と今でも思っています。

今日は長くなったので(いつものことじゃん…)、
明日は「どーしてややこしくなったのかなー」だとか、考えてみたいと思います。

ところで…私は夏の半喪服には「紺の絽の色無地」があるのですが、
ある友人が、じーーっとそれを見つめていて、やがて言いました。
「どっかでみたことあるなーと思ったらさ、旅館の仲居さんだわ」…。
どーしてくれよぅ…。

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18 コメント

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Unknown (陽花)
2009-08-20 18:08:29
おあとがよろしいようで・・・落ちには
思わずクスッと笑わせてもらいました。

最近お葬式にはご無沙汰で、結構な事
なんですが、所変わればでお通夜には
親族は色無地に喪の帯で、が結構あります。

真夏のお葬式は本当に暑くて大変でした。
8か月の大きなお腹で、親を送るんだからと
絽の喪服を着ましたが、汗でぐっしょり
もう、こういう経験はしたくありませんが、
着物は大きなお腹でも着られるんだと36年前
妙に感心した事でした。


返信する
悩ましいところです。 (akkomam)
2009-08-20 20:15:12
   主人が亡くなった夏は例年にない暑さでした。
   喪服は喪主の私だけでしたが、半袖の黒洋装の方は
   いらっしゃらなかったような気がします。

   もう我が家では私が喪主になることはないのですが、
   娘に<喪服の用意を...>と話ましたら、
   すべて洋装ですませますから...といわれました。


   着慣れていない和服だから...もあるでしょうし、
   これからは親族、親類が少ないと当日でも
   喪主であっても動かなければならない
   こともあるでしょう。


   これからだんだん喪服は少なくなっていくのでしょうか?
   悩ましいところです。
   
   とんぼさんの仰りたいことと少しずれてしまいましたが、
   しきたりを知っての時代の流れならとも思いますし、
   黒一着用意してあれば...になっていくのでしょうか。

   チョッとまとまっていませんが、親から子どもに
   伝えていないことだと痛感しました。
返信する
Unknown (うさうさ)
2009-08-20 20:50:32
とんぼさん、今晩は。確かに今お通夜に行くと真っ黒ですよね。色喪服で来られてる方が、黒じゃないと言われてる事はちょいちょい見かける気はします。それはそうと、ひとつ疑問なんですが、9月になったら単衣に変えるじゃないですか?喪服はどうしたらいいんでしょう?母ので絽と袷はあるんですが、単衣はない。。。単衣の喪服まで持ってる方は少ないかと思うんですけど、どうされてるんでしょうか~???
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-08-20 21:32:28
陽花様
やはり住んでいる地域もありますよね。
こちらでは色喪服を知らない人もいます。
若い世代は教えられてませんからねぇ。
夏のお葬式、しんどかったでしょう。
着物って、融通きいて便利ですけど、
やっぱり暑いですよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-08-20 22:20:36
akkomam様
かわっていくことは、仕方ないと思うんです。
浴衣も着られないんですから、
喪服なんて…でしょうし、実際昔と違って、
「主催者」みたいになって忙しいですしね。
でも全く無くなるのは、やっぱり
寂しいですねぇ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-08-20 22:27:32
うさうさ様
本来は普通の着物と同じで「あい着」のイミで
「あい喪服」というのがあります。
袷の生地で、単に仕立てたものです。
ただ、今の時代、葬儀ははちゃんと着物、
という人でも持っている人はよほどじゃないかと。
こんな時代ですから、たとえば6月で、
またその日が、もう暑いな、なら絽でも、
また9月で、10月に近いし、だと袷、
という融通は利かせても、みんな見て見ないフリ、
してくれる感覚でしょうか。
知ってる人はいうかもしれませんけど。
私もあい喪服は持っていないんです。
ひたすら着る機会がないことを
祈るばかりですね。
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お久しぶりです (明仙)
2009-08-20 22:32:14
皆さんお葬式の話をなさっているのに話が変わってしまいますが

私は結婚式に携わるバイトをしていますが、ホテルはもちろん、冷房のない神社でのお式でも、皆さん袷の留袖や振袖を着てらっしゃいます。絽の留袖を着ている方なんて、ずいぶん長くバイトを続けていますが1人か2人がいいところです。
そういうわけでご新婦さまも同様に暑苦しい格好をなさっているので、冷房は一時間前から最低温度でギンギンにしておきますが…
なんだか、こんな環境だからこそ袷が普及してしまう気もしますあの会場で絽だったらかなり寒いはず。

私、恥ずかしながら、ついこの前まで絽の振袖の存在を知りませんでした
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Unknown (りのりの)
2009-08-21 00:37:46
会葬者の礼装は寒色系の色無地に黒帯、黒羽織
なるほど、勉強になりました。会葬者が着物を着る場合は何を着るんだろうとかねがね疑問でした。後、お通夜にあんまりブラックフォーマルできめすぎていかないほうがいいんだよ、ということを是非娘に教えておきたいと思いました。

予断ですがいくら葬儀は突然、といっても高齢で入院していた義父の場合はいずれ時間の問題・・ということは想定されて当然だったと思います。が孫でひとり喪服がないからとお通夜をすっぽかした独身の子がおりまして、そいじゃーいかんだろうと告別式にはうちの娘のアンサンブル(首尾のいい私は夏ごろか・・・と娘用のアンサンブルを用意してありました。それが的中。)の喪服を貸してあげました。娘はリクルート用の黒のスーツがあるからと。思い出すと今でもムカムカする話がこの後に続きますが・・・・・やめておきます
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Unknown (ゆん)
2009-08-21 10:33:32
こんにちは。
 「絽は写真がボケる」…のは、経て横絹糸じゃなくなってからだ…と聞いたことがあります。
 頭が白亜紀な私は、「何で写真を優先するような理由を付けるんじゃ?大事なのは、式そのものじゃないの?」と憤慨してみるのですが・・・。素敵ですよね、絽の やさしい黒。

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 「とにかく、こうなのよ。」という説得力のある先輩女性が絶滅の危機にある中で、とんぼさんのお話は頼りになります。
 昔の通りにはいかなくても、そのしきたりの奥にある、思いやりを伝えていきたいと思うんです。
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最近 (もなか)
2009-08-21 12:34:25
周りでご不幸が重なって目にする機会が多かったのですが
通夜からほぼ全員「黒」一色ですね
かくいう私も黒のフォーマル、黒じゃなきゃおかしいでしょ?って思われるのに耐える勇気がありませんww
ストッキングだけ肌色をはきますが、それすら浮いてます。
多分「黒のストッキングも用意してない」って思われてるんだろうなぁ

「地模様のある喪服」がちょっとわからなかったのですが・・・。
色無地によくある地模様ってことですか?
(言い方が変ですが黒の色無地着物ってことでしょうか?)
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