メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

バイス

2019年04月08日 | 映画
バイス
を観ました。


1960年代半ば、酒癖の悪い青年チェイニーがのちに妻となる恋人リンに尻を叩かれ、政界への道を志す。
型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治の表と裏を学んだチェイニーは、次第に魔力的な権力の虜になっていく。
大統領首席補佐官、国防長官の職を経て、ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領に就任した彼は、いよいよ入念な準備のもとに“影の大統領”として振る舞い始める。
2001年9月11日の同時多発テロ事件ではブッシュを差し置いて危機対応にあたり、あの悪名高きイラク戦争へと国を導いていく。
法をねじ曲げることも、国民への情報操作もすべて意のままに。
こうしてチェイニーは幽霊のように自らの存在感を消したまま、その後のアメリカと世界の歴史を根こそぎ塗りかえてしまったのだ。


アダム・マッケイ監督・脚本・製作です。
社会派な作品が多く好みの監督です。

最近見た”記者たち”でもちらっと取り上げられていたディック・チェイニーの半生を描いた伝記映画です。
冒頭に謎多き男なので可能な限り再現しようと頑張った、みたいな注釈から始まります。
そこからも伝わるようなかなりぶっ飛んだ演出のブラックコメディでした。

そして今個人的にこういうノンフィクションで描くにはかなり最適の題材だと思いました。
9.11付近のアメリカ政府は長いこと相当疑って来てきていましたし、そもそもブッシュが当選した大統領選挙からいかがわしく思っていましたし。
そんなあの時代の閣僚の中でも影の大統領と言われたチェイニーをアダム・マッケイが描くなんて最適としか思えませんでした。
作品の冒頭で言われるように寡黙な男なので未だに謎めいている印象ですね。

うっすらしか知らない自分にはいつの間にか権力者になった裏ボスみたいな印象でした。
若い頃からの描写で始まり、お酒の失敗が凄まじくて学校やら仕事やらで失敗続き。
後の妻の影響で更生して出世して政界進出してそれなりの成功を治めていきますが、途中で挫折して引退します。
そこでハリウッド映画あるあるな登場人物のその後の説明が字幕で行われてエンドロールが流れ初めます。
いくらなんでも尺が短すぎるし、その解説もわざとらしすぎるので「おや?」とは思いますが。
案の定の騙し演出で素晴らしい遊び心だと思いました。
高級レストランで権力者たちがテーブルを囲んで上品なウェイターがメニューを見せて悪どい政策を説明するシーン。
「全部いただこう」
というブラックなコメディ。

ずっと関係不明な一般人が語りでストーリーテリングしてたり、戦争シーンで突然兵士がカメラに話しかけてきたり。
ちゃんとその人物の行く末が回収されたり。
かなり巧妙で遊び心ある見せ方でした。

この時のチェイニーの考えを知るすべは無いがコレは映画なのでチャレンジしてみよう、という前置きとともにとある夜のチェイニーの行動を描いたりしてました。

他にもかなり遊び心とセンス溢れる演出でした。
ガッツリ政治モノなのに完全にブラックなエンターテインメントに昇華させているのはかなり見事です。

そして大きく取り上げるべきはクリスチャン・ベールの役作りです。
もう自分の批評でも何度も取り上げて来ましたが、彼の役作りは健康やら不可逆性やらが心配になって仕方ないです。
今作も作中でどんどん老けて太っていく役作りでした。
今までもガリガリからマッチョからデブから自在に身体を変えてきましたが、今作は最も太っていたと思います。
もはや特殊メイクな役作りです、ほとほと感心します。
よほどのことがなければ今年の俺アカデミー賞の主演男優賞でしょう。

妻役をエイミー・アダムスがやっていましたが、コレまた素晴らしい役作りで。
相変わらずべっぴんさんですが、若いところから老けたところまでやっていてかなりのなりきりでした。
いい人なのか悪い人なのか、チェイニーも凄い人物ですがこの人も凄いやり手で強気な人物でした。

ドナルド・ラムズフェルドをスティーブ・カレルが演じていましたが似てました。
あまり詳しくしらなかったですが、過激な人だったのですね。

サム・ロックウェルがジョージ・ブッシュを演じていました。
なかなか似ていました。
ジョージ・ブッシュは相当苦手な大統領だったのですが、そんな自分の心情を満たしてくれる描写でした。
若い頃からかなりドラ息子な感じだったのですね。

コリン・パウエルをタイラー・ペリーが演じていてコレまた似てました。
劇中の映像シーン、ブラウン管に写っているパウエル国務長官が本物なのか、なりきりなのかってクオリティでした。
ブッシュ政権時代に唯一の正義だった印象ですが、近年のこの手の映画ではやはりそうやって描かれますね。
当時からもっと評価しておけばよかったと思いました。

どのキャラもキサラでものまねショー見てるかのようにそっくりで素晴らしい作り込みでした。
テーマの良さと演出のハイセンスさとそのキャラのクオリティで名画だったと思います。


そんなわけで9点。
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