ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

何度目かのゆかたのお話し

2009-07-22 23:28:05 | とんぼ手帖
なーんの写真もないので、以前記録用に撮った「夏物」です。とんぼですー。


悩みは多き「イマドキゆかた事情」ですね。

昨日コメントでもいただきましたが、たとえば「お稽古事の場合」、
日舞長唄お三味線など、そういうことをなさるかたは
当り前のように「ゆかたにたび」です。
私はそういうことの素養がまったくありませんので、
夏場のおけいこのゆかたの理由は、単に暑いさなかのおけいこだからだろう…
ぐらいにしか思っていませんし、ゆかた茶会については、
「くだけた感じの茶会」ということで、先方に行くまでは裸足にゲタでも、
たびで草履かゲタでもよい、先方についたら、足袋カバーをはずすか、
別のたびに履き替えるのだから、最初は裸足のほうがすんなりゲタでラク…と、
お茶の先生のお話しできいたことがあります。聞いただけなんですけど…。

いずれにしても、それは「お稽古事」をなさるかたがたのことで、
実は、昔はそうやって着ている人たちにどこかで遭遇したりしても、
みんな「あぁこれからお稽古だな」と、わかったわけですよ。
つまりほかのゆかた姿の人、お祭りだの花火大会だのに行く人は、
「ゆかたの当たり前」で「当たり前」にきていたからです。
お稽古事用のゆかた姿は、特殊といったらおおげさですが、
目的が違うための「ユニフォーム的」な着方のひとつです。
それはそれで、確立されているものですから問題ないわけです。

私が気になるのは、元々どこのどなたが言い出したか知りませんが、
逆にそういうことを前提にして、目的も素材も関係なく、
単純にひとつのファッションとして「たびはいても襦袢着ても着られます」と、
やたらおかしなものをいろいろくっつけてまで、
販売するようになった、ということなのです。
りら様やこいけ様がおっしゃるように、「場に合わせて」着たり、
素材や色柄を考えるのは、お稽古ごとだからと考えるのと、
ポジションが違うわけですね。
普通に「ゆかた」で楽しむようなところへ、そういうカッコでは…
と思ったのではありますが「お稽古事の夏の定番としてアタリマエ」なのだから、
全ての人が、ゆかたをそう着てもおかしくはないんじゃないの、と言われたら、
何もいえません。なんと答えたらいいんでしょうか…。
「いまや自由に着るのがゆかた」ということになるのでしょうか。

でも自由であることは「何でもアリ」ということではないと思います。
着物はとても長い積み重ねで今のかたちになったものです。
少しずつ変わってきてはいますし、時には「バサラ」のように、
異端とも思える変わりようもありましたが、結局それは一部のひとだけで、
実際には、元の大きな流れは、それなりに順当に流れてきたわけです。
亜流支流を作ることは、服飾文化では当たり前ですが、
自然淘汰されていって、いいものが残ったり、一時のあだ花のように咲いて散ったり、
以外や以外、本流のほうにつながってきたり…。
それの繰り返しで変化していくものだと思います。
心配しなくても、あのビラビラ帯や、レース飾り襟は、一時の流行で
いずれはなくなっていくわよ…という意見もあります。
着物というものの、奥深い魅力がわかってきたら、
きっとそうなって行ってくれるとはおもうのですが、
だからこそ、テレビのような大きなメディアでは、きちんと基本を押さえたことを
知らせていってほしいものだと思うわけです。

さてさて、じゃどんなゆかたなら単着物としてオッケ、か…。
まずは織がかわっているものが無難ですね。
たとえば「綿紬」「紅梅」「綿絽」など、ちょっと地に厚みを感じるもの。
あと麻混なんかもハリでへらへら感を免れます。

色柄はもう感覚ですが、単として着られたり売られたりしている着物をたくさん見ると、
なんとなく傾向的なものはわかると思います。
たとえばこの着物、えびや井桁の柄で、ゆかたとしてはちと寂しい柄ですが、
これは上布です。つまりこんな柄でも「地と素材」で単で着るんですね。
だからこれが綿紬のちょっとゴツッとした感じだったら、
元はゆかたでも単OKって感じではないでしょうか。 


    


それと昨日「総絞りは」というお話がありました。
それも難しいところですが、最近「有松」などの総絞りの浴衣は、
だいたいが華やかな柄が多いです。どうしても紺地で暗くなることが多いので、
大きな花とか花火とか、渦巻きとか、そこに赤や黄色が所々入っている…
そんな感じのものをよく見ます。
その場合はやっぱりゆかたゆかたした、かわいさのほうが強いかなーと思うんです。
もちろん、たくさんの柄がありますから、絶対とはいえませんが、
単純に総絞りで手がかかっていて高級だから…というだけでは、
単OKということにはならないと思います。
有松は、元々が木綿の染めから始まって、手ぬぐいなどから
ゆかたで有名になって行った産地です。
東海道中膝栗毛では、弥二喜多コンビが「鳴海絞屋迷惑」でしたっけ、
さんざん高級な絞りの説明や価格を聞いた後で
「じゃ、コレをてぬぐい分だけ切ってくんねぇ」と、困らせる話が出てきます。
元々が庶民のゆかた地からはじまったものですから、
ゆかたとして着て楽しむのが、一番「らしい」のではないかと、
私なんかは思います。

それと、木綿の単着物を単で着たり、素肌に着たり…。
それはちっともかまわないと思います。
裏をつけて袷で着られるような木綿着物をゆかたのように着るのは、
ちょっと格を落としてきているだけで、問題ないと思います。
昔ゆかたが「涼しくていい」と日常着に認められていったわけですが、
だからといって、染めのきれいなゆかたを、誰しもがみんな
買えたわけではありません。一年の間のわずかに期間しか着られないものを、
長屋暮らしのおかみさんたちが、何枚も持つわけには行かなかったと思います。
だから「暑くてやだねぇ」とかナントカ言いながら、
素肌に縞木綿の着物なんかを着ていたと思いますよ。
逆のゆかたを単に着る、のは格をあげるからいろいろあるわけです。
ゆかたは、湯上りから夜着る着物に格上げされた、
素肌に着るのが身上、のさっぱり着、なのですから。
こうやって考えると、めんどくさいからなんでもいいじゃん…って、
言いたくなるのもわかりますけどねぇ…。


よく「両方買うのはお金がかかるから、どっちにもな着られるように一枚を」
ということを相談されることがあります。
これ、難しいんですよ。お金がかかるから、といわれても、
単でも着られるゆかたといったら、やはりそれなりに上質でないと…。
だとしたら、やっぱり何万もするゆかたってことになりますが、
そうなると、やたらザカザカ着てジャブジャブ洗ってというのが、
(私はやっちゃいますが)、自分では心配になりませんか?

先日呉服屋の奥さんが、例の「色ムラ」ゆかたのかわりを持って
たずねてきたのですが、そのときのお話しで、
今問屋さんに「いいゆかた、上質のゆかた」がない…のだそうです。
「巻物がないのよ」とも言ってました。巻物は「反物」のことです。
つまり、3000円とか5000円とかの、安い「つるしのゆかた」があるのに、
何万もして、さらに仕立て代まで払うようなものは、
置いても売れないから…だそうです。
それでもシーズンはじめなら、少しは出るというので、
来年までお預け、ということにしました。

あぁ…にっぽんのゆかたの「明日はどっち」なんじゃ…。



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8 コメント

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Unknown (陽花)
2009-07-22 23:57:36
ゆかたを単着物としても着たい場合は
やはり織も変わった感じがいいのですね。
色柄は見た目の感覚だと私も思います。
やっぱり、色んな着物を見て目を肥やして
いかないといけませんね。
Unknown (とんぼ)
2009-07-23 00:40:32
陽花様
あちこちで着物姿がいろいろ見られたころは、
自然と身についたものなんですけどねぇ。
なんか私もいろいろ書いていて、
自信なくなってきましたよぉ。
同じく自信が^^; (えみこ)
2009-07-23 10:43:20
自分のゆかたの着こなしは、亡くなった祖母がくれたゆかたに
半襟付きの肌着に、織りの半幅帯をいただいたのが最初です。
周囲にそんな着こなしをするひとはいないため、祖母なりの
おしゃれな着こなしなのだと思ってそのまま着ています。
それを「今まで見た事がない」=「非礼、あやまり」と
指摘される方、すくなくないんですよね。
それで劇場に入るでもなし、パーティに行くでもないのに。
半襟付きだと素足はつらいので、タビックスはいています。
ひらひらじゃらじゃらと同列に見られるのかとおもうと口惜しいやら
こわいやらで…だんだん着なくなって来ています。もっと楽しく着たいですね。
浴衣は浴衣 (おつう)
2009-07-23 11:15:05
たま~にしか着ないから、オールマイティに着回したい。というのも判ります。

でも、実際毎日着てみたらきっと誰でも判ることではないでしょうか。
浴衣って一言でいうと木綿の単ですよね。
それをわざわざ暑い夏に重ねて着るって・・・暑いですよ!!

夏はどうやっても暑い!!
だから少しでも涼しく着たいから、せめて家にいる時くらいは衿なし素足で、さらりと浴衣を着流す・・・。
出かける直前に着物に着替える、帰ってきたら汗だくの着物を脱ぎ棄ててまた浴衣。
これが気持ちいいのです^^

シボの立った絞りの浴衣なんて最高の肌ざわりなのに!なんでわざわざ暑苦しくして着るかのかな・・・と思ってしまいます。

浴衣で近所を歩く位は良しとする、「ご近所」がどこまでか、というのは人によるでしょうけど・・・。

せっかくの浴衣だから色々なシーンに着たい。という無理を通すために、
浴衣である利点を殺す結果になっているのは本末転倒ではないかと思うのです。

「衿付きで着られるように、小柄で変わり織りの浴衣を買うのがベスト」のような言い方も見掛けます。
夏らしく、爽やかな大柄を着こなすのも浴衣の醍醐味だと思うので、もったいないなあと感じています。
ためになるお話 (あひる)
2009-07-23 11:48:09
とんぼさんのお話、いつも「そうだな~、なるほどな~!」とすっきりする思いです。

ゆかたの反物があまり出回っていないのですか!
吊るしのゆかたは安いしお手軽だから、手始めに着てみるには良いのかもしれませんが、初めだからこそ、自分の体に合ったゆかたを着て快適に過ごしてほしいものです。
まあ、レースつきや薔薇柄やラブリー柄など、流行のものが出回るのは良しとしても、プリントやちゃらちゃらしたものではない昔からある(本流と言って良いのでしょうか)ものもしっかり出回るような流れになってほしいです。
Unknown (とんぼ)
2009-07-23 17:05:20
えみこ様
なにかしら思い入れがあったりで、
いろいろな着方をするのは、
かまわないと思いますよ。
何かに流されてとは違うと思いますし。
「楽しく」着られたらなによりです。
Unknown (とんぼ)
2009-07-23 17:09:28
おつう様
着物がうれなくなったからなのでしょうけれど、
ゆかたという「若い女の子」が
とびついてくれたモノに、いろいろくっつけて
とにかく「離すなー」って感じです。
次々打ち出している…つもりなんでしょうけれど、
結局つまらんことでややこしくしているだけ。
判断のできる着物人を育てることを
忘れているんですね。
わたしゃ、せっかく一枚で涼しく着られるものに、
じゅばんなんざ着る気はしません。
Unknown (とんぼ)
2009-07-23 17:14:23
あひる様
もう何年も前から、山のように積まれた巻物を
どれがいいかと、一本ずつ広げちゃ巻き…。
そんな楽しみかたのできる呉服屋さんが、
なくなってしまいました。
洋服ほど細かくなくても、サイズって
大事なんですけどね。
身丈はあっていても、裄つんつるてんの浴衣を
着ている人や、子供の腰あげみたいなおはしょりの人、
なんか見ていると寂しいです。
身丈のあった着物は、やっぱり着易いし、
見た目もスッキリするんですよね。

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